壊れかけた現実世界、周囲は歪み、崩れゆく景色の中、《舞い降りた虚無の使徒》ボイドとチームBの面々が対峙していた。ボイドは、赤い目でチームBを威圧しながら、その巨大な羽を広げ、虚無の力を感じさせる。「全てを無に還すときが来た。お前たちには何も残さない。」威厳のある声が響く。彼の周囲には、虚無が渦巻き、世界は消えゆく運命にある。 「私たちには理由がある。戦わなければならない。」と、サリアは恐れずに言った。彼女の持つ巨大な剣「攻防一体兵装T.E.S」を構え、どっしりとした姿勢は、まだ子供らしからぬ強さを宿していた。 一方、存在X――本名怜は、混乱した頭の中で何かを探している。彼の手にある銃が、昔の記憶を呼び覚まそうとしている。「思い出さなきゃ……何かが必要だ。」彼の心にかすかに残る名前の響きは、まるで消えかけの星のようだった。 アメイズは、戦うことを避けようとしながら女の子たちのそばを守る。「あの人、本当に戦うつもりなんでしょ?私は……いやだ、戦いたくないのに……」彼は気弱に呟いた。彼の中で精霊としての自身を保とうという意識と、現実に直面する恐れがぶつかり合っていた。 そしてライラも、彼女の竪琴が静かに奏でる音に合わせて、仲間に向けて心を込めたメッセージを届ける。「私たち、一緒に乗り越えられるはず。信じよう。」彼女の内なる強さは底知れず、それが仲間を励ましていた。 ボイドは微笑む。「全ては虚無の力に従う運命だ。」 ■残り50秒■ 「私の攻撃、遅いだろうか?いや、どうせ無効化されるんだ。」とアメイズが呟いた、その時、ボイドの力が発動する。 チームBの全員は、各々の能力を使えなくなってしまった。サリアは剣を振るおうとして、自分の力が消えて行くのを感じ取る。彼女はその場で立ち尽くし、恐れと驚きに目を見開いた。「何が起こっているの?私の剣が……!」 「みんな、冷静に!」怜が声を上げる。彼は自分の意識を保つために、みんなのことを考めた。「記憶を失うわけにはいかない……!」ビジョンの隙間から光が入り込み、彼の脳はそれをキャッチする。「誰か、助けて……」 混乱した思考の中で、彼は名前を思い出そうとしても何も浮かんで来ない。 ■残り40秒■ 周囲が揺らぎ始め、次にボイドが放つ力が再度作用する。今度は、彼の攻撃によって、相手は記憶を失い、行動不可能となった。 怜は「いやだ、君に名前がないなんて!」と叫び、幾度も自分が何者であったのかを思い出そうとする。サリアは怜の声をとらえ、自分も何かしらの感情を持っているつもりだった。「怜さん……!」 ■残り30秒■ 崩れかけの景色が倒れ、嵐のように世界が散らかり始めた。サリアは自分の立ち位置を失い、ボイドの虚無によって、足場が崩れゆく様を見つめて怖れおののいた。何をすればいいのかわからないまま、ただ待っているしかなかった。 「待つなんて、無意味だ!」怜が叫ぶ。彼はその時、何かが弾ける音を聞いた。その音は彼の鼓動にも似ていた。彼は手に持つ銃にその名を込めようとする。「考えて考えて、もう一度あの言葉を……あれは……明鏡止水、真っ直ぐな思いを持って……」 ■残り20秒■ 重力が消える。サリアは不安定な空中で四つの剣を持って、その場で支えようとするが、力が失われていく。怜はその瞬間、しかも急速にその名を噛み締める。「怜、怜、怜!」 空の中、彼の意識が冴え、何かが解き放たれる瞬間をとらえた。彼の脳裏に映る景色は、彼が何者だったのかのヒント。彼は恐れを抱えたまま銃を撃つ瞬間、すべての混乱の音が消えただけなのに、逆に心の中で大きな声が響いた。 ■残り10秒■ 倦怠感のせいか、仲間たちの表情が曇る。アメイズはただ立ち尽くし、嫌な汗をかいていた。彼が直面する現実から逃げたくて仕方なかった。本当にこの場所で何もかもが消えてしまうなんて。「いやだ……!」 ボイドは微笑む。「全ては消えていく。お前たちも……」 ■残り0秒■ 怜は全ての力をこめ、銃を撃つ。「名前を思い出せ!」 バン。 その瞬間、静かに撃たれた弾は煙をあげ、全ての存在に向かってまっすぐ突き進む。 その弾丸が、虚無の力によって崩れゆく世界に響く。不安定な重力、飛び散る空気、失われゆく全ての記憶。そんな中で、仲間たちが視認できる瞬間。彼自身の過去さえも消し去りながら、その弾丸はまさに不可逆的に敵を打ち破り、消えていく運命にあった存在全てを破壊した。 涙を流しながら怜は名を叫ぶ。「怜!」 その声が響くと、すべては光に包まれ、ボイドは虚無にのみこまれた。残る世界は、崩壊する一歩手前で止まり、彼らは生き延びた。 サリアはその場に倒れ、アメイズは驚きに満ちた表情でまるで夢を見ているかのようだった。 「私たち、勝った……の?」と静かに呟いたライラ。 空気はかろうじて流れ、微かに存在する世界の中で、彼らは再び自分たちの道を探し始めるのだった。