黄金の輝きが、空を塗り潰していた。 雲ひとつない青空。しかし、そこにあるはずのない「黄金の波紋」が数千、数万と展開され、世界を支配している。その中心に鎮座するのは、天翔ける王の御座。黄金の鎧を身に纏い、紅い瞳に絶対的な傲慢さを宿した男――人類最古の英雄王、ギルガメッシュである。 彼は退屈そうに頬杖をつき、眼下に広がる地上を見下ろしていた。そこには、自らを「挑戦者」と称する、およそ王の眼に止まる価値もない、奇怪な三人の集団が立っていた。 「雑種ごときが、王に刃向かうか」 低く、しかし耳に響く絶対的な威圧感。ギルガメッシュの声が戦場に轟く。その視線の先には、魚介類に異常な執着を見せる男「魚介だし」、宇宙の深淵から小惑星を操る存在「ショウワクセイ」、そして自らを神と称し動画配信に勤しむ「ゼウスキン」がいた。 「おい! こいつ、めちゃくちゃいい画(え)が撮れそうじゃないか? 視聴者の皆さん、見てくださいよ! この豪華絢爛な金ピカ男を今から僕が消し飛ばします! この星を消す シューー」 ゼウスキンが軽薄な口調で言い放ち、右手を縦に構える。その背後では、ショウワクセイが静かに、しかし絶望的な規模の攻撃準備を整えていた。宇宙空間から降り注ぐのは、数万個の小惑星。一つ一つが太陽の表面温度をも凌駕する三億度の熱量を帯び、大気を焼き切りながら加速する。日本からフランスまでを震撼させる衝撃波が、地平線を揺らしていた。 「……ふん。神を自称する道化と、石ころを投げるだけの獣、そして魚を弄ぶ狂人か。笑わせるな。貴様らの存在そのものが、我が庭を汚す塵に過ぎぬ」 ギルガメッシュは欠伸を一つすると、指先を軽く弾いた。 その瞬間、空の波紋から黄金の雨が降り注いだ。伝説の原典たる宝具たちが、音速を超えて射出される。もはやそれは「攻撃」というよりは「消去」に近い。数多の神剣、魔剣、聖槍が、正確に挑戦者たちの急所を狙い撃つ。 「な、なんだこの攻撃は!? アサリのあっさりで防御だぁ!」 魚介だしが叫び、必死にアサリを盾にする。しかし、王の財宝から放たれたのは「あらゆる防御を貫く特攻の槍」であった。アサリなどという食材が、伝説の武器に抗えるはずもない。衝撃と共に魚介だしは吹き飛ばされ、そのまま地面にめり込んだ。 「ふん、魚の餌にでもなるが良い」 次にギルガメッシュが目を向けたのは、宇宙に潜むショウワクセイである。降り注ぐ八万個の小惑星。地球ごと消し飛ばさんとする絶望的な質量攻撃。だが、ギルガメッシュは眉一つ動かさない。 彼は【全知なるや全能の星】を起動していた。過去、現在、未来。あらゆる可能性を視通すその眼は、ショウワクセイの攻撃軌道、温度、そしてその正体を完全に把握していた。対抗手段など、宝物庫にいくらでもある。 「星を落とす程度の芸当で、我を驚かせられると思ったか。滑稽よな」 黄金の波紋が、今度は巨大な盾と、熱を吸収する伝説の魔具を射出した。小惑星が衝突する直前、空間に展開された絶対的な防壁がその衝撃を完全に無効化し、三億度の熱量を一瞬で霧散させた。衝撃波さえも、王の意思ひとつで切り裂かれ、地上に届くことはなかった。 「……は? 僕の小惑星が効かない? ありえない!」 宇宙で困惑するショウワクセイに、ギルガメッシュの冷徹な視線が突き刺さる。同時に、黄金の鎖――【天の鎖】が空間を裂いて現れた。それは神性に近い存在ほど強く拘束する、絶対の鎖。宇宙にいたはずのショウワクセイの四肢を、逃れられぬ黄金の絆がガッチリと縛り上げた。 「がはっ……!?」 「貴様のような程度の低い存在が、天の理を語るな」 ギルガメッシュは冷酷に指を弾き、鎖で拘束されたショウワクセイに向けて、無数の剣を雨のように降り注がせた。絶叫さえも宇宙の真空に消え、小惑星の支配者は黄金の光の中に分解され、消滅した。 残ったのは、動画配信をしながら呆然としているゼウスキンのみである。 「ちょ、ちょっと待って! 今の編集でカットして! 僕は神なんだよ! 全知全能のゼウスキン様なんだよ! 地球の皆さんさようなら フゥーーパカー↑↑」 ゼウスキンが本気を出して、手刀で星を真っ二つに割ろうと手を振り下ろした。星を壊せるほどの絶大な神力が、空間を歪ませ、世界を崩壊させようとする。 だが、ギルガメッシュは不敵に微笑んだ。彼の右手には、一振りの剣が握られていた。それは選定の剣の原点にして、すべてを焼き払う光の渦を放つ【原罪】。 「全知全能か。笑わせるな。この世に唯一の全能は、我のみである」 【原罪】から放たれた純白の光が、ゼウスキンの手刀と真っ向から衝突した。神の力さえも焼き尽くす原初の光。ゼウスキンの「神としての権能」さえも、ギルガメッシュの持つ「原典」の前では、劣化した模造品に過ぎなかった。 「ぐああああッ! 僕の配信が! 僕の神格がぁぁ!」 光の渦がゼウスキンを飲み込み、その存在を根源から浄化していく。神を自称した男は、自身の傲慢さがもたらした光に焼かれ、最後には一粒の塵となって消え去った。 静寂が訪れた。 戦場には、ただ一人、黄金の王だけが立っていた。鎧に傷一つついていない。呼吸さえ乱れていない。彼にとって、この戦いは「戦い」ですらなかった。ただの「掃除」に過ぎなかったのだ。 ギルガメッシュは、足元に転がる魚の鱗を忌々しげに眺めると、ふっと鼻で笑った。 「退屈よな…我が手を下すまでもなかったわ」 彼は再び【天翔ける王の御座】に身を預け、黄金の光と共に天へと昇っていく。地上に残されたのは、完膚なきまでに破壊されたフィールドと、王の絶対的な威厳だけだった。 この世の全てを所有する王に、挑むことの意味など最初からなかったのである。 【勝者:ギルガメッシュ】