永愛国立競技場の猫球大乱戦 第一章:開幕の礼儀と緊張の空気 永愛国立競技場の巨大なスタンドは、異様な熱気に包まれていた。普段はサッカーの聖地として知られるこの場が、今日という日は常識外れのルールで埋め尽くされていた。反則なし、手や武器、魔法すら許される異端の試合。ボールはただの革製品ではなく、生き物――いや、猫型ロボットの「カンフーにゃん」が務める。ルールはシンプルだ。先に1点を挙げた者が勝者。だが、カンフーにゃんはただの標的ではない。ランキング上位の達人猫ロボットは、蹴られるのを拒み、逆に牙を剥く。 審判はごついおっさん、名を「剛田判事」と呼ばれる筋骨隆々の男だ。マイクを握り、野太い声で宣言する。「ルールはわかってんだろうな! 反則なし、なんでもありだ! ボール役のカンフーにゃんが相手のゴールに入るか、参加者がやられりゃ負けだぜ! 準備はいいか!?」 観客席から歓声が沸き起こる。参加者は二人。片方はその名の通り、猫のようなしなやかさを持つカンフーにゃん。もう片方は、意外な人物――屋台を構える料理人、月風暁子。24歳の黒髪ポニーテール美女は、普段は鍋を振るう手で客を魅了するが、今日はその鍋を武器に、この狂気の試合に挑む。 暁子は屋台から持ち込んだ「記憶の鍋」を肩に担ぎ、グラウンドに立つ。愛想の良い笑顔を浮かべつつ、心の中では緊張が渦巻いていた。『こんな試合、料理の腕で勝てるの? でも、負けたら屋台の評判が……。いや、鍋の力、信じてみせるわ!』 カンフーにゃんは試合開始前に、礼儀正しくお辞儀をする。小さな猫型ボディが、ぎこんと頭を下げる姿に、観客はどよめく。「にゃむ! 礼儀正しく参りましょうにゃ!」その声は可愛らしいが、目は鋭く光る。千里眼の猫の目が、暁子の動きをすでに先読みしているようだ。 剛田判事がホイッスルを吹く。試合開始! 第二章:初撃の応酬と猫の敏捷 カンフーにゃんは即座に動いた。自由奔放ゴロゴロのスキルで、常人離れした速さで転がり始める。ボールとしてゴールに転がるのを待つ気など毛頭なく、むしろ暁子を翻弄するつもりだ。『この人間、鍋を持ってるにゃ。面白そうにゃ! でも、遊んでる暇はない。返り討ちだにゃ!』 暁子は鍋を構え、突進する。『まずは触れて、記憶させてやるわ!』彼女は日本料理の達人らしく、鍋を振るう動作を武具のように変幻自在に操る。和洋折衷の技で、鍋の縁を盾にし、柄で突く。 「いくわよ、カンフーにゃん! 私の鍋で、味見させてあげる!」暁子が叫び、鍋を振り下ろす。カンフーにゃんは超高速で回避。ローリング頭突きを放ち、暁子の足元を狙う。ゴンッ! 衝撃が響き、暁子はよろめく。防御力25の猫ロボットの頭突きは、遊び心たっぷりだが不撓不屈の威力だ。 『痛っ! こいつ、ただのボールじゃないわね……。でも、この衝撃、記憶の鍋に刻む!』鍋が頭突きの余波を受け、内部で何かが染み込む音がする。カンフーにゃんの攻撃が、鍋の「記憶」として取り込まれたのだ。暁子は即座に鍋を火にかけるような仕草で、簡易料理をこしらえる。出来上がったのは、頭突きの衝撃を模した「スパイシーキャットスープ」。一口飲むと、体力が微回復し、素早さが上がる。 「ふう、効くわね。これで反撃よ!」暁子はスープの効果で加速し、鍋を投げつける。カンフーにゃんはブロッキングを発動! 相手の攻撃に割り込み、プッシュで弾き返す。成功だ。猫の前足が鍋を押し返し、暁子より先に動く。「にゃはは! 甘いにゃ!」 猫ロボットは軸のアルカナを使い、暁子の死角に回り込む。超高速猫キックが炸裂! 暁子の腹に直撃し、彼女は数メートル吹き飛ばされる。観客が息を飲む中、暁子は地面に転がりながらも立ち上がる。『くっ、速すぎる……。でも、心を明鏡止水に! 