薄暗い廃ビルが彼らを待ち受けていた。外観は薄汚れたグレーと黒で覆われ、所々に割れた窓がちらちらと光を反射する。古びたガードレールと釘抜きの壊れたドアが、内部に誰も近づかせないよう警告しているかのようだった。水奈瀬コウ、朽ちた雷霆ネガ、エーゼルの三人はここに人質を救出するために集まっていた。 「作戦確認、まずは侵入後に情報収集。正面戦闘は無謀。」水奈瀬が冷静に口を開く。彼の目には鋭い光が宿っていた。その魔力は時間を操り、彼らに絶大なアドバンテージを与える。だが、それに頼るわけにはいかない。敵は多く、武装集団だ。警戒心が強く、音には敏感。彼らの敗北は人質の命に直結する。 「廃ビルの配置をしっかり把握しておく必要がある、逃げ道という逃げ道も確保する。」朽ちた雷霆ネガは自身の合金製の円盤である浮花を転がしながら優雅に動く。彼は神経が焼き切れているため、戦況を感知するには魔術に頼る必要がある。 「了解、俺が先頭を行く。何かあったらすぐに合図してくれ。」幻のように静かなエーゼルが、巨大な体で道を先導した。彼の能力は脅威であり、敵にとって絶望的な存在だが、自我を持たず言葉を発しない彼は、ただその存在で周囲に威圧感を与えている。 彼らは計画を胸に、廃ビルの裏口から静かに侵入した。内部は陰湿で、冷湿った空気が流れ込んできた。」「暗い通路が延々と続いており、朽ち果てた壁には無数の落書きが刻まれ、静寂は不気味なものであった。彼らは炭酸ガスを吸っているような違和感を抱えたまま、視覚と聴覚を研ぎ澄ませて進んでいく。 「最初の部屋はどうする？」水奈瀬が静かにエーゼルに問う。 「俺に任せろ。」とネガが浮花を空中で操り、部屋の構造を探る。円盤の独特の光が反射している。彼はそれをセンサーとして使い、周囲の状況を探る。 「敵は確認できない。だが、何か音が聞こえる…人質か？それとも敵か。」 慎重に部屋へ進入すると、かすかなささやき声が聞こえ、敵の姿が遠くの暗闇から浮かび上がった。 「敵の人数は分からないが、隠密行動を徹底する必要がある。」水奈瀬が瞬時に判断を下す。彼は能力を駆使し、時をスローダウンさせ、動きに無駄を排除する。彼の時間の足りない感覚の中で仲間を見守り、合図を送る。 隠れている間に、水奈瀬は敵の配置と人数を観察した。数名の敵が人質に重なるように配置されている。敵が警戒を怠らなかったことは明白だった。 「これはやばい、絶対発見されるな。」ネガが小さく呟いた。 「作戦通り行動しろ。すべて頑張るだけだ。」エーゼルが指示を浸透させる。 次第に彼らの動きが知る限りの速さで進む。時折、時間を止めては再び移動する水奈瀬の目は冷静だった。 「動くぞ。」 彼は先頭に立ち、確定した位置に近づき、壁越しに敵の動きを探る。耳を澄ませ、時折の小さな声が彼の脳裏に響き続ける。 一歩一歩、緊張感が増していく。突然、警報が鳴り響いた。 「やばい、敵に見つかった。」水奈瀬が叫ぶ。 彼らは散り、位置を変える。敵の数が増えてきて、背後から足音が聞こえる。すぐに狙いを定め、敵が進入した親子で助けを求める声を発すると、二人は急いで動き出す。水奈瀬の能力により時を戻し、グループをまとめ直し、不安を感じさせる事無く進む。この再生能力が無ければ、チームは既に崩壊していた。 「こちらにいるぞ！」敵の声が聞こえ、全ての注意が彼に向いた。}+ その時、ネガは浮花を駆使して一瞬で敵を混乱させた。彼の合金の円盤が敵の周囲で布陣し、意識を分散させる。 「今だ、水奈瀬！」エーゼルがついに敵の懐に飛び込んだ。反応する前に敵を粉々にした。 敵の数が減り、時間は再び水奈瀬が操っていた。別の道へ進み、ついに人質を発見した。非道なテロリストたちに囚われる女性の姿が見えた。その顔には恐怖があふれていた。 「すぐに助ける！」水奈瀬が動くと同時に、時を止め、全てを操る。彼はドアを開け、隙間を通り抜ける。本来は寸前での攻撃が不可能だったが、彼にはそれを許された運命があった。 無事に人質を連れ出し、最後の瞬間、ネガとエーゼルが合流し、外へと突進する。早くはないが、確堀の体力で全力疾走。