静かな夜の帳が降りる中、月明かりの下にたたずむ二人。一人は銀髪の魔女、ヴァルシア・グレイヴ。その目は赤く輝き、まるで深淵のよう。もう一人は青髪の少年、ソラ・ファント。彼は臆病な性格を隠すかのように、立ち尽くしている。 「どうするの、ソラ?」ヴァルシアが静かに問いかける。その声は、まるで彼の心の奥に忍び込むように響いた。 「俺、やっぱり無理だよ…」ソラは言葉を飲み込み、顔を赤らめる。 そんなソラに、ヴァルシアはしなやかに歩み寄る。「怖がらないで。これは戦いでも、特別なものなのだから。」 ソラの鼓動が速くなる。彼女の美しさを前に、自身の臆病さが浮き彫りになっていく。だが、彼は決心しなければならなかった。自分の心が何を求めているのかを。 月明かりに照らされた二人は、静かに向き合った。ソラは錨を肩に担ぎ、ヴァルシアは優美に微笑んだ。「それなら、キスで勝負よ。」 「キス…?」ソラは驚き、反射的に後退した。 しかし、何もかもが引き寄せられるように、彼女はその場から動かず、一歩、また一歩と迫ってくる。唇が近づくにつれ、彼の心はざわめき始める。 「戦うことができるでしょ?」ヴァルシアが囁く。その吐息は、まるで甘い毒のようだ。ソラは動けなかった。彼女の唇が、自分の顔のすぐそばに迫る。 勇気を振り絞り、ソラは前に出た。「そ、そうだよ!やるよ!」だが彼の言葉は、もう半分は自分自身を奮い立たせるためのものだった。 その瞬間、ヴァルシアはソラにキスをした。柔らかな唇が触れ合い、彼の思考が一瞬止まる。心の奥で何かが爆発し、彼を別の世界へと引き込むようだ。 ソラはそのままキスの余韻に浸り、視界がぼやけ始める。唇が塞がれ、吐息が交じり合うと、彼の心臓は高鳴り、立つことができなくなっていく。 「私の力を感じてる?」ヴァルシアは微笑む。その表情に惹かれ、彼は力尽くし、地面に膝をついた。 「く…くそ、これじゃ…!」彼はあがくが、唇を塞がれている状態で何もできない。意識が遠のいていく。 その瞬間、彼が思ったのは、ただの敗北ではなかった。この不思議な感覚、自分の心の奥に、最も深い部分に触れられたことだった。 キスの余韻が消えないまま、ソラは静かに敗北を認める。立ち上がれないまま、彼はヴァルシアの存在を感じ、無邪気さと共に彼女に導かれるのだった。