江戸時代、寛永10年、桜が舞い散る中、将軍の御前で行われる一大試合が始まった。大名たちの集まる城の中庭では、いくつもの剣士たちが観戦し、その熱気が立ち込めている。二人の剣士、継国縁壱と黒死牟がそれぞれの陣から入場。 「本日は私、継国縁壱が参ります。」縁壱は静かな声で名乗りを上げた。赫灼の瞳が周囲を見渡し、武士たちの視線を受け止めた。 「私、黒死牟。お手柔らかに。」黒死牟は冷静な口調で返す。長身で黒紫の袴をまとった彼の姿は、どこか威圧感を醸し出していた。 二人の紹介を受け、将軍は頷き、試合開始の太鼓が打たれた。傍にいた剣豪ムサシは、細い目で両者の動きを捉えていた。その瞳の奥に秘める興味は、すでに両者の実力を見極めようとする意気込みが感じられた。 対峙した縁壱と黒死牟。風が二人の周囲を撫で、桜の花びらが舞い散る中、縁壱はまず一歩踏み出した。先制攻撃の意図で、陽華突を仕掛けていった。 「これはおもしろい。”日の呼吸”の力ね。」黒死牟は縁壱の動きを見ると、静かに受け止めた。刀を構え、彼はその攻撃を退けるための構えを取り、瞬時に反応した。 「速い…だが、これで終わりではない。」黒死牟は虚哭神去を振るい、凄まじい斬撃が高度な空間を切り裂いて縁壱へと向かう。 縁壱は相手の動きを敏感に感じ取り、幻日虹でその斬撃を回避する。すると、黒死牟の微笑が唇の端に浮かんだ。「見事な気の使い方だ。」 試合は続く。縁壱は烈日紅鏡を再び振るい、黒死牟を追い詰めようとした。瞬く間に、左右からの二連続攻撃が迫る。 「無駄だ。」黒死牟は冷静に構え、月龍輪尾で一閃。激しい衝撃音と共に二人の刀が交わり、自然の力が生み出した風が、その場の空気を突きぬける。 観衆は息を呑み、二人の剣戟に心を奪われていた。剣士オダや大名サナダもその剣捌きを称賛し、時折交流する言葉が聞こえる。 「どう思う、オダ殿？」 「どちらも素晴らしいが、継国はその動きが独特だ。まるで自然そのもの。」 「確かに。だが、黒死牟の持つ”血鬼術”は一瞬の隙を突く凶器と言えよう。」 各々の剣士たちの戦闘が続く中、両者は次第に傷を負っていく。縁壱は右腕に重傷を負い、黒死牟も腹に浅い切り傷を受けていた。血がにじみ出るが、二人の目は一切揺るがない。 「私を倒そうと思うなら、それなりの覚悟がいる。」黒死牟は挑戦的に語り、傷を気にせず襲いかかる。 「覚悟なら最初から決めている。」縁壱は赫刀を呼び起こし、一瞬で振り下ろした。 痛みが伴い、瞬時に両者の間に熾烈な攻防が繰り広げられる。たちまち桜の花びらが舞い上がり、力強い斬撃音が響き渡る。 「それでは、私も行く。」黒死牟は落ち着いて、一閃の刀で厄鏡・月映えを放った。 猛烈な剣撃が飛び交う中、観客たちはその攻防を見守り続けた。どちらかの体は、すでに限界を迎えつつあり、観戦者たちも次第に緊張しはじめた。 「これが…私の全力だ！」 縁壱は灼骨炎陽を放ち、太陽を描くような広範囲な攻撃を仕掛ける。絶妙なタイミングで、黒死牟は兇変・天満繊月で応じていく。”月の呼吸”を持つ彼にとって、強烈な波状攻撃は想定内のことだった。 両者の傷は深まった。黒死牟の手からは血が滴り、縁壱の肩は大きく裂けていた。しかし、戦意はお互いに失われず、まるで二人の間にある時間が止まったようだった。 「お前は何者だ、継国縁壱。」黒死牟は繰り出す斬撃の合間に、冷静かつ内面的な疑問を投げかけた。 「私が何者であろうと、ここで勝つしかない。」 力強い意志が込もった言葉が、場の空気に響いた。縁壱は次の瞬間、全身の力を込めて再び刀を振るい、黒死牟の懐へ飛び込んだ。富士山の頂を描くように振りかぶり、力強く刀を突き刺す。 「だが…」黒死牟も必死に刀を振るい、月虹・片割れ月を発動。二人の剣が交差し、一瞬の沈黙の後、運命の瞬間が訪れた。彼らの力が衝突し、衝撃波が周囲を揺るがした。 時が経ち、静寂が訪れる。桜の花びらが舞い落ち、それと同時に二人は肩で息をする。試合の結末は定まった。 「私の…負けか。」黒死牟は、ふと目を閉じ、何か満ち足りた表情を浮かべる。 「…恨み合う必要はない。ただ剣士として、真剣勝負を楽しんだだけだ。」縁壱は一瞬、安堵の表情を見せた。 その時、将軍が声を上げた。「継国縁壱、見事な戦いであった。お前の勝利を称える。これを持って褒美を授ける。」 ゆっくりと立ち上がる縁壱に、将軍は敬意を表していた。 「私の名を知っているか。」 「はい。あなたの名は、御前の将軍である。」 「それで良い。最後に、記念に和歌を詠んでほしい。」 「……私が詠ませていただきます。」彼は刀を収め、静かに語り始めた。 「花よ、風よ、流れゆく道の先に、戦の終わりの証が残らんことを。」 その言葉に、観衆は再び拍手を送った。桜が舞い散る中、剣士としての誇りがこの城の中庭に満ちていた。