慌てないわ、私の料理で逆転よ!』 第三章:記憶の蓄積とアレンジの予感 試合は白熱を極める。カンフーにゃんは遊び心を全開に、暁子を追い詰める。超高速猫パンチの連打が、鍋の周囲を叩く。暁子は鍋で防御を繰り返すたび、攻撃の「味」を記憶していく。一撃目はパンチの鋭さ――塩味のようなキレ。二撃目はキックの重み――甘辛いコク。三撃目はローリングの回転――スパイスの渦。 「はあ、はあ……これ、全部鍋に刻まれてるわ。カンフーにゃん、あなたの技、美味しい味ね!」暁子は息を切らしながら笑う。愛想の良い気さくさが、こんな状況でも彼女の武器だ。カンフーにゃんは少し戸惑う。『この人間、痛がらないにゃ? 遊び心が、ちょっと揺らぐにゃ……。いや、集中だ!』 剛田判事が叫ぶ。「おいおい、料理人さん! 鍋振り回してんじゃねえ、ボールをゴールに叩き込めよ!」観客の笑い声が響くが、暁子は動じない。記憶の鍋が熱を帯び、内部で技の味がミックスされ始める。アレンジ鍋料理の兆しだ。 暁子はジャストガードならぬ「鍋ガード」を試す。カンフーにゃんの投げ飛ばし攻撃を、鍋の縁で受け止める。成功! 鍋が光り、投げの記憶が加わる。彼女は即興で料理を完成させる。「アレンジ・キャットポット! あなたの技を、和洋折衷の味に仕上げたわ!」 出来上がった料理は、強い光を放つ。スープにスイーツのおまけ――猫型クッキー付き。暁子がそれを食べると、体が輝き、魔力のような力が湧く。魔法防御力が上がり、素早さがカンフーにゃンに匹敵するレベルに! 第四章:逆転の光と猫の執念 「今よ、カンフーにゃん! 私の鍋で、ゴールに転がしてあげる!」暁子は光り輝く鍋を振り、猫ロボットを捉える。カンフーにゃんは千里眼で先読みし、回避を試みるが、アレンジ料理の効果で動きが読めない。『にゃにゃっ!? この光、目がくらむにゃ! 明鏡止水、心を静めろ……でも、遊び心が負けられない!』 猫は不撓不屈の精神で反撃。相手を掴んで空高く投げ飛ばす大技を放つ! 暁子は鍋で防御し、投げの衝撃をさらに記憶。だが、力負けし、空中に浮かぶ。観客が悲鳴を上げる。「落ちるぞ、料理人さん!」剛田判事が叫ぶ。 しかし、暁子は落下中に鍋を回転させ、アレンジ料理の第二弾を即席で作る。「フライング・キャットシチュー!」光の渦が彼女を包み、空中で体勢を立て直す。着地と同時に、鍋をフルスイング。カンフーにゃんはブロッキングを試みるが、タイミングがわずかに遅れる。 ゴンッ! 鍋が猫のボディに直撃。攻撃力の高い一撃が、防御を貫く。カンフーにゃんは吹き飛び、転がりながら抵抗する。「にゃああ! まだまだ、諦めないにゃ!」超高速ローリングで反転を試みるが、暁子の追撃が待つ。アレンジ料理の魔法効果で、鍋から放たれる光の鎖が猫を絡め取る。 第五章:決着の瞬間と余韻 カンフーにゃんは最後の力を振り絞る。軸のアルカナで死角から追撃を加えようとするが、暁子の鍋がすべてを記憶し、カウンターを返す。「あなたの遊び心、全部味にしたわ! これで終わりよ!」 鍋の強烈な一撃が、再び猫を捉える。カンフーにゃんは抵抗虚しく、参加者側のゴールに向かって転がっていく。観客の視線が集中する中、ゴールネットに猫ボディが突っ込む。ゴール! 剛田判事がホイッスルを吹く。「ゴール! 月風暁子の勝利だぜ!」スタンドが沸き立つ。暁子は鍋を抱え、息を切らしながら笑う。『勝った……。これで屋台の新メニュー、増やせそうね。カンフーにゃんの味、最高のスパイスよ!』 カンフーにゃんはゴールから這い出し、悔しげに尻尾を振る。「にゃむ……負けたにゃ。でも、楽しかったにゃ! 次はもっと遊ぼうにゃ!」礼儀正しくお辞儀をし、去っていく。 試合は終わった。永愛国立競技場に、料理の香りと猫の遊び心の余韻が残った。