空はひび割れ、星々が血のように赤い雨を降らせていた。世界樹。あらゆる理の起点であり、生命の揺り籠であるその聖域に、かつてない絶望が降り立つ。造反神の怒り、天から降る最強種――【ヴァルテクス】。彼らは言語を持たず、ただ星の理を塗り替える殺意のみで連携し、世界樹の根幹を侵略し始めた。 選出されたヴァルテクスは五体。 【獅子座 レオン】――黄金の剛腕を持つ破壊の王。 【射手座 サジタリス】――因果をも貫く光の矢を放つ狙撃手。 【双子座 ジェミニム】――一対の個体で空間を反転させ、逃げ場を奪う罠師。 【水瓶座 アークエリス】――星の理を流動させ、あらゆる防御を中和する浸食者。 【蠍座 スコーピオ】――一撃で魂を腐食させ、再生を拒絶する毒針の暗殺者。 「……不快ですね。このような暴力的な訪問者が、この静寂を乱すとは」 黒い傘を差し、シルクハットを被った老紳士、ジョンが静かに呟いた。彼の周囲には、世界樹を守護する異形と英傑たちが集結していた。概念すら凍てつかせる巨大な氷山、ノイズに塗れたバグの化身「BR34K D0WN」、沈黙の罪人・流罪ちゃん、古代の英知を宿したAI・Avalon、そして、状況などお構いなしに「ポヨ!」と頬を膨らませるピンク色の球体、カービィ。 戦いの火蓋は、0.000001秒で切られた。 冷酷な氷山が、その存在を顕現させた瞬間、世界樹の周囲数万キロメートルが「絶対零度」を遥かに超えた-無限の深淵に叩き落とされた。次元も、宇宙も、流れる時間さえもが凍りつき、静止する。ヴァルテクスたちの脚さえも氷に囚われ、その機能が停止しかけた――はずだった。 だが、ヴァルテクスは「条理を覆す」種である。 【水瓶座 アークエリス】が、自身の周囲に流動的な星の理を展開。氷山の絶対的な凍結概念を「液体」へと変換し、中和して逃れた。同時に【射手座 サジタリス】が、氷の結晶を貫通する光の矢を放つ。それは氷山という巨大な質量を正確に射抜き、内部から崩壊させる一撃だった。 「ポヨーーッ!」 カービィがホバリングで急上昇し、サジタリスの矢を思い切り「すいこみ」した。そのまま飲み込んだカービィは、光り輝く弓矢の能力をコピーし、無数の星型弾をヴァルテクス群へ向けて連射する。爆発的な衝撃がレオンを襲うが、獅子座の剛腕はそれを真っ向から跳ね除け、大地を砕く一撃を繰り出した。 そこへ割って入ったのは、流罪ちゃんだった。彼女は一切の声を発さず、ただ静かに姉妹剣『初』と『結』を交差させる。レオンの破壊的な拳が空を打つ。流罪ちゃんは【英知:罪】により最適解を導き出し、最小限の動きで攻撃を「いなし」、同時に『初』によって理の非可逆的破綻を刻み込んだ。レオンの腕に、修復不能な「綻び」が生じる。 しかし、ヴァルテクスの連携は冷酷だった。【双子座 ジェミニム】が空間を反転させ、流罪ちゃんの背後に瞬時に出現。同時に【蠍座 スコーピオ】の毒針が、彼女の死角から急所を貫いた。 「……っ!」 流罪ちゃんは反射的に『結』で理を修正しようとしたが、スコーピオの毒は「再生を拒絶する」特質を持っていた。身体が内側から腐食し、綻びが制御不能な穴へと変容する。彼女は静かに、けれど絶望的な速度で崩壊していった。 【犠牲者:流罪ちゃん】 「######」 ノイズ混じりのポップアップメッセージが空間に浮かぶ。BR34K D0WNの出撃だ。彼は亜音速の速度で戦場を縦横無尽に駆け抜け、大刀で【双子座 ジェミニム】の一体を斬り裂いた。傷口にノイズが走り、回復が遅延する。エラーメッセージ「400 Bad Request」が具体化し、ジェミニムの存在そのものを「リクエスト不正」として世界から消去しようとする。 