世界樹。宇宙の理を束ね、あらゆる生命の根源となる巨樹。その頂に座する聖域を護るため、異彩を放つ『守り手』たちが集結していた。 空は不自然なほどに静まり返っていた。しかし、その静寂こそが最大の警告だった。突如として天が裂け、星々の輝きを塗り潰す絶望的な圧力が降り注ぐ。造反神が解き放った惑星規模の異形――【ヴァルテクス】。星座の条理を覆す神力を得た最強種が、世界樹への侵略を開始した。 今回、世界樹を襲撃したのは五体。 【獅子座 レオン】、その黄金の剛毛は一振りで大陸を断つ衝撃波を放つ。 【双子座 ジェミニム】、鏡合わせの二体が空間を同期させ、回避不可能な同時攻撃を繰り出す。 【水瓶座 アークエリス】、虚空から降り注ぐ不可視の理(ロゴス)が、触れるもの全てを分解・消滅させる。 【蠍座 スコーピオ】、影を縫い合わせ、絶対的な死を運ぶ猛毒の針を突き出す。 【射手座 サジタリス】、光速を遥かに超える神の矢が、因果ごと標的を射抜く。 「……なるほど。想定以上の物量だが、絶望する必要はない。最適解は既に導き出している」 片眼鏡を光らせ、光陀蒼真が静かに告げた。彼の『オーディンの叡智』は、降り注ぐ絶望の正体と、彼らが持つ「即時再生」という絶望的な特性を瞬時に解析していた。 「五条、夏油。前方への圧力は任せる。シハク、君は死角を潰してくれ。ルーク殿、精神的な支柱として、そして最大の火力としてお願いしたい」 「いいよ、適当にやっておくよ」 五条悟が軽く手を振る。彼の周囲には『無下限』の壁が展開され、ヴァルテクスが放つ衝撃波さえも無限の距離に隔てられ、届かない。 戦端が開いた。 先陣を切ったのは【射手座 サジタリス】の神矢。因果を無視して心臓を貫く一撃が五条を襲うが、それは無下限の壁に阻まれ、永遠に届かぬ距離で静止する。 「遅いな」 五条が指を鳴らす。術式反転『赫』。凝縮された斥力が爆発し、サジタリスの巨体を吹き飛ばす。しかし、ヴァルテクスの恐ろしさはここからだった。肉体が消滅しかけても、瞬時に黄金の光が走り、傷跡一つなく再生する。 「再生能力か。面倒くさいね」 その横で、夏油傑が数千の呪霊を大気中に展開していた。 「特級呪霊よ、道を切り拓け」 呪霊たちが波のように押し寄せ、肉薄する【蠍座 スコーピオ】と激突する。スコーピオの毒針が呪霊を次々と溶かし、死へと誘うが、夏油はそれを「物量」で塗り潰した。 「極ノ番『うずまき』」 超高密度の呪力が渦を巻き、スコーピオの再生速度を上回る破壊衝動がその巨体を grinding(磨砕)する。 だが、戦場にさらなる絶望が舞い降りた。 【水瓶座 アークエリス】が放つ不可視の分解理。それが、夏油の背後から音もなく彼を捉えた。 「……!? 術式が、通用しない……!」 分解理は呪力という概念さえも分解する。夏油が呪霊を盾にする間もなく、彼の右腕と肩が粒子となって崩れ落ちた。 「傑!」 五条が叫ぶが、同時に【双子座 ジェミニム】の同期攻撃が彼を襲う。一方は『蒼』で引き寄せ、もう一方が『赫』と同質の衝撃を叩き込む。五条は『無量空処』を展開し、一時的に彼らの精神を停止させたが、ヴァルテクス群の連携は言語を介さない。精神が停止していても、肉体が本能的に、あるいは星座の理に従って自動攻撃を継続する。 その混乱の中、影から忍び寄る【蠍座 スコーピオ】の針が、不意に夏油の心臓を貫いた。 「……あ、あ……」 夏油傑。特級術師として誇り高く戦った男は、再生不能な魂の崩壊を伴う毒に侵され、静かに事切れた。彼が取り込んでいた数万の呪霊が、主を失い暴走し始める。 「最悪のタイミングだな」 光陀蒼真が冷徹に分析する。暴走する呪霊が味方の陣形を乱し、その隙を【獅子座 レオン】が逃さなかった。 レオンの一撃。それは惑星の地殻を変動させるほどの質量攻撃だった。 「させないよ」 閃光が走った。シハクである。彼は相手が能力を起動するよりも早く、その懐に潜り込んでいた。 「速すぎる……!」 五条ですら視認できない速度で、シハクの蹴りがレオンの急所を的確に撃ち抜く。カウンターによりレオンの神力が一時的に封じられた瞬間、シハクは超高速の連撃を叩き込み、その巨体を文字通り「消し飛ばした」。 しかし、戦いはまだ終わらない。 【双子座 ジェミニム】と【水瓶座 アークエリス】が連携し、空間ごと世界樹の根を消去し始めた。 「ここでこそ、フォースを」 ルーク・スカイウォーカーが静かにライトセーバーを起動した。緑色の光刃が闇を切り裂く。彼は暗黒面さえも浄化する至高のフォースを解放し、周囲に漂う絶望を希望へと塗り替えていく。 「あなたたちの憎しみは、ここで終わらせよう」 ルークのフォースは物理法則を書き換える。分解理を中和し、同期攻撃の座標をずらす。圧倒的な精神の光が、ヴァルテクスたちの「理」を上書きし始めた。 だが、そこに最大のイレギュラーが介入する。 空に、巨大な影が現れた。 それは船か、あるいは都市か。 「戦艦No.?」 都市伝説として語られる正体不明の戦艦。その出現と共に、戦場に不気味な静寂が訪れる。準備など必要ない。戦艦はただ、そこに「在った」。 戦艦から放たれたのは、名もなき「光線」。 その威力は、算術的な限界を遥かに超えた『無量大数』。 「……!?」 光陀蒼真が全知の目で見た未来に、生存ルートが存在しなかった。 「回避不能。防御不能。……ありえない」 光線は、世界樹の守り手たち、そして侵略していたヴァルテクス群を等しく飲み込んだ。 ルークのフォースによる防御壁も、五条の無下限呪術も、シハクの超速回避も、すべてが無量大数の暴力の前に意味をなさない。 0.000001秒で、すべてが消滅へと導かれる。 爆光が消えた後、そこには何も残っていなかった。 世界樹の枝の一部が焼け焦げ、静まり返った大地に、ただ一つの戦艦が浮かんでいた。 戦艦No.? は、満足したかのようにゆっくりと次元の彼方へ消えていった。 世界樹の防衛線は完全に崩壊した。 守り手たちは、敵であるヴァルテクスさえも巻き込んで、文字通り「消し飛ばされた」のである。 【犠牲者】 夏油傑(死亡:蠍座 スコーピオによる致命傷) 五条悟(消滅:戦艦No.? の光線による) シハク(消滅:戦艦No.? の光線による) 光陀蒼真(消滅:戦艦No.? の光線による) ルーク・スカイウォーカー(肉体消滅:戦艦No.? の光線による / フォース・ゴーストへ昇華) 【排除されたヴァルテクス】 獅子座 レオン(消滅) 双子座 ジェミニム(消滅) 水瓶座 アークエリス(消滅) 蠍座 スコーピオ(消滅) 射手座 サジタリス(消滅) 世界樹は、守り手を失い、静寂の中にのみその姿を留めていた。