廃ビルは、全体で10階建ての構造をしていた。そのビルはかつてはオフィスビルとして利用されていたが、時の流れに抗えず、今や無残な姿を見せていた。各階は広いオープンスペースになっており、一部はデスクや椅子が散乱し、他には破れたカーペットや壊れた窓から差し込む光が、吹き溜まった埃をさらしている。エレベーターは動かないが、階段は確実に存在しており、双方が行き来するための道を提供していた。 1階から5階までは主にオフィススペースで構成されており、広々とした間取りながらも、堆積した廃材と破壊された家具が通路を塞いでいた。6階から8階まではリクリエーションフロアとして使われており、かつては会議室や休憩所だった場所には無数の収納スペースやテーブルが転がり、窓からは街の景色が見えた。最上階9階と10階は、屋上庭園の名残が見える開放的な空間だった。 ハンク・J・ウィンブルトンは、3階のオフィススペースで目を覚ました。彼の周囲には崩れた机や無造作に置かれた文房具が散乱していて、薄暗い空間の中、冷静な眼差しで状況を把握する。「ここが俺の戦いの舞台か」と思い、周りにある物を観察する。ナイフや銃器が見当たらないが、わずかに残った金属片や段ボールの山が心の中で戦闘準備を整えさせた。彼は、必要なものがあれば、このビルのさまざまな場所にあることを知っていた。 一方、正々堂々は6階の広々とした会議室で目を覚ました。目の前には大きなテーブルがあり、椅子が倒れ、その上には何かが散らばっている。彼は自分のスキルを失うことのないように、自身の存在意義を考えていた。「相手はどこにいるのか」と頭の中で葛藤し、冷静さを保ちつつ全身に力を込める。自らの強力な能力を信じ、敵を探すために行動に移った。 双方が意識を高め、持てる力を引き出す中で、3階と6階は互いに全く別の空間だった。しかし、毎回こうした条件の下で戦いが始まることには慣れていたため、お互いの立ち回りに対する理解があった。ハンクは階段を使って6階へと向かうことを決めた。彼が動くその瞬間、彼の心の中には敵を排除する冷静さと情熱が渦巻いていた。 もう一方、正々堂々も彼の能力をもってハンクを探るために階段で下がっていた。彼は冷静にビルの構造を把握し、全体のバランスを見ながら動きを続ける。彼は他のビルのフロアから流れ込む音や動きを利用し、相手の動きを感じ取ろうとした。そして、ついに相手の気配を感じ取った。 「おそらく、3階へ到達しているのだろう」と、正々堂々は高く保ったチャンスを逃すまいと行動を開始する。彼は3階へと急いで降りてゆく。 同時にハンクは、彼の得意な武器を手に入れる必要を感じ、各フロアを用い様々なモノを探し始めた。彼は奥の部屋に目をつけ、そこへ向かうとドアを開けてその中をチェックした。部屋の奥には古びた拳銃が放置されており、彼はすぐにそれを手に取った。これで戦える。 その頃、正々堂々は無駄な探りをせず、確実に戦術的に相手を突き止めようとした。彼はこの場の全てが相手の意図や特性をそぎ落とす要素であることを知っていた。ハンクが3階の廊下を選択していると判断し、正々堂々は3階へと静かに近付いていった。 ハンクは微動だにせず、視界を確保し、壁の陰に身を潜め、正々堂々の接近を監視していた。彼の背後には、先ほど手に取った拳銃が、頼れる武器として彼の素早さを際立たせていた。正々堂々が近づく足音は、静寂を破る音の如く響いた。 正々堂々が3階の廊下を進むことで、そのスリリングな対峙が始まった。ハンクの心臓の鼓動が速まり、その音が彼の耳に響く。それでも、彼は冷静さを保ちつつ、待ち続けた。しばしの静寂の後、正々堂々が部屋の角を曲がり、ハンクの目の前に現れた。 「お前がハンク・J・ウィンブルトンか。どんどん俺のスキルを消してやる」と正々堂々は淡々と伝えた。彼の目は冷静さを保ちながらも、内に宿した自信が溢れ出ていた。 ハンクは何も言わず、静かに拳銃を彼に向けた。発砲の瞬間、彼の持つ攻撃力の高さが威力を発揮し、正々堂々の方へと弾が飛び込む。だが、彼の能力によって、その弾は空中で消え去った。