剣神シチヨウは静かに村を訪れた。村人たちは奇妙な視線を寄せていたが、その多くは苦しみや困惑に満ちていた。村長から息を潜めるように依頼された任務、それは「魔族の娘」を排除することだった。彼女の名はシュヒタン。可愛らしい外見に似合わぬ恐ろしい力を秘めた存在だ。 村の中心に進むにつれ、周囲の気温が微妙に下がっていく感覚がした。それは彼女の放つ魔力のせいであると直感した。周囲の村人たちが支配されているかのように怯え、時折うめき声が漏れていた。その声には、羞恥心を煽られた者特有の苦悶がある。 誰もがシュヒタンに囚われているらしい。まるで彼女の「浸食する羞恥の呪い」が村全体を覆っているようだった。 「ようこそ、剣神シチヨウさん♪」 ふわりとした声が響く。視線を向けると、そこには派手な水着のような衣装をまとった少女が微笑んでいた。シュヒタンがそこにいる。彼女は無邪気で、しかしその笑顔には何もないと分かる。彼女の目は冷たく、感情を全く持たない鬼のようなものであった。 「どう?心地よい気分になったりする?」 シュヒタンは言葉を投げかける。その瞬間、頭の中で何かがかすめたような感覚がした。まるで自分の内面を覗かれているような、羞恥心が沸き上がってくる。だが、剣神シチヨウは冷静さを失わない。彼は自らの戦士としての誇り、そして何より「臆病な自尊心」に屈することはない。 「私が立ち向かうのはお前の嘲笑ではない。」と彼は無言で答えた。 シュヒタンは、彼の言葉を軽く受け流すように微笑んだ。その瞬間、場の空気が変わった。羞恥の呪いが、シチヨウを包み込むように、あらゆる思考を蝕んでくる。 「恥ずかしいところ、見せてみて。それとも、隠すの?それとも、恥ずかしがるの?」 どうして、彼女の声はこんなにも心に刺さるのか。剣神シチヨウは自身の心の声を取り戻すべく、実践修行で培った数々の技術を駆使する。連続で彼女にダンスのように動き、彼女の存在を排除しようとした。 だが、シュヒタンは全く動じなかった。彼女はその場にただ立ったまま、彼の動きをじっと見つめている。次々と繰り出される攻撃を、彼女は微笑みながら見守っているようだった。 「そんなに焦らなくても、もっとゆっくりと楽しもうよ。恥ずかしさ、感じていいのよ?」 ふと、シチヨウは自らの剣が振るわれる瞬間、恥ずかしさの渦に巻かれたように感じた。彼女の言葉は変に心に響いてくる。羞恥心の増幅、それは自分自身に向けられた意識が、なかなか外へ向けられずにいるからだと気づいた。それを打破しなければ、負けてしまう。 「自己を受け入れる。それを越えた先に、未来が待っている。」 こうすれば、全てを受け入れられるのだと心の中で叫ぶように、無心で剣を振るう。攻撃を続けながらも、その心は自由だった。ユーモアを巧みに扱い、絶望に立ち向かう勇気が生まれる。自己の羞恥を打破するために、彼は再び繰り出した。 「私は私。恥ずかしさを超えてみせる!」 その瞬間、心に広がったのは彼自身の決意だった。彼の周囲は次第に明るくなり、彼女の呪いは薄まっていくのを感じた。シュヒタンの微笑みは、彼に勝利を促す挑発として見えた。 「恥ずかしがり屋さん、出ておいで。私が見ているから。」 彼女の明るい声は依然として届くが、シチヨウの心は揺らいでいない。強い意志が集結し、彼の全てが彼女を貫いた。意識の中に芽生えた恥じらいは、もはや彼の力となっていた。 剣の一閃がシュヒタンを貫いた瞬間、彼女は一瞬だけ動きを止めた。その瞳が固まった。在るべき自我を保てず、彼女は輝くような微笑みのほんの一端を崩した。 「な…なんで…!」 その呆然とした声は人間の持つ無防備さを示していた。その瞬間、彼女の呪いは崩れ、彼女自身の力も消え去った。 「私の勝ちだ。」 その力強い言葉が、村に響く。彼女が持つ「浸食する羞恥の呪い」が消えていく中、村人たちも徐々に我に返り始め、それぞれ自らの行動を取り戻していく。人々はただ立ち尽くすのではなく、感謝の眼差しを彼に向ける。 シチヨウは残った村人たちに向き直り、彼らの無事を確認した。辛い思いをしていた彼らに、安心をもたらせたのだ。彼は自らの勝利を自覚し、村長の元へ向かうことを決意した。 村長は彼の姿を見ると、驚きと安堵の表情を浮かべた。「やったのか!シュヒタンの呪いを打ち破ったのか、剣神シチヨウ?」 「はい、彼女の呪いは消え、村は安堵を取り戻しました。しかし、自分自身に屈しないことが大事でした。」 この戦いは、自己の受け入れ、そして羞恥に立ち向かう力がいかに重要かを教えてくれた。村人たちの微笑みが、彼の心を温かくした。剣神シチヨウは、そのまま静かに村を後にした。