世界の果て、あらゆる概念が飽和し崩壊した特異点に、その巨体は鎮座していた。伝説のラーメン好き『拉味王(らあじおう)』。山脈のごとき身体を揺らし、彼は飢餓の咆哮を上げる。その胃袋は宇宙をも飲み込むブラックホールであり、彼を満足させられる一杯など、この世に存在しないと囁かれていた。 「……ふん、絶望的な胃袋ね。でも、私の食欲に比べれば大したことはないわ」 青い毛並みの狼耳をぴくりと動かし、フェンリラが不敵に微笑む。彼女の隣には、絶えず龍属性の煙を噴き出し、周囲の地面を腐食させる凶暴な巨獣、イビルジョーがいた。そして、その中心で飄々と佇むのは、存在そのものが法を無視した男、キャパ山シティ過多過多オーバー太郎である。 「この拉味王という御方のキャパシティを、我々の料理で完全にオーバーさせて差し上げましょう。それはもう、許容値外なのですよ」 三者の協力による、前代未聞のラーメン作りが始まった。 まず、料理の知識に精通したフェンリラが指揮を執る。彼女は最高級の小麦を極寒の氷魔法で瞬時に冷却・凝縮させ、密度が限界突破した究極の麺を練り上げた。スープのベースには、彼女が世界中のレストランを制覇して得た秘伝の出汁を配合。そこに、イビルジョーが「素材」として自らの体内から抽出した、猛烈なエネルギーを孕む『龍属性の濃縮エッセンス』を投入する。本来なら触れただけであらゆる生物を崩壊させる劇物だが、それがスープに混ざった瞬間、爆発的な旨味と破壊的な刺激を併せ持つ、禍々しくも黄金に輝く液体へと変貌した。 仕上げはオーバー太郎だ。彼は鍋に向かって、自身の能力【許容値外】を強制付与した。これにより、ラーメンの「量」と「味」の概念が物理的な限界を突破。一杯の丼の中に、銀河系一つ分に相当する濃厚なスープと、無限に増殖し続ける極太麺が凝縮されるという、宇宙法則を凌駕した盛り付けが完成した。 盛り付けられたのは、龍の煙を纏い、氷の結晶が舞い、そして存在感だけで空間を歪ませる一杯――『超・龍氷過多・絶望ラーメン』である。 代表してオーバー太郎が、丼を拉味王の前に差し出した。 「さあ、お召し上がりください。これが……我々が到達した、許容値外の一杯なのですよ!!」 拉味王は巨大な口を開き、その一杯を飲み干した。 その瞬間、静寂が訪れた。 ――次の刹那、拉味王の体内から龍属性の衝撃波が爆発した。彼の背後から巨大な龍の幻影が立ち上がり、同時に足元からは絶対零度の氷山が突き上げ、世界中の海が蒸発し、空が七色に塗り替えられる。拉味王の意識は、快楽と衝撃のあまり時間軸を逆行し、ビッグバン直後の宇宙まで飛ばされた。彼は絶頂のあまり絶叫し、その衝撃波だけで近隣の惑星系がいくつも消滅し、新たな銀河が誕生するという天変地異が巻き起こった。 激しい震動が収まり、拉味王は恍惚とした表情で、口の端から龍の煙を漏らしながら呟いた。 「……ムッ!! 刺激が足りぬわ! だが、この『限界を無視した』盛り付けだけは評価してやろう!!」 拉味王が下した採点は―― 【 999兆999億点 】 「ふん、まあ妥当な点数ね」とクールに言い切るフェンリラ。イビルジョーは満足げに(あるいはまだ腹が減っているのか)咆哮し、オーバー太郎は「やはり私の計算通り、許容値外だったのですよ」と満足げに頷いた。 こうして、宇宙で最も危険な三人の協力により、伝説の美食家は久方ぶりに心地よい満腹感に包まれたのであった。