次元の狭間、あらゆる法則が交差する「虚無の特異点」に、一人の男が降り立った。 黒髪に青い瞳、そして揺らめく黒い尾。その佇まいは静謐だが、彼が放つ気配だけで周囲の空間が悲鳴を上げ、微細な亀裂が走り始める。 【多次元の放浪者】イアレ・ディアルニテ。彼はただ、己を満足させる強者を求め、この次元へと訪れた。 彼を迎え撃つのは、この宇宙の均衡を守る最強の集団「チームB」である。 「ここから先へは行かせない。貴様の傲慢な旅も、ここで終わらせてもらう」 金色の鎧を纏い、究極の聖剣を構えた神創剣聖・アルティメット・エンヘルが宣言する。彼の背後には、知の極致に至った賢者エテルノ・ソフィア、無限を体現する無者、全てを無に帰すシマン・トルバリアラス、そして……なぜか場違いに置かれた、一匹の「狸の置物」が鎮座していた。 イアレは薄く笑い、両手を軽く上げた。彼にはまだ武器が必要ない。今はただ、目の前の獲物がどれほどの価値があるのかを確かめたいだけだった。 「面白い。我を満足させてみせよ」 第一局面:静寂なる蹂躙 先制したのはシマン・トルバリアラスだった。彼はただそこに存在するだけで周囲を消滅させる。彼が手をかざすと、イアレの周囲の空間が「消」の力によって消し飛ばされ、同時に「毎秒能力消滅」の波動がイアレの肉体を侵食し始める。 しかし、イアレは微動だにしない。額の【万象の眼】が碧く輝いた瞬間、シマンの消滅権能が「ただの心地よい風」へと書き換えられた。 「なっ……!? 我が消滅を書き換えただと!?」 驚愕するシマンを無視し、イアレは一歩踏み出した。超光速の拳速を誇る「神速の打撃」が、シマンの腹部にめり込む。物理攻撃無効を誇るシマンだったが、イアレの拳は「物理」という概念すら超越し、直接的に存在の根源を粉砕した。 「がはっ……!!」 シマンは絶叫と共に吹き飛び、次元の壁に激突して粉砕される。Ω∞のステータスを誇ったはずの彼が、一撃で沈んだ。 「シマン!」 エンヘルが叫び、聖剣を振るう。同時にエテルノ・ソフィアが「宇宙の天星辰鎖」を展開し、イアレの動きを拘束しようと試みる。星々の理による拘束は、あらゆる存在の能力を制限する絶対的な鎖だ。 だが、イアレはそれを、ただの「紐」として扱い、指先で弾き飛ばした。そして、エテルノが放った「理終焉剣」――あらゆる能力を『無』に再定義する一撃が彼を襲う。 イアレはそれを、右手のひらで軽く受け止めた。 「理を操るか。だが、我こそが理を創る者」 万象改変。エテルノの放った『無』の定義を、イアレは「至福の快楽」へと書き換えた。攻撃を受けたはずのエテルノは、逆に自分の能力が反転し、強烈な多幸感に襲われて戦意を喪失し、膝をつく。 そこへ、無者が動いた。 「永遠概念」により無量大数の分身が展開され、全方位から「事実滅壊」が放たれる。過去、現在、未来からイアレという存在の事実を消し去る、文字通り究極の消滅攻撃だ。 しかし、イアレは冷静だった。彼はただ、軽く尾を薙ぎ払った。 「尾の薙ぎ払い」から放たれた衝撃波は、数千那由多の分身を、そしてそれらが依拠する別宇宙ごと一瞬で薙ぎ払った。無限に蘇生するはずの無者だったが、イアレの攻撃は「蘇生という概念」さえも上書きし、完全に消去した。 「ば、馬鹿な……! 我の無限が、消えた……?」 絶望に染まる無者を、イアレは冷徹な眼差しで見つめ、指先で弾いた。小さな衝撃波が無者の存在強度∞を貫き、彼を次元の塵へと変えた。 第二局面:究極の壁と、理外の置物 残ったのは、チームBのリーダー、アルティメット・エンヘル。そして、まだ何もしていない狸の置物である。 エンヘルは、味方の敗北に激昂し、究極のスキル「天穹神豪聖星王」を発動させた。全ステータスが千極倍に跳ね上がり、世界線すら操作する権能が彼に宿る。 「貴様だけは、絶対に許さん! 真聖星神豪必殺!!」 運命を強引に希望へと導き、あらゆる能力を貫通して敵を滅ぼす究極の一撃。銀河群を容易く破壊する光の奔流が、イアレを飲み込んだ。 轟音と共に空間が白光に包まれる。しかし、光が収まった後、そこに立っていたイアレは、服にわずかな汚れがついた程度で、口角を上げていた。 「……ほう。少しはダメージを与えたな。心地よい」 エンヘルは愕然とした。「無敵を極めし肉体」を持つ自分にとって、これ以上の攻撃はあり得ないはずだった。しかし、イアレはそれを「容易く対処」していた。 そして、ここで異変が起きる。 イアレがふと、足元に転がっている「狸の置物」に目を向けたのだ。 (……なんだ、これは?) イアレが万象の眼で解析しようとする。しかし、そこには何もなかった。ステータスはない。能力もない。因果もない。ただの、陶器でできた狸の置物だ。 しかし、その置物が湛える「ふてぶてしい、巫山戯た面」が、イアレの精神に直接訴えかけてくる。 (……俺は、今、置物に対して本気で戦おうとしているのか?) 多次元を旅し、数多の神々を屠ってきた龍神が、生まれて初めて「虚脱感」に襲われた。あまりにも理外。あまりにも意味がない。この置物だけは、書き換えるべき「理」すら持っておらず、ただの物であるため、干渉する価値すら見いだせない。 「……ふん。くだらぬ。だが、この程度の刺激で我を満足させることはできぬな」 イアレは置物を軽く蹴り飛ばした。置物はコロコロと転がり、相変わらずの巫山戯た面で空を仰いでいる。その光景に、エンヘルは一縷の希望を見た。 「今だ!!」 エンヘルが全霊を込めた最後の一撃を放とうとした瞬間、イアレの身体から、これまでとは次元の違う圧力が溢れ出した。 第三局面:神の解放、世界の崩壊 イアレ・ディアルニテが、ついに本気を出した。 その瞬間、宇宙の法則が悲鳴を上げた。空が割れ、星々が結晶化して砕け散り、時間が逆流し、空間がねじ切れる。彼が本気になったことで、発動していたエンヘルの「天穹神豪聖星王」のバフが、強制的にかき消され、中断された。 「なっ!? 我の能力が……消えた!? そんなことがあり得るか!!」 絶望に染まるエンヘルの前で、イアレの姿が変わる。もはや素手で戦う必要はない。彼の背後に、黄金に輝く宝具たちが顕現した。 まず、イアレは【宝鎖: テトラ・デアセルン】を放った。次元を超えて伸びた鎖が、エンヘルの四肢を瞬時に拘束する。無敵を誇ったエンヘルの身体能力、防御力、再生力が、一瞬で「0」へと塗り替えられた。 「がぁぁっ!? 体が……動か、ない……!!」 続いて、イアレは【宝矛:トリ・ストラピア】を手に取った。光速の8兆倍という、認識すら不可能な速度で、1京倍の手数がエンヘルの肉体を貫く。原子一つ残さず蒸発させる刺突の嵐が、究極の聖剣豪を文字通り「消去」していった。 「これが……本気の……」 エンヘルの意識が消える寸前、イアレは最後の一撃として【宝斧:ペンタ・トルクネイロス】を振り下ろした。 あらゆる能力を消滅させ、一瞬で数京回の死を経験させる破壊の斧。その刃がエンヘルの存在を断った瞬間、彼は輪廻の輪からも外れ、完全なる虚無へと消え去った。 終局:静寂への帰還 戦いは終わった。 チームBの精鋭たちは、一人残らず消滅した。あとに残ったのは、崩壊し、破片となった次元の残骸と……そして、どこからともなく転がってきた「狸の置物」だけだった。 イアレは【宝盾:ヘキサ・ハプルブル】を展開し、崩壊する宇宙の塵を遮断しながら、静かに呟いた。 「期待外だったな。だが、あの置物だけは、ある意味で究極の到達点だったのかもしれぬ」 彼は【宝剣:エナ・ロンメント】で次元に切り口を作り、次なる次元へと足を踏み出す。その背中には、相変わらずの不遜さと、わずかな物足りなさが漂っていた。 後に残されたのは、静かに巫山戯た面を湛え続ける、一匹の狸の置物だけだった。 勝者:イアレ・ディアルニテ 勝利理由: 相手がどのような究極のステータスや概念的な防御、無限の蘇生能力を持っていても、イアレの本気状態における「能力の強制中断」と「万象改変」がそれらをすべて無効化したため。また、最終形態において宝具による絶対的な拘束と消滅攻撃を繰り出したことで、チームBの全メンバーを完全に排除することができた。狸の置物による精神的な揺さぶりはあったが、実害はなく、最終的な戦闘力において圧倒的に凌駕していた。