冬木の街に、不穏な魔力の渦が巻いていた。それは七つの陣営、七組のマスターとサーヴァントが、唯一の万能の願望機「聖杯」を巡って殺し合う、血塗られた儀式の始まりであった。 第一章:召喚の儀、運命の邂逅 冬木の深夜、市街地各地で召喚の儀式が行われていた。 「……来い! 我が呼び声に応え、この理を穿つ槍となれ!」 若き魔術師、カイトが血の令呪を刻んだ腕を突き出し、魔方陣を起動させる。眩い青い光と共に現れたのは、青い龍の鎧を纏った威圧感の塊――【ランサー】蒼龍魔槍であった。 「召喚に応じ参上した。我が槍、汝の敵を全て穿ち抜こう」 一方、古びた洋館では、冷徹な英国の魔術師アーサー・ペンドルトンが、禁忌の書を広げていた。 「死を司る王よ。我が渇きを癒やす力を貸せ」 影から這い出したのは、断命の大鎌を携えた冥府の主、【キャスター】ハデス。死の香りが部屋を満たす。 また、賑やかな路地裏では、正気を疑うような魔方陣から、白髭を蓄えた老人がギターを抱えて現れた。マスターの権蔵(ごんぞう)は、同じく快楽主義的な魔術師である。 「ガハハ! 最高の音色を響かせようぜ、じいさん!」 「ほっほっほ、賑やかな主(あるじ)じゃな。魂まで震わせてやろう」 【バーサーカー】涅槃爺。その正体は、音で空間を砕く破壊の権現であった。 さらに、最悪の事態が起きていた。ある狂信的な魔術師ゼノが、異星の生命体を強引に英霊の座に固定し、召喚に成功したのだ。 「ククク……究極の生命、究極の兵器よ」 現れたのは、黄金の流線型、全身に無数の瞳を持つ絶望の化身――【フォーリナー】ORT。言葉はなく、ただそこに存在するだけで周囲の空気が放射能に汚染され、地面が結晶化していく。 一方、街の外れでは、真面目すぎる魔術師エレンが、竜狩りの騎士【セイバー】ストルクを召喚した。 「……よろしくお願いします、ストルクさん」 「(小声)……あ、ああ。よろしく。それにしても、この鎧、脱げないし体調が悪いな……」 豪華だが、どう見ても「パチモン」の呪い鎧に身悶える騎士であった。 陽気な少年、【アーチャー】バンチは、お調子者のマスターレオと意気投合していた。 「よっしゃ! オレの連撃で、聖杯なんてあっという間にゲットだぜ!」 「いいぞバンチ! 暴れ回ってくれ!」 そして最後の一組。隠居した老魔術師玄道の前に現れたのは、ボロ布を纏った老剣士、【アサシン】トージローであった。 「あーしに聖杯なんて必要ないが、お前さんが言うなら付き合おうかね」 飄々とした態度。だが、その腰に差された刀には、世界を断つほどの静寂が宿っていた。 第二章:静かなる開戦と衝突 聖杯戦争が始まって数日。冬木の街では、見えない魔術師たちのサポートを受けながら、サーヴァントたちが互いの出方を伺っていた。 ある夜、バンチとストルクが市街地で衝突する。バンチの超高速突きがストルクを襲うが、ストルクは不自由な鎧に苦しみながらも、魔剣でそれを弾いた。 「おっと! かなり硬いな、あんた!」 「(小声)……うるさい。集中させてくれ」 そこに、空から青い閃光が降り注いだ。ランサー・蒼龍魔槍の襲撃である。 「まとめて消えろ」 【蒼槍】の一撃が地面を叩きつけ、爆風が街を揺らす。マスターのカイトは後方から強化魔術をランサーに送り、その破壊力を底上げしていた。 「うわぁ! 強い! ストルクさん、逃げましょう!」 「同意だ……(小声)」 一方、影ではハデスが暗躍していた。彼は【闇の束縛】を用いて、街の監視網を破壊し、密かに標的を定めていた。彼の狙いは、最も異質な魔力を持つフォーリナー・ORTであった。 第三章:絶望の結晶化 ハデスは瞬間移動でORTの懐に潜り込み、【断命斬】を放った。魂を直接奪い去る一撃。しかし、ORTの反応はなかった。 「……何?」 ORTの全身の瞳が同時にハデスを捉えた。次の瞬間、固有結界『水晶渓谷』が展開される。時間がマイナスに捻じ曲げられ、ハデスが立っていた場所が、瞬時に巨大な水晶の柱へと変わった。 「馬鹿な! 私の不死性すら上回る速度で――」 ハデスの体の一部が水晶に置換される。絶叫を上げる間もなく、ORTは淡々と核融合のエネルギーを充填し、周囲を焼き尽くした。 マスターのゼノは狂喜した。 「素晴らしい! これこそが絶対的な力だ!」 しかし、この絶望的な光景を、遠くからギターを弾きながら見ていた者がいた。涅槃爺である。 「おやおや、あんなに派手にやっては、音楽の邪魔じゃな」 「じいさん、あいつはやばいぞ! 行くな!」 権蔵の制止を無視し、涅槃爺はギターを掻き鳴らした。 【भगवद्गीता(バガヴァッド・ギータ)】 宇宙の調和と混乱を凝縮した音波が、水晶の谷を粉砕する。ORTの強固な外殻にさえ、わずかな亀裂が入った。神々の視座から降り注ぐ誅罰の音が、冬木の街を震撼させた。 