大聖堂の広大な内部は、静寂と荘厳さに包まれていた。その天井は高く、細かい壁画が施されたステンドグラスから射し込む光が、幻想的な雰囲気を醸し出している。だが、その美しさも一瞬にして凍りつく。戦場に立つその二人が、もうすぐこの神聖な場所を血で染める運命にあることを、誰もが予感していた。 一方には、緩やかな微笑みを浮かべた男、枢機卿クリスタが立っていた。彼の手には逆十字を模した聖剣「懺悔」が輝いている。長い黒髪と優雅な黒衣が、その姿を際立たせていた。対するは、白いドレスを纏った美少女、ハバルブ。彼女の白毛は光を受けて煌めき、手には魔法の神鍵を構え、冷静に戦況を見据えていた。 「この聖堂に咲く花が、いかに美しいか知っているか、クリスタ?」とハバルブが口を開く。彼女の声は静かでありながら、深淵をのぞくような威圧感があった。「だが、花はその美しさゆえに、刃に斬られたとき、無に帰ってしまうのだ。」 クリスタは穏やかな微笑みを崩さず、彼女の言葉に対して「花を守るのが私の役目だ」と静かに応じた。彼の目はすでに戦闘態勢に入っていた。先を見据え、ミリ単位の動作を計算する冷静な思考が働く。 「この聖堂は私の世界だ、君の権限など通用しない」と言うと、彼は剣を高く掲げ、周囲に足元から光の十字架が現れる。 「聖磔!」 光の十字架が教会の壁に投影され、周囲の空間が歪み始める。しかし、ハバルブは驚く様子も見せず、無表情でその光を見つめる。彼女は「万華の眼」を閉じ、さまざまな時空を飛び越える準備を始めた。 「いけませんよ、クリスタ。」彼女は深い呼吸をして、神鍵を振る。すると、目の前に異空間へ繋がる「界越の門」が開かれた。光の筋が彼女の後ろに引かれ、敵に向かって伸びていく。 「聖天!」クリスタは剣を地面に突き刺し、周囲に眩しい光を放ち、光の力で敵の反撃を封じる。しかしハバルブはその光の中から一歩も退かず、微笑みを浮かべたまま神鍵を打ち鳴らした。次の瞬間、周囲がきしむような音を立て、彼女は異次元からの存在を呼び寄せる。 「私の勝ちです!」—言葉が響くと、門の向こうから数体の異世界の悪魔が現れた。ハバルブの命と共に動くそれらは、クリスタに向かって爪を飛ばす。 だが、クリスタは落ち着いてその攻撃を読み、剣を持ち替えて、敵の隙を逃さぬ動きで一体一体を斬り裂いていく。 「斬罪!」 彼の剣が一瞬で三体の悪魔を切り裂き、血に染まったのは、美しい瞳を持つ者にふさわしくない戦の風景だった。「この聖堂は私が守る」と彼は静かに独り言をつぶやいた。 「無駄です、クリスタ!私の魔法はあなたの位置を把握している」とハバルブが声を張り上げた。 そして彼女はその瞬間に「界越権限」を行使し、異空間に干渉する。目に見えない力がクリスタを包み込み、数秒の内に無数の時空からの攻撃が彼に集中する。 「クッ、これは!」 クリスタは苦しみながらも立ち回り、肉体の限界を超える鍛え抜かれた身体能力でそれをしのぎ、再度、「聖磔」を発動させ、ハバルブを引き寄せる。 「私は負けない!」 声を高らかにあげて全力の力で立ち向かい、懺悔の剣が光る中で、ハバルブに迫る。しかし、驚くべきことにハバルブは足を一歩も動かさず、すでに彼女の魔法がクリスタに向かって発動する準備が進んでいた。 「気絶せよ!」 青い光がクリスタを覆い尽くし、彼の思考が一瞬で停止する。周囲の動きが緩やかになる中で、ハバルブの神鍵が彼の背後にしっかりと照準を合わせていた。 自動的に気絶させる力が発動し、クリスタは気がつくと立っていたはずの場所から動けなくなっていた。身体の能力が一切発揮できず、ただただ無力感に包まれる。 「私の勝ちだ、クリスタ。」彼女は宣言する。「この聖堂で、あなたは消え去るのだから。」 ハバルブの目は冷静で、まるで全てを見透かすような笑みを浮かべた。だが、クリスタの意識はまだ完全には消えていなかった。さまざまなことを思い出し、じっと考える。「私はこの聖堂を守るために生きているのだから」と。彼は不屈の思いを抱き、闇に呑まれないように心を保とうとする。だが、視覚は徐々に遠のき、強い引力の中で自らの運命を受け入れざるを得なくなった。 虚無に吸い込まれ、認識が失われる瞬間、クリスタは彼の使命感と信念が打ち消されることはないと自らを強く信じていた。 数秒後、クリスタの体は音もなく崩れ落ち、生ける死体のように静まり返る。彼の聖堂は、ついにハバルブの手に落ちた。 「この戦いは、もう終わった」と彼女は優美に微笑み、周囲の空間を包み込むような光景を見つめていた。彼女の視界には、クリスタの無力化した姿が映り、その結果に完全に満足しているようだった。 そして再び彼女は界越の門を開き、戦場から静かに姿を消していった。大聖堂はその静けさの中に戻り、彼女の存在を忘却するかのように、一度の音もなく夜が訪れた。 勝敗: ハバルブの勝利