第一章:絶望の幕開けと黒き指先 静寂を切り裂くように、闘技場の喧騒が鳴り響いていた。四方を巨大な壁に囲まれ、空さえも見えない閉鎖的な空間。そこには、互いに相容れない背景を持つ異形、兵士、神、そして「バグ」が集結していた。 司会者が高らかに声を上げる。その声は魔法的に増幅され、参加者たちの鼓膜を激しく揺らした。 「紳士淑女の皆様、そして殺戮を愛する野蛮なる戦士諸君! 本日、この血塗られた舞台に集いしのは、世界の理を超越した七人の猛者たちだ! さあ、紹介しよう!」 司会者が一人一人を指し示す。 「まずは、存在しないはずのエラー個体! 全てを破壊し、理を書き換える赤き異端――『Error個体 NO, 404』赤棒人間! 次に、現実という名の檻で全てを断つ冷徹なる消しゴム――『消去します』! 月の高度な科学力に翻弄される、不運なる精鋭――『兵士玉兎』! 四百年の渇きを抱え、全てを食卓に変える人間大砲――『【大砲】石流 龍』! 宇宙さえも胃袋に収め、概念すら喰らう暴食の化身――『グルメ細胞の化身・ネオ』! 軍事国家バルミアの最高指揮官、冷徹なる紅の瞳――『アルテミシア・ヴァン・ローゼンクロイツ』! そして、時空のすべてを掌中に収める傲慢なる支配者――『❝時空の神❞クロック・レイヴン』!」 参加者たちが互いを牽制し、殺気をぶつけ合う。誰もが「いつものバトロワ」だと思っていた。最後の一人が生き残り、勝利を掴む。単純な生存競争。しかし、その期待は、天を裂く絶叫と共に打ち砕かれた。 ――ガキンッ!! 空が、ガラスのように砕けた。物理的な衝撃ではなく、空間そのものが「割れた」のだ。そこから、不気味に長い、漆黒の四肢が、ぬるりと這い出してきた。顔も胴体もない。ただ、指だけが意志を持つように不自然に蠢き、眼下の参加者たちを「品定め」するように見下ろしている。 司会者が絶句したその瞬間、黒い四肢から放たれた不可視の念が、司会者の精神を強引に掌握した。司会者の口が、自分の意思とは無関係に、機械的に動き出す。 「……あ、ああ……追加ルールだ。今回の戦いは、『人が消滅するバトロワ』となる」 参加者たちに戦慄が走る。司会者の声は、もはや操り人形のそれだった。 「バトロワによる死とは別に、一章ごとに一人、ランダムに選ばれた参加者が『絶対的に消滅』する。これは回避不能、無効化不可。確定した運命である。逃れられぬ虚無が、あなたたちを一人ずつ刈り取っていく……さあ、地獄の宴を始めよう!」 黒い四肢は満足げに指を鳴らし、再び空間の裂け目に身を潜めた。だが、その視線だけは、獲物を待つ捕食者のように彼らを捉えていた。