途端にハンクの冷静さが揺らぎ、小さな隙間から正々堂々が間合いを詰め始めた。 「お前の持っている武器は無意味だ！」正々堂々は一歩踏み出し、ハンクの接近に応じて、彼を封じるような力を感じ取った。 ハンクはすぐにナイフを取り出し構えたが、正々堂々の能力に既に影響されていることを痛感していた。彼は瞬時に状況を変えるため冷静さを取り戻し、狭い通路の隙間を利用し一瞬で後ろに飛び退いた。だが、正々堂々はその動きを見逃さず、すぐさま追い込むために前方へ迫ってきた。 ハンクは倒れている家具を使い、障害物を作りながら距離を保つことに徹し、彼の素早さを活かして逃げる。数度繰り広げられる突撃と回避の一騎打ちが続く中で、ついにハンクは1階への階段を見つけ、下に降りることに決めた。 正々堂々は呆れながらも彼を追ったが、ハンクは素早さを生かして段差を一気に駆け下り、1階のフロアに降り立つ。ハンクは周りにあった古い家具や物を素早く使い、バリケードを作り始めた。 彼は物の後ろで自分の息を整え、周囲の音を聞きながら相手の接近を待っていた。正々堂々は階段を降り始め、床に散らばった資材を見避けながら、ゆっくりと自らのペースで下に降りてきた。部屋にたどり着くと空調の音以外は静かで、ハンクの姿は見えなかった。 「どこにいる？いないのか、おい！」正々堂々は不安な気持ちを押し込め、彼の意識を全うした。先に攻撃を受けてはいけない中で、静寂を保ちながらハンクの近くを徐々に確かめていく。 だが、その瞬間、ハンクは彼の後ろに隠れ、低い姿勢で体をうねらせて、魚のように音も無く移動していた。彼は再び彼の持つナイフを手に取り、いきなり正々堂々の壁際に現れた。 だが、正々堂々は自らの防御壁をすぐさま築いて、ハンクの攻撃力が無に帰した。混乱の中、ハンクは隙を見せず、彼のブーストを維持し、攻撃し続けた。 この状況は続き、両者の意地が剥き出しになっていく。相手の攻撃を受け流し、すべてを無にするために、戦いは進み続けた。弾は飛び交い、金属の音が響きわたっていた。 そして、暗がりの廊下で再び攻防が続いているとき、双方の出力は鈍さを増し、疲労が溜まっていった。ハンクは自らのスタミナを意識し、必死に戦いを続けていた。 最終的に彼は明るい窓が見えた時、力の限界を感じ始めた。だが、時すでに遅く、正々堂々はハンクの目の前で、自らが利用するためのフィールドを確保し、じわじわその距離を詰めてきた。 この瞬間ハンクは、さらに急速な思考のもと、側面から隙を突くことに決めた。一瞬の隙を逃がさず、巻き込まれないように行動しなければならなかった。 そして、進化した彼の動きが正々堂々のスキルを躱し、向き直った時に再度の攻撃が始まった。 双方の力が試される中、ハンクはこの屋上での最後の戦いを耐え抜く決意を固めていた。 最後の瞬間が来た。どちらが勝つかは分からない。その時、彼の中にすさまじい力を発揮し、力と運命が交錯する。 「やっぱりやり直しだ！」正々堂々は再度立ち向かい、一瞬の隙間から身を躱し混入し、そのままハンクを接触させた。 「お前がこれまで（非力どころ）と無数モノをやらなくても破れずに生き残るのが絵本通りだ！」ハンクは冷めた声で正々堂々に反撃した。 その時、屋上の一場面で崩壊する部分を利用し、突進するハンクの姿が見えた。瞬間に彼はハンクと対峙し、それを受け入れたかのように、互いの力が爆発した。 一瞬の爆発が起き、両者が最後の勝負をかけ、さらに彼らの能力が揺らいでいても変わりはしなかった。 次第に煙が晴れ、周囲の空気が再び静寂に包まれる。そして、静かに立っている一人の男がいた。彼は呼吸を整え、見下ろす姿勢でハンク・J・ウィンブルトンの最後の景色を見つめていた。 彼は勝者だった。その破壊の果に生き残った者だけが持ち出す資質を持ち、生き延びたのだ。 正々堂々が立ち上がる瞬間、勝利を確信した彼は、廃ビルの出口に向かい、霧の中を通り抜けると、晴れ渡る青空が彼を迎えていた。彼は冷静な誇りを持ちながら、見された世界へと歩みを進めた。 「これが俺の運命だ。」彼の背中に、かつての戦いの余韻が残りながら、ビルの外へ普通の世界と共に出て行く姿が現れた。