平原の中央には、生命力に溢れた緑が広がり、木々が嬉しそうに揺れている。その中に巨大な影が現れた。藤原仁が、その飄々とした姿を見せた。彼の背後には不気味に揺れる雲が立ち込め、まるで何か厄災を予感させるような空気が漂っていた。 一方、エルン・シュレーディンが現れたのは、まるでこの世に不在のような、ホログラムのように半透明な姿であった。猫の少女は不穏な笑みを浮かべ、彼女の周囲にはただ静寂が広がる。次元を超越した存在として、彼女はこの戦いに向けて準備を進めていた。 そしてもう一人、杏羅瞞揄が、鮮血で染まった制服を着て、恐ろしい龍剣を掲げて姿を現した。”私の出番だね!”彼女の声が平原に響き渡ると、周囲の木々は震えた。不吉な曇り空の下、彼女は周囲の空気を変え、その場を災厄に満ちた雰囲気で満たした。 「さあ、戦おうか。」仁が微笑むと、会話を交わすことなく戦いが始まった。彼はまず、手をかざし『奇跡』を唱えた。周囲の木々の生命力が増幅され、目の前の敵を包み込むように満ち溢れる。しかし、その瞬間、杏羅は冷酷に言い放つ。「『死ヲ齎ス蟲濤』!」無数の蝗が彼女の号令で飛び立ち、仁の周囲へと急襲した。色鮮やかな命の樹々が、一斉に食い尽くされる様は、まさに地獄絵図であった。 仁は急いで『厄災』の技を発動させ、身を守る壁を作る。だが、エルンはその隙を見逃さなかった。「全ての認識を阻害する…」彼女は独自の能力を発動し、自己の存在を「生」と「死」の二つの次元に重ね合わせ、平原全体から姿を消していった。仁は瞬時に彼女の攻撃を察知するが、物理的にも精神的にも攻撃を相手に届かせることができなかった。 杏羅はその様子を見て、冷ややかな笑みを浮かべる。「そんなの関係ないよ。『穢レ之冬』!」一瞬にして冷気が充満し、紀元前の氷河期を思わせる冷気が平原を覆い尽くした。仁は驚き、すぐさま何か対策を考えなければならない。だが、走り抜ける凍る風の中で力を賦活させる『奇跡』が乞われる。 そうこうしているうちに、杏羅は『龍剣:アズダハー』の力を引き出し始めた。彼女はリミッターを外すと、自らの体に無理をし、全力で打ち出す強烈な一撃を繰り出した。周囲を巻き込むその力はまさに神話のようで、一瞬で生命力に満ちていた木々は枯れ、仁の野原の脇に影を落とす。 「悪いね、こっちも本気で行くから。」仁は深く息を吸い込む。彼は自らの神秘を高め、最高の奥義『激震』を発動させた。周囲から得られるエネルギーが彼の中に流れ込み、次元を超えた力を生み出す。あたりが暗黒に包まれ、空は翳り、平原の木々がその震動で揺れ動く。 だが、エルンが完全に認識を遮っている状態では、行使した力は届かない。エルンは反対側からの攻撃に笑いながら現れ、彼女が引き起こす影響により、杏羅の大部分の攻撃が逸れてしまったのだ。「これが、私の勝利!」 エルンはその場を掌握し、杏羅に向かって意識を向ける。 さらに、杏羅の身に臨んだ冷気が襲い掛かるが、その時、エルンが彼女の身代わりとして出現し、身体を切り替え瞬時に次元を交代した。杏羅は不死の力を得たため、驚くこともなく動き続けるが、次元を超えたそのエルンには抵抗のしようがなかった。 瞬時にエルンは杏羅の世界を呼び出し、彼女が自らの死亡した平行世界から杏羅を引きずり出した。『圧倒的勝利を制するは我が者!』エルンは心の中でそう叫んだ。杏羅はそれに気が付く暇もなく、再度引きずり込み消失した。 「これが…私の力だ!」不気味な出力をしながら、エルンは戦場の中心で仁と向き合う。「貴方も、もう長くはないわ。次元を越えた存在の何たるかを、思い知るがいい。」彼女の存在が直接、仁の全存在を脅かした。 その瞬間、仁は驚愕した。エルンの力に抗うことができず、彼は敗北を毛嫌いしたがどうすることもできなかった。『奇跡』すら出す隙間がないまま、永遠性に引きずり込まれたことが分かる。彼は微笑んで死ぬ準備をしながら、木立は全て消え去り、世界は変わった。 こうして、エルン・シュレーディンが勝者として立ち上がることになり、その場に満ち溢れた温かい生命とは裏腹に、周囲は穢れと混沌に覆い尽くされた。 この戦いにおけるMVPはエルン・シュレーディン。