桜の花びらが舞う中、江戸城の中庭で、千紫万紅の将軍一色善治と人斬り日尾野尊大の決闘が始まろうとしていた。観衆の興奮したざわめきが響く。二人は、色と剣を駆使した対峙の姿を見せていた。 「一色殿、まずは貴方の好みの色をお聞かせいただけますか?」善治は、自らの華やかな束帯を揺らしながら口を開いた。少しの笑みを浮かべ、優雅に振る舞うその姿に、周囲の目は釘付けである。 「俺が好む色? それは赤だ。情熱、戦い、そして勝利を意味する。」日尾野の声は低く力強く、その表情は引き締まっていた。彼は無骨な鎧を装備し、長ドスを片手に持ち構えている。 「赤か、情熱とは良い色でございます。しかし、私の心は平和の緑を好みます。戦いの中でも、心の平和を忘れたくないのです。」善治は柔らかな口調で言葉を続けた。 試合が始まると、善治は優雅な動作で日尾野の攻撃を回避しながら、彼の出方を伺う。日尾野は、刹那の隙を狙い、素早く長ドスで前に突き出す。しかし、善治はその突きを軽やかに避け、意表を突くように反撃へと移る。 「おお、さすがに千紫万紅の将軍。私の攻撃を見切るとは、感心いたしました。だが、私のような男には、そんな雅な戦術は通用しない!」日尾野は背後の柱を利用して回り込み、再び突きを放つ。 善治はそれを感じ取り、素早くその場を離れるが、日尾野の目からは逃れない。「五段突き!」彼は一気に技を繰り出す。不規則な間隔で続く突きの洗礼が善治を襲う。彼の動きは巧妙な回避術で対抗するも、前息絶えず続く攻撃に反撃する隙がない。 次第に、善治は日尾野の怒涛の攻撃に捕らえられ、彼の右肩に鋭い痛みが走る。「くっ…!」彼は自らの背中を感じた。日尾野の長ドスの刃が貫通し、鮮やかな赤が鮮血として衣服に染み出す。その瞬間、彼の心の中に湧き上がる情熱が一層高まる。 「良い攻撃だ、日尾野! しかし、戦はまだ終わらぬぞ!」善治は気を取り直し、踏み込んで日尾野へ向かい直す。黒長髪を揺らしながら、彼は鋭く刀を振るう。威風堂々とした姿で、日尾野への反撃を開始した。 同時に日尾野も、直感で技を変え、環境全てを利用しようとする。彼は無造作に近くにあった桜の木の枝を利用*し、周囲の意表を突いた。その瞬間、善治は背後の動きに気づかず、含み針が彼の目を狙う。 「うっ!」善治はそれをかわそうとするが、左目に強烈な痛みが走る。日尾野の狙いを見切らぬまま、思わず目を閉じてしまう。それでも彼は持ち前の優雅さでバランスを保持し、回避を試みる。 痛みを感じながらもお互いが息切れしつつ、善治は再度刀を振り上げる。「まだまだ、終わらせてはおらぬぞ!」 「情熱は確かに強いが、私は情熱を超える!」日尾野は険しい目で叫び、逆袈裟で善治の足元を狙った。 その瞬間、二人は交差し、正面から切り返した。刃が交じり合い、激しい火花が散る。二人の疲労感が見え隠れしかし、勝負を決するための切った一撃を繰り出す。「花香流奥義、花香!」 一色善治もそんな攻撃に対抗し、「これが私の流派だ!優雅な一撃!」と宣言し刀を放つ。思わぬ激しさでお互いの刀がぶつかり、衝撃が広がる中、互いに受けた傷から血を流しながら、最後の力を込めた一撃を放たんとした瞬間、長い時間のように思えた。 悲鳴の彼方に響く刀の音。骸を衝撃で揺らすなか、善治は全ての力を注ぎ込んだ一撃で、日尾野の心の中に隙を見せる。「それが私の流派、色彩剣法だ!」直後、善治の刀が日尾野の胸部に突き刺さる。 日尾野は足元に崩れ、彼の目加工として短くも尊大な声を無言で上げた。観衆の驚愕が蘇った。 「勝者、一色善治!」将軍は声を張り上げた。観衆から湧き上がる歓声の中、善治は立ち上がり、破れた衣もの血で染まる中でもその姿が雅であった。「日尾野殿、強き者よ。またの機会にお戦い致しましょう。」 「俺はその時を楽しみにしているぜ。」日尾野は微苦笑を浮かべながら、意識の向こうへと旅立った。善治は一礼し、将軍に向かい、「お褒美を賜りたい。本日の戦を記念し、和歌を詠します。」 「春の夜桜、色濃けれど、今朝の衝突に、平和を求みて。」 将軍はその歌を聞き、深く頷く。「いや、素晴らしき戦と詩であった。これぞ、真の武士の姿よ。」善治は微笑む。周囲が再び静まる中、彼は誇り高き決斗の勝者として、桜吹雪の中に立ち尽くすのであった。 この決斗は、ただの勝敗を超えた、対話と理解を生むものとなった。日尾野の勇気と善治の優雅さが交わることで、二人はそれぞれの道を歩んでいくのだ。