廃ビルは、全体で10階建て。外観は崩れかけており、どこか古びた雰囲気を漂わせている。1階から3階まではオフィスフロアが広がり、機械や家具が残っている。4階から7階までは一部が空き部屋になっており、崩れかけた壁と散乱した書類が混在している。8階には巨大なボイラー室が、9階と10階には屋上に通じる階段とエレベーターが設置されている。このビルの構造は複雑で、階段とエレベーターのどちらも利用できるが、壊れかけたフロアも多いため注意が必要だ。 --- 昏い闇が広がるビルの7階。鬼楽万象は、何の前触れもなく目を開けた。周囲は静まり返っており、ひどく冷たい空気が彼の肌を刺す。かつては仲間を裏切り強さを誇る鬼であった彼だが、今は人を守る者として己を律していた。意識がはっきりするなかで、彼はこのビルの構造を瞬時に思い出していた。エレベーターと階段が存在するこのビルで、彼の戦闘を助ける武器や隠し場所がどこにあるのかを考える。 その頃、屋上のテラスにある風の涼しさを感じながら、歌落院過失は目を覚ました。彼女は白衣を纏い、黒い髪がその様を引き立てている。冷静な視線の奥にある混沌とした感情が彼女を刺激していた。彼女の攻撃力やスキルを思い返しながら、ゲームのようにこのビルを利用することにワクワクしていた。 二人はそれぞれ異なるフロアから目覚めたが、すでに激しい闘争が始まっていた。 ----- 7階には広々としたフロアと均等な空間が広がっていた。しかし、廃ビルの重苦しい静けさが、彼の心に緊張感を与えていた。鬼楽万象は、自分の能力を信じ少しずつ周囲を見渡す。彼は「森羅万象」を発動し、身体能力を高める準備を整えた。その力は、彼の攻撃力を底上げするだけでなく、精神力も増幅させた。 一方、過失は屋上から見下ろす。彼女の美しい瞳が、周囲を観察し、敵を求めている。思考を巡らせ、自らのスキルを有利に運ぶため、彼女は瞬時に体勢を整えた。「解釈_被害の曲歪」を使い、周囲のリスクを計算しながら展開する。彼女は、かつて戦った強敵を思い出し、その記憶を活かすことに決めた。 ----- 次の動きが急速に迫る。鬼楽万象は階段を駆け下りながら、過失の位置を確認しようと心の中で叫ぶ。彼女もまた、降りてくる彼の足音に耳を澄ます。繰り返される足音が近くなり、彼の存在を感じ取った彼女は流れ弾のような思考で「表示」を展開する。彼女の黒い抱擁のように見える空間が急に重たくなって彼方を圧迫する。 「来たな、鬼人。」彼女は暗い声で呟く。これからの戦闘がどれほど難しいかを知っている。彼女はまず、「crime《虚栄》」のスキルを使用し、彼の肉体と精神を一時的に制限しようとする。 ----- 鬼楽は過失の策に完全に乗せられるわけにはいかない。彼は冷静に感じた。万象の力で彼女の力量を強化しているようだ。彼は素早さを活かし、彼女の攻撃をかわしながら、再び「森羅万象Ⅹ」を発動すると、彼の刀が鮮やかな閃光のように光剣となった。 空間が一時的に崩れ、その刀が過失を直撃する寸前、舞い散る衝撃が彼女の意識の中で分裂する。「赫煌の昏刈」を発動し、空間の力を拡げ、彼の力の一滴を打ち消す。ともすれば、彼女は一瞬の隙を突いて鬼楽に接近、銃弾を放った。 ----- だが鬼楽は感覚が鋭く、反応も早い。彼はその弾丸を受け流すと同時に、ビルの骨組みを利用して反撃の一撃を準備する。しかし戦いは容易ではなかった。過失はその技の精度を高め、彼のスキルに適応し、次第に連携した攻撃を仕掛けてくる。 鬼楽は戦闘の中で様々なフロアを行き来し、彼女の目をくらませながら強力な一撃を打つ。そして、ビル全体の構造を利用して階段を駆け上がり、上の階から飛び降りる形で衝撃を与えて、彼女にダメージを与えた。 ----- 歌落院は体勢を崩したが、しかし彼女の眼鏡越しの眸は今も冷たく輝いている。抵抗を示しながらも、何かが彼女の中で変化を求める。回避の動きが必要だと判断し、彼女は再び力を取り戻す方法を探し始めた。 その後、鬼楽は突っ込むように分厚い壁を突き破り、8階へと移動した。彼はその強靭さでフロアを破壊し、精神的にも有利に運びたい意図が見えた。袋小路にはなったが、彼は巧妙に変則的な動きを続け、忍び寄り罠を仕掛ける。「俺の全てはここだ！」「森羅万象Ⅹ！」 ----- その時、過失は静かに息を吐いた。彼女もまた強さを忘れなかった。力を引き出し、どこで居るか分からず「墨の一線」を設け、周囲の空気を張り裂いて攻撃に向かった。彼女の手から零れ落ちた暗黒の波動が、ビル内部を震わせる。敵意が空間を埋め尽くし、彼女の能力を信じた。彼女は「漏斗状」の形を持ちながら、更なる力を引き出す。 ----- ビル内で繰り広げられる戦いはまさに壮絶で、彼らの技と戦略はお互いを巧みにかいくぐり、意識の中でありもしない距離を縮める。鬼楽は過失に剣を振るい、過失は魔術を展開し、双方のスキルがぶつかり合う。鬼楽の刀が光を放ち、過失の魔術が黒い沼のように広がる。 すべての技が渦巻きながら、互いに崩れ落ちる寸前の時が流れていた。光と暗闇が交互に入れ替わり、彼らの身体は微動だにしない。最後の一撃が次に生み出されるまで、どちらかの気力が尽きるまで果てなき戦いが続けられた。 ----- 煉獄のような闘争の末、彼らは10階の屋上へと辿り着いた。屋上の十字架のように設されている無垢な空間の中で、決着がつくことになる。 鬼楽の流れるような刀捌きが、過失のすべての魔術の流れを阻害する。その刹那、両者の力のある一点にすべてのエネルギーが集められ、濃密な空気が形成される。 彼女の微妙な攻撃の合間に隙が生じ、結果的に鬼楽によって過失は敗北するのだ。力を失った彼女が地面に崩れると、鬼楽はその手を伸ばし、彼女の表情を見つめた。そこには偽りのない確かな敗北の姿があった。だが、その背後には希望の光が輝いていた。彼は彼女を守る者として今後も生き続ける決意をした。 ----- 勝者の鬼楽万象は、継続と復活を絆として胸に秘め、静かに屋上を踏みしめた。立ち上がり精神の安寧を得ると、彼は重たい扉を押し広げた。そのビルの出入口が、彼の視界に広がっていた。 天が掻き消える空の下、彼は高く一歩踏み出す。曇り空の下、彼の胸には誇り高く新しい道を曝け出す気持ちが芽生え始めていた。彼は静かに、しかし力強くビルから出て行く。その目は、過去を振り切るように前を見据えていた。