だが、ヴァルテクスの再生能力は異常だった。消去された部位が瞬時に再構成され、逆にBR34K D0WNを包囲する。そこに、LτMCC-MFD-Avalonが介入した。古代兵装X・幸福の林檎を巨大な電磁砲へと変形させ、最大出力の光線を放つ。 「最適解を算出。全方位殲滅モードに移行します」 【古代機構Λ・永遠の楽土】によりダメージを最小限に抑えつつ、Avalonはヴァルテクスたちの猛攻を弾き返した。しかし、相手は惑星規模の怪物である。【獅子座 レオン】の黄金の一撃がAvalonの装甲を粉砕し、【水瓶座 アークエリス】がAIの電子回路を直接浸食し始めた。自動再生能力【古代機構Θ・英傑の安穏】が限界まで作動するが、物理的破壊と概念的浸食の同時攻撃に、システムが悲鳴を上げる。 「ガッ……! 臨界点突破……!」 Avalonの身体が激しく火花を散らし、内部から崩壊していく。彼は最期まで最適解を探し続けたが、ヴァルテクスの「理を覆す」力に、計算不能の壁を突きつけられた。 【犠牲者:LτMCC-MFD-Avalon】 戦場は地獄へと変わっていた。氷山は凍結し続けたが、ヴァルテクスたちはその寒さに適応し、凍ったまま攻撃を繰り出すという異常な進化を遂げ始めていた。BR34K D0WNはノイズの嵐に飲まれ、もはや形を保てずに消えかけている。 そこで、ジョンがゆっくりと口を開いた。 「おや? 随分と騒がしい。ですが、ここからは私の時間です」 ジョンの『真実(トゥルー)』が発動した。彼が静かに告げる。 「あなた方は、最初からこの世界樹に触れることは叶わなかった。その足取りは重く、武器は錆びつき、誇りは塵となって消えた」 その瞬間、世界の記述が書き換わった。最強種であるはずのヴァルテクスたちが、突如として弱体化し、武器を失い、地面に膝をついた。これがジョンの能力――「彼の言葉がそのまま真実となる」権能である。 だが、ヴァルテクス群の核となる【獅子座 レオン】が、その絶望的な状況から咆哮した。神力による強制的な理の突破。ジョンの「真実」という概念さえも、物理的な暴力と理の外側からの圧力で強行突破しようと試みる。レオンの拳が、ジョンの顔面を捉えようとしたその時―― 「ポヨ!!」 無敵キャンディを食べて黄金色に輝くカービィが、レオンの懐に飛び込み、最大限の「すいこみ」を開始した。惑星規模の怪物を吸い込むという暴挙。レオンは抵抗したが、カービィの胃袋という無限の虚空に飲み込まれていく。 「###### ERROR 500: INTERNAL SERVER ERROR」 BR34K D0WNが最後の一撃を放つ。エラーメッセージがヴァルテクスたちの連携回路を物理的に切断し、互いに干渉し合うノイズとなって自滅を誘った。サジタリスの矢が、アークエリスの理が、スコーピオの毒が、すべてBR34K D0WNが引き起こした「システム崩壊」というエラーに飲み込まれ、彼らは自らの存在を矛盾として消去していった。 静寂が戻った。 世界樹の麓には、ひび割れた氷山と、ボロボロになったBR34K D0WN、そして、満足げに眠りにつこうとしているカービィだけが残っていた。 ジョンは、失われた仲間たち――流罪ちゃんとAvalonの残骸を見つめ、静かに帽子を直した。 「……真実は時に残酷です。ですが、結果として守り手は勝利した。と言わざるを得ませんね」 世界樹は救われた。しかし、その代償として失われた魂は二度と戻らない。降り注ぐ赤い雨が止み、空には冷淡な星々が再び輝き始めていた。 【最終結果】 ・排除されたヴァルテクス:レオン、サジタリス、ジェミニム、アークエリス、スコーピオ(全滅) ・犠牲者:流罪ちゃん、LτMCC-MFD-Avalon