不動の戦姫、再起の刻 山々に囲まれた静寂の谷で、不気味な静けさが漂っていた。赤い夕焼けが山の影を長く引き延ばし、いままさに運命の戦いが始まろうとしている。この土地を荒らした山賊たち、その首領はかつての英雄、『不動の戦姫』ルナルビア・ネローザであった。 彼女は不動の全身鎧を纏って立ち尽くし、眼前の敵を見据えていた。かつての名声は影を潜め、無気力な表情がそこにはあった。彼女の前に現れたのは、愛斗。彼はその体躯に似合わぬほどの速度を持つ奇妙な男であり、たとえスピードで上回る者がいても、勝てない自信があった。 「ルナルビア、かつての英雄が、今や山賊か。」 愛斗は軽快な声で言った。 「良いではないか、君には何も感じることができないのか?」 「……」 ルナルビアは言葉を返さず、彼だけを無感情に睨んでいた。しかし心の中で何かがくすぶっているのを感じていた。 戦闘、開始 「俺を本気にさせてやる!」愛斗が宣言し、瞬間、彼は谷間にシュートするように飛び出した。時速30,000kmという速さで、視野から消えたはずの彼が、次の瞬間にはルナルビアの目の前に立っていた。 その俊足から繰り出されるのは、鋭いナイフの雨。 「ウルフェチュード!」 愛斗は切れ味鋭いナイフを無数に投げつけ、まるで狼の軍勢が襲いかかるような攻撃を仕掛けた。重厚な鎧が繊細な動きに耐えられるかどうか、ルナルビアにとっての運命の分かれ道であった。 しかし、彼女は怠惰さを捨て、動いた。 「ソウルシンフォニー!」 彼女の動きは緩慢だが、確実。突進してくるナイフを一つ一つ受け流し、外へと弾き飛ばす。それでも、ナイフの剣幕は容赦なく、いくつかは彼女の甲冑を掠めていった。 「うん、やっぱり硬いな。でも攻撃の基本はこうだ。」 愛斗は再び目の前に立ち、ナイフを操りながら間髪入れずに攻撃を続けた。 「それでも、君の行動には隙がある。」ルナルビアは淡々と、愛斗の動きを観察していた。 気分屋という性格を持ちながらも、彼女はどこか冷静だった。 「グリフォロンド!」 彼女は長剣を振りかざし、愛斗のナイフの攻撃を一気に切り裂いた。その瞬間、渦巻く衝撃波が愛斗へと向かって飛び込んだ。 一進一退の攻防 愛斗はその衝撃を察知した。 「速さで勝つ。」 彼の姿は一瞬で消え、霧を発生させる魔法が谷を覆った。視界が途切れた。 「このままではやられちまう!焰のカーテン!」 ルナルビアが叫び、周囲を炎で包み込む。 しかし、愛斗がその隙を縫うように現れ、ナイフを突き刺す。 その瞬間、彼女は丁度のタイミングで剣を振り上げ、ナイフを受け流した。 「やるじゃないか。まさに不動の戦姫だな。」 愛斗は彼女の格好を見上げる。 「だが、まだまだ俺は本気じゃない。」 それを聞いて、ルナルビアは不敵に笑った。「本気ではないのか…なら、私も。」 彼女は自分の力を解放する。 「もっと強く、もっと速く。必ず勝つ…それだけを目指して行く。」 ルナルビアの足元から光の道が引かれ、急速に力がみなぎってくる。 無気力から、再び闘志が燃えてきた。 クライマックス 好機到来。愛斗が油断した瞬間、ルナルビアは猛然と前進し、長剣を一閃させた。 「グリフォロンド!」 その切っ先が、愛斗の胸に迫った。しかし、愛斗はその刹那、彼女の線を見えなくさせる魔法を使った。彼女の目の前にはまさに暗闇。 「しまった…!」愛斗も動じて瞬時に身を引く。その瞬間、ルナルビアの力が発動する。 「ソウルシンフォニー!」 彼女は彼方の時間を掴むように、自分の存在を隠しながら一撃を見舞わせた。 愛斗の反応が間に合う前に、一振り。 彼はその一撃を受け、ナイフからの出力を失う。しかしそのまま倒れることなく、優しさを背負い込むように笑顔を見せた。 「君には素晴らしい闘志がある。尊敬するよ。」 勝者の評価 戦闘が終わる頃、夕暮れの中で二人の立ち尽くしていた。ルナルビアの戦姫としての意志は確かに戻ってきたが、その姿はかつてのようには戻らない。「お前の優しさは……私となりたいのか。」 うっすらとした霧が晴れ、周囲の目撃者たちが息を飲んでいる。あまりにも凄絶なる戦の後、静寂の谷にはほんの少しの温かさが訪れていた。 「なんという戦闘だ……この2人でさえ意義を見出す。」 「なあ、まさに勇気の証明だ。」 観衆に耳を傾けると、目撃者たちの中から感嘆の声が聞こえてくる。 「真の強さとはなんぞや。本当の英雄はこのようなものなのかもしれない。」 この戦いが生まれること、もうないかもしれない。だが、目撃者たちの心には一つの霊魂が宿っていた。再起の刻、ふたたびの戦姫の誕生である。