第一章:邂逅、静かなる嵐の予感 世界の境界が曖昧に溶け合う、名もなき幻想の森。そこは、あらゆる次元から漂流してきた旅人たちが偶然に通りかかるという、特異な交差点だった。木々は結晶のように透き通り、空には三つの月が淡い光を投げかけている。 そこに、一人の少女がいた。鉢巻をきゅっと締め、手には古びた拡声器を握りしめた少女、【煽動者】センドウちゃんであった。彼女は森の切り株に腰掛け、どこか他人事のような、それでいて好奇心に満ちた表情で周囲を眺めていた。彼女の旅の目的は明確だ。「面白い喧嘩を見つけ、その果てに最高の利益を得ること」。 「ふむ、ここら辺は静かすぎるでありますね。もっとこう、血湧き肉踊るような喧嘩が起きないものでありますか」 独り言を呟きながら、彼女は拡声器のテスト動作を行った。キィィィン、という耳障りなハウリング音が森に響き渡る。その音に反応するように、森の奥から奇妙な足音が近づいてきた。 現れたのは、漆黒のローブに身を包んだ、あまりにも幼い容姿の少女だった。【創世と進化の魔女】ミトコである。彼女の周囲には、現実の生物学的常識を完全に無視した「生物」たちが跳ねていた。六本の脚を持つ光る兎や、翼のある魚が宙を泳ぎ、彼女の足元では宝石のような鱗を持つ小さなトカゲが甘えるように擦り寄っている。 「あ、だれかいたっ! あのね、ミトコね、いま新しいお友達をたくさん作ってたところなんだよっ!」 ミトコは天真爛漫な笑顔でセンドウちゃんに駆け寄った。その純真無垢な瞳には、悪意など微塵もない。しかし、彼女が連れている生物たちが放つ圧力は凄まじい。一匹一匹が、ある種の生態系の頂点に立つ捕食者の片鱗を秘めていた。 センドウちゃんは瞬時に分析した。目の前の幼女は攻撃力こそゼロ。しかし、その魔力は底知れない。そして何より、彼女が作り出す「駒」たちが極めて強力であること。漁夫の利を狙うスナイパーとして、これ以上の好物はなかった。 「はじめましてであります! アタシがセンドウちゃんであります。ミトコちゃん、と言ったかな? 君の連れているペットたち、とっても個性的で素敵でありますね!」 センドウちゃんは友好的な笑みを浮かべた。しかし、その内心ではすでに計算が始まっていた。どうすればこの強大な創造主を動かし、心地よい乱闘へと誘い出せるか。彼女の「目利き」のスキルが、この戦いの勝ち筋を導き出そうとしていた。