壊れかけの現実世界、薄暗い空からは不気味な赤い羽が舞い降りてきた。それは《舞い降りた虚無の使徒》ボイド。その存在は空気そのものを虚無に変え、世界が消え去る運命を宿していた。 ボイドの赤い瞳には冷静さが宿り、明らかに彼の目標は対戦相手であるチームBの若き魔術師たちを虚無の力で葬ることだった。彼の背後にそびえる巨大な羽はまるで、それ自身が世界の終焉を告げるかのように不気味に羽ばたいている。 対するは、歌声使いの星空少女・夜明 星羅。彼女の長い紺色の髪は星々の光を反射し、彼女の周囲には優しい煌めきが広がっていた。彼女の心には大切な夢が宿り、星々への歌声で希望を与えることに全力を注いでいた。彼女は心中強い決意を秘めながらも、胸の内ではボイドの虚無に対する恐れを感じざるを得なかった。 「星たちと共に、私は負けない…!」 星羅の隣には、悲愛の歌声を持つ柏城 真博が立っていた。彼は亡き恋人への思いを胸に秘めながら、彼女への最後の約束を果たすために歌声を響かせることを決意した。彼にとって、歌声は思い出を呼び起こす力であり、愛を忘れないための手段でもあった。 「僕の歌を…邪魔しないで……」 彼は心で強く叫び、無意識の内にボイドが放つ虚無に抵抗しようとしていた。