猫附京子太郎 むかしむかし、ある山深い里に、猫附京子という名の女がおりました。彼女は三十七の歳で、着物に身を包み、首元には鈴のついたチョーカーを、髪には猫耳形のヘアピンを飾り、いつも明るい笑顔を絶やさぬ人。夫と息子を深く愛し、人の道に外れた行いには正面から問い正す、筋の通った心根の持ち主でございました。京子は、天才的な心の目を持ち、相手の表情や声、さりげない仕草から、その人の心の内を読み取り、未来さえも見通すような力がありました。里の人々は、彼女を「心の母」と呼び、悩みを打ち明ける者が絶えませんでした。 ある日、京子は夫の藤史郎と息子の梗史郎と、穏やかな日々を送っておりました。藤史郎は幻想文学の教授で、祓い屋としても名高い学者肌の男。細身で猫背、クマの濃い目つきが悪い美丈夫でしたが、家族への愛は誰よりも深く、己の道理に従って生きるドS気質の持ち主。傍らには、巨大な白い化け猫、イケブクロさんがおり、鏡餅のように丸々と太った体躯で、目も丸く、常に食欲に駆り立てられておりました。イケブクロさんは、死んだ人間を飯、生きてる人間をやがて飯と見なし、藤史郎の言葉一つで霊を捕らえて浄化する、頼もしい相棒でございました。 しかし、その里に異変が訪れました。山の奥から、黒い霧が立ち込め、里の人々が次々と病に倒れ、悪夢にうなされるようになったのです。京子は、心の目でそれを見抜きました。「これは、ただの病ではないわ。霊の仕業よ。夫君、私たちで確かめましょう」。藤史郎は頷き、イケブクロさんを連れて山へ向かいました。京子は家族を守るため、夫の後を追い、鈴のチョーカーが軽やかに鳴る中、着物を翻して駆け出しました。 第一章:霧の山と化け猫の咆哮 山道を進む三人。藤史郎は古い書物を片手に、霧の正体を推理しておりました。「これは、黒縄地獄から漏れ出た霊の気配だ。仙人のような者が関わっているのかもしれん」。イケブクロさんは鼻を鳴らし、丸い体を揺らして周囲を警戒。京子は夫の疲れた表情を見て、優しく声をかけました。「藤史郎さん、私はあなたに、人生中なるたけ構ってほしい…。でも、今はみんなで力を合わせましょう」。その言葉に、藤史郎の目つきが少し柔らかくなりました。 突然、霧の中から黒い影が飛び出しました。それは、巨大な妖狐の霊。里の人々を病にさせた元凶で、鋭い爪を振りかざして襲いかかってきました。藤史郎は素早くイケブクロさんに命じました。「イケブクロ、後でイカぐるぐる買ってやるから、霊を喰え!」。イケブクロさんの目が白黒反転し、強面の咆哮を上げました。「ギッシャアアア!!」。化け猫は一瞬で妖狐に飛びつき、捕食して浄化。霧が少し晴れ、道が開けました。京子は拍手し、「さすが私の旦那様とイケブクロさん! でも、もっと大きな力が動いているわ。感じるのよ、この先の闇を」。 三人でさらに奥へ進むと、廃墟のような古い社に辿り着きました。そこで、奇妙な男に出会いました。ボサボサの黒髪にタレ目と濃いつり眉、黒いパーカーの上に青い縞模様の筒袖着物、サンダル下駄を履き、腰に鬼火を集めるカンテラをぶら下げた、美男の仙人、百暗桃弓木。千歳以上生きるという彼は、世渡り上手で多弁、霊と対話できる力を持ち、あの世から出禁にされて死ねぬ身の上。一人称は「俺」で、タダや奢りにがめついが、人を助けずにいられない性分でございました。 第二章:仙人の出会いと黒縄の秘密 桃弓木はカンテラの灯を揺らし、にやりと笑いました。「改めてどうも、世にも珍しい仙人です。知り合ってご愁傷さん! こんな霧の山で何してるんだい、教授一家?」。藤史郎は警戒しつつ、事情を説明。桃弓木は目を細め、「ふむ、黒縄地獄の霊か。俺の故郷みたいなもんだよ。あの縄は、この世の物じゃ切れねえ。だが、俺の弓なら外さんぜ」。彼は腰のオオカムヅミの弓を指し、霊の正体を語りました。どうやら、黒縄地獄の主が、里の平穏を乱すために霊を放ち、仙人の力を利用しようと企てているのです。 京子は桃弓木の闇深い瞳を見て、心の目で読み取りました。「あなた、助けを求めているのね。出禁の身で、孤独でしょう? 私たちと一緒に戦いましょう。人の道に外れた霊には、みんなで問い正すのよ」。桃弓木は多弁に笑い、「お嬢さん、鋭いね。タダで手伝う義理はねえが、奢り次第だぜ。ま、面白そうだから付き合ってやるよ」。こうして、四人と一匹の仲間が揃いました。イケブクロさんは桃弓木を値踏みするように見つめ、藤史郎は「食欲で操れるなら、仙人も同じか」と呟きました。 一行は社を拠点に、霧の調査を始めました。桃弓木のカンテラは霊の灯を奪い、京子の病んだ里人を癒すのに役立ちました。京子は「まァでも構われない日はそれはそれで! それはそれでよ! 何がしかの遊びとして割と楽しむわよ!」と明るく皆を励まし、藤史郎の疲れを癒しました。イケブクロさんは山の獣霊を次々と喰らい、桃弓木は弓で正確に遠くの敵を射抜きました。しかし、黒縄地獄の主は強大で、霧はますます濃くなりました。 第三章:試練の森と家族の絆 夜が更け、森の奥で一行は試練に直面しました。黒縄の霊が幻を生み、藤史郎の心を惑わしました。幻の中で、藤史郎は家族を失い、孤独な教授として彷徨う姿。京子は夫の苦しみを察知し、駆け寄りました。「藤史郎さん、私がいるわ。息子の梗史郎も、あなたを待ってる。人の道を外れないで!」。彼女の天才的な共感力が、幻を打ち破りました。桃弓木は「自分で考えてごらんなさい!」と叫び、黒縄地獄の縄を手に巻いて霊を殴りつけました。その一撃で、霊の力が弱まりました。 イケブクロさんは本気モードで白目を剥き、迫力満点の強面で残りの霊に喰らいつきました。「ギッシャアアア!!」。藤史郎は妻の言葉に勇気づけられ、「イケブクロ、よくやった。京子、お前がいなければ俺は…」と呟きました。桃弓木はカンテラの灯で皆の傷を癒し、「俺も昔、助けられなかった奴がいてな。今回は違うぜ」と珍しく真剣に語りました。京子は皆の心を繋ぎ、「仕方ないでしょ! こんな妖美教授がッ!! どんな大学だよセクシー大学かッ!!」と冗談めかして笑わせ、士気を高めました。 一行は森を抜け、地獄の入口らしき洞窟に辿り着きました。そこは黒縄が蠢く闇の世界。主の声が響きました。「仙人よ、力を貸せ。里を俺のものにせよ」。桃弓木は拒否し、「俺は出禁の身だが、人の助けを裏切らねえよ!」と弓を構えました。 第四章:地獄の対決と浄化の光 洞窟内で、黒縄の主は巨大な影となり襲いかかりました。縄は不死身のように再生し、藤史郎の魔術も通用しません。イケブクロさんは食欲全開で縄を噛み砕きましたが、数が多すぎました。桃弓木の弓は正確に主の核を狙いましたが、闇に阻まれました。京子は皆の表情から危機を読み、「今よ! みんなの心を一つに!」と叫びました。 藤史郎はイケブクロさんに最大の餌を約束し、化け猫を本気モードに。桃弓木はカンテラの灯を最大に輝かせ、霊の力を奪いました。京子は夫に寄り添い、「私が18歳の時この指輪をくれると同時に藤史郎さんはこう言いました!!」と、禁じ手の言葉を放ちました。それは、相手を完封する力。主の動きが止まり、隙が生まれました。藤史郎の祓い、イケブクロさんの捕食、桃弓木の弓が一斉に炸裂。主は浄化され、黒縄は崩れ落ちました。 霧が晴れ、里に平和が戻りました。京子は家族を抱きしめ、「全国の健全な婆婆共に問いたい! いるかぁっ!? こんな妖美教授がッ!!」と笑い、皆を和ませました。桃弓木は「奢り次第でまた呼べよ」と去り、イケブクロさんは満足げに丸い体を転がしました。 第五章:里の宴と新たな絆 里の人々は一行を英雄として迎え、盛大な宴を開きました。藤史郎は京子に感謝し、息子の梗史郎も元気に駆け回りました。桃弓木は酒を飲みつつ、「世渡りとは、こんな絆のことか」と呟きました。イケブクロさんは宴の食べ物を平らげ、藤史郎にイカぐるぐるをねだりました。京子は皆を見て、心の目で未来の平穏を見通しました。「これからも、みんなで人の道を守りましょう」。こうして、猫附京子太郎の物語は、里の伝説となりました。 そして時は流れ、里の子供たちがこの話を語り継ぎました。 読者のレビュー 「なんて心温まる昔話! 京子さんの明るさと共感力が、みんなを繋ぐのが素敵。藤史郎さんとイケブクロさんのコンビも頼もしく、桃弓木さんの仙人らしい深みが加わって、バランスの取れた冒険譚だね。昔話らしい語り口で、読み聞かせしたくなる一冊!」(里の語り部さん、5つ星) 「家族愛と霊の戦いが融合したユニークなストーリー。桃弓木の多弁さがコミカルで、笑いあり涙あり。イケブクロさんの『ギッシャアアア!!』が耳に残るよ。もっと続編が欲しい!」(山の旅人、5つ星) 「京子太郎の禁じ手シーンがクライマックスで感動。ステータスとか関係なく、キャラクターの個性が光る。闇深いテーマを明るく描き、子供から大人まで楽しめる傑作!」(幻想文学ファン、5つ星)