第四章:共闘と裏切り 戦況は混沌としていた。ORTという「天災」を前に、生存者たちは一時的な同盟を結ぶことになる。ランサー、セイバー、アーチャー、アサシン、そしてバーサーカー。彼らは、マスターたちの合意のもと、ORTを討つための作戦を立てた。 「いいか、まずはバーサーカーとランサーが正面から注意を引きつけ、その隙にセイバーとアーチャーが懐に潜り込む。最後はアサシンが……」 カイトの指示に、皆が頷く。だが、聖杯を求める以上、この同盟は砂上の楼閣である。 決戦の日。ORTは擬似太陽【ソーラー・ストーム】を形成し、街全体を蒸発させんとしていた。 「今だ! 行け!」 ランサーが空を駆け、【蒼槍】で太陽の核を穿つ。バーサーカーのギターが空間を歪め、攻撃ルートを確保する。バンチが【レゾナンス】の連撃を叩き込み、ストルクが【紫電の嘶き】で装甲を削る。 その時、ストルクの「パチモン鎧」が、激しい衝撃でついに砕け散った。 「……ふぅ。やっと、体が軽くなった」 呪縛から解放されたストルクは、真の力を解放し、豪雷竜の剣でORTの核に深い傷を刻んだ。 しかし、ORTの再生能力は異常だった。失った部位が瞬時に幹細胞から補完される。 「クソッ! 死なないぞ、あいつ!」 第五章:頂への一閃 全員が疲弊し、絶望が広がったその時。それまでずっと、ボロ布を纏ってフラフラしていたトージローが、静かに前に出た。 「あーしが、そろそろ出番かな」 玄道は静かに令呪を一つ消費した。 「トージロー、全てを賭けろ。奇跡を現出させよ」 令呪の魔力がトージローに流れ込む。彼はゆっくりと、抜刀の構えをとった。世界から音が消えた。ORTの無数の瞳が彼を凝視するが、トージローは微動だにしない。過集中。もはや彼は、この世の理から外れていた。 「これがあーしの…【次元斬】」 閃光。 それは攻撃というよりも、「切れている」という結果だけが先に訪れた現象だった。 空間が、次元が、そしてORTという存在そのものが、縦に真っ二つに断たれた。 「これぞあーしの悲願…あーしの…頂き」 トージローは静かに刀を納め、そのまま後ろに倒れ込んだ。精神と肉体の全てを使い果たした、究極の一振りであった。 第六章:最後の殺し合い ORTという共通の敵が消えた瞬間、同盟は崩壊した。 「あーしはもうダメだが……あとののは、好きにやりなさい」 トージローは消滅していく。同時に、その主である玄道も、精神的な限界から力尽きていた。 残ったのは、ランサー、バーサーカー、セイバー、アーチャーの四陣営。そして、ひっそりと生き残っていたハデス。 「さあ、宴の続きだ!」 バーサーカーがギターをかき鳴らす。ランサーは天空から槍を投じる。バンチは笑いながら跳ね回り、ストルクは静かに剣を構えた。 凄惨な戦いが続いた。バンチはストルクの雷電昇に捉えられ、その身を焼かれた。ストルク自身も、ランサーの【蒼槍】による広範囲破壊に巻き込まれ、消滅する。 最後となったのは、ランサー・蒼龍魔槍と、バーサーカー・涅槃爺。そして、死の王ハデス。 ハデスは【輪廻の業火】を発動し、自らの肉体を焼きながら、最強の攻撃を仕掛けた。しかし、それはランサーの概念防御に阻まれ、逆に【蒼槍】によって魂ごと貫かれた。 第七章:終局、そして勝者 残るは二人。天空の征圧者と、超絶ギタリスト。 「いい音だったぜ、じいさん。だが、勝つのは俺だ!」 カイトが最後の令呪を二つ同時に消費する。 「命令する! 全魔力を槍に集束させろ! 奇跡を穿て!」 ランサー・蒼龍魔槍が、全命を捧げる最終奥義を起動した。 【終蒼:墜空】 空一面が群青色に染まり、巨大な槍の奔流が地上へと降り注ぐ。崩世の一撃。 対する涅槃爺は、静かに微笑み、ギターの最後の弦を弾いた。 「ほっほっほ。最後は、最高のフィナーレで締めくくろうではないか」 爆発。街の一角が消し飛ぶほどの衝撃波が走り、光が収まった後、そこには一人だけが立っていた。 ランサーは、自らの全命を捧げた攻撃で勝利したが、同時にその肉体も限界に達していた。しかし、バーサーカーの音撃は、ランサーの鎧の隙間を突き、その心臓を止めていた。 ……いや、最後に立っていたのは、マスターだった。 カイトは、ランサーが消滅する直前に、令呪による強制的命令で「勝利の瞬間まで存在を維持せよ」と命じていた。そして、バーサーカーのマスター・権蔵は、あまりの衝撃にショック死していた。 サーヴァントを失い、唯一の生存者となったカイトが、血塗られた地面に降り立った聖杯を手に取る。 「……勝った。俺が……」 冬木の街に、静寂が戻った。多くの犠牲を払い、絶望的な強者たちが潰し合った末に、生き残ったのは、最も執念深く、そしてサーヴァントに全てを捧げさせた若き魔術師であった。 【聖杯戦争 勝者】 陣営:ランサー(蒼龍魔槍)& マスター(カイト)