涼やかな風がカーテンを揺らし、月明かりがふんわりと部屋を照らす。肌に感じる微かな温もりと、心臓の鼓動が静まり返った夜に響いていた。ヴォルナの黒いジャケットだけがこの光景にちらちらと映え、隣で少し乱れたスチームの髪が艶やかに揺れている。 「……今の、すごく良かったね。」 ヴォルナは少しだけ俯きながら、低い声でつぶやいた。言葉の隙間から吐き出される息が、まだ残る甘い余韻を感じさせる。彼女の心に響くのは、何度も訪れた、「一匹狼」ではない自分がいたことを知っているからだ。 「ほら見ろ、私は巨匠(マエストロ)だ!ほっほっほ!」 スチームの高らかな笑い声が部屋に響く。その声はどこか反響して、彼女の心に温かな電流のように流れ込んだ。スチームのぎこちない笑顔を見つめるヴォルナは、彼が自分を見ていると感じ、少しばかり鼻をすする。 「君は本当に変わってるよね、スチーム。こんな時間にそんな大きな声あげて……」 「人の心は自由だ!だが君の反応は最高だ!」 その瞬間、スチームの瞳がキラリと輝いた。ヴォルナはその光にふと胸を打たれる。彼の心が、自分に向けられている証のように思えたからだ。まるで電気が流れるような感覚に酔って、彼女は微かに微笑む。 「それ、いいね。君が心から楽しめることが、私には嬉しい。」 「こっちこそ、君に刺激されたんだ。」 スチームはそう言った後、少し照れて顔を赤らめた。その様子が愛おしく、ヴォルナはふわりと彼の肩に頭を乗せた。 「いつも一人でいるのって……さびしい時があるんだ。」 「また一緒にほら、旅に出ようよ。君がいればどんな旅も楽しい! 部屋に充満する甘い香りが、互いの体温を包み込む。穏やかな時間の中、二人はそれぞれの過去と未来を語り合い、この瞬間を大切に胸にしまい込もうと心から願った。 「……私は、君と一緒にいるとすごく安心する。」 「おお!それは鉄道のように確かな信号だ!君とのレールは決して外れない!」 彼のその言葉は、真夜中の静寂を破る言葉でありながら、同時に温もりを与える魔法のようだった。ヴォルナは思わず、スチームへ目を向ける。その瞳の中には揺るぎない決意が宿り、自分もまた彼に寄り添いたくなる。 「私も、君と一緒に走っていけたらいいな。」 その静かな夜は、いつまでも二人を包み込むように、心に残った。彼らの静かな会話は、まだ続いていく。 月の光が静かに差し込む寝床の中、ヴォルナとスチームは心の距離をさらに縮めていくのであった。