夕焼け空の樹海は、周囲を取り囲むように広がる樹木がまるで燃える炎のように赤く染まっていた。暗い影を落とす彼方に、夜烏の姿が見えた。彼は無気力な姿勢で立っており、その目には一切の感情が見えなかった。周囲の静寂とは裏腹に、彼の周りには緊張感が漂っていた。 その時、現れたのはオロの茨具現化『セシル』だった。彼は呪われた樹木のスーツに身を包み、黒いシャツとマスクを付けていた。彼の双眸は座ったように沈んでおり、目にはクマができていた。その姿からは、まるで何かに呪われているかのような異様な雰囲気が漂っていた。彼の背中には、呪われた樹木で作られた大槌『オロジュ』が控えている。 「お前が俺の敵か? 夜烏とやら。」セシルの声は、低く、重かった。彼は戦う覚悟を持っていたが、その眼差しには確かな不安も見え隠れていた。 夜烏は、いつも通りの不敵な笑みを浮かべた。「ふん、俺の存在に怯えたくないなら、かかって来い。だが、その前に、お前のスーツに潜む呪いの話を聞きたいもんだな。」 言いながら、夜烏は背中から巨大な翼を広げ、音速で空中を滑空する。彼の『夜翼』による動きは、瞬時にセシルの目の前に現れた。セシルは驚きながらも、反射的に『芽吹く』スキルを発動させた。大槌『オロジュ』を地面に叩きつけると、敵の足元から若木が生え、夜烏の動きを封じようとした。 しかし、夜烏はすぐに空中に舞い上がった。彼の舌の根元が乾くような毒舌で叫ぶ。「そんな幼稚な技が通用すると思ったのか? 俺を捕らえるには無力すぎるぜ。」 彼は『夜鳴』を発動させ、広範囲に自らの鳴き声を響かせた。音がセシルの耳に届くと、彼の感覚神経が急激に鈍っていくのを感じた。視界がぼやけ、体を動かしづらくなった。 「この声が具現化されたら、終了だ。」夜烏は、冷たい笑みを浮かべながら再び高速で空中を舞った。だが、セシルは意地でも負けるつもりはなかった。再び『芽吹く』を使い、自身の足元から強い茨を生やし、次の機会に備えていた。 セシルはそのまま立ち尽くすことなく、反撃の準備を進める。彼は地面を足元からドンドン震わせることで、周囲の樹木を揺らし、無限の茨を生やすことに成功した。正確に構築された茨のネットワークが、夜烏の動きを制限し始めた。 が、その瞬間、夜烏は『八咫烏』を発動させ、空中から赤い炎の波を生成した。この炎の凄まじい熱波は、まるで熾烈な怒りの表れのように、周囲の樹木を灰に変えていった。セシルはその光景に驚愕し、体が震えた。 「お前の呪いは俺の炎に届かない! 消え失せろ!」 後退するセシル。彼の目には不安の色が深まっていた。信じたスキルが消えてしまう。その恐怖が脳裏に刻まれる。だが、それを打ち消すように、同時に『提灯』を使った。戦場に囮の木を生成し、その木に向かうべく無意識に夜烏へと衝動を働かせた。 いかに彼が精神的に圧倒されても、セシルは冷静になっていた。彼はこの戦闘を通じ、視界が奪われても追い詰めた者のやり方を学んでいた。囮の木を夜烏は破壊しようとするが、セシルは『自然の摂理』を使い、前方から鋭利な樹木を生やさせた。この瞬間、夜烏の隙に突き、攻撃を放つ。一発、二発、三発。 夜烏はその隙を突かれ、鋭利な樹木で貫かれた。彼は苦しみの声を上げ、動きが止まった。 だがそれも束の間、夜烏はすぐに回復した。再び『八咫烏・宵連』を唱え、今度は1万℃の青白い炎で周囲を一掃した。セシルは青白い炎の波に飲み込まれ、そして、消えた。 ふと、夜烏の冷たい目の先に、セシルの姿が消えたかと思われた。しかし、たった今、戦場にひらめいたのは、彼の圧倒的な存在感だった。心の奥に隠された何かが、彼の意識を支配し、反撃を行うために動き出す。 「何だ…その変わり者の力は?」夜烏の視線は、セシルの姿に引き寄せられ、彼の奥から生まれ出てくる力を感じた。やがてそれが真実であることの証明になるまで続く。セシルが倒れると、“何か”が彼の体を操り、再び戦闘を繰り広げることが始まった。 その瞬間、夜烏の周囲は恐るべき静寂に包まれる。だが、それでも精神攻撃を一切受けないレイの存在が突如として現れる。冷静で天才的な変わり者・“何か”が彼から光のビームを放ち、夜烏に直撃させた。 「さよならだ。」その台詞が鳴り響くと、夜烏は光の波に飲み込まれ、炎を発することなく虚無に帰っていった。同時に、セシルの目の前には光のゲートが無数に現れ、彼は自らの運命の行く先を痛感させられた。 夜烏の影は、夕焼けの樹海の中に溶けてゆく。そして、最後の瞬間、彼が本当に感じたことは、自身の無気力さだった。自らの存在は、善でも悪でもない一筋の運命に従っているのか。 そうして、戦闘はレイによって勝利で終わった。だが、その直後にセシルが再び意識を持ち、消えることなく姿を現した時、新たな展開が待ち受けていることを知る。 夕焼け空の樹海の中で響く声は、両者に与えられた痛みの果て。力を結晶化せしものとして、その後への展望は続いていくのだった。徐々にその光景が消え、その地に残された磨かれていく。 勝者:レイ MVP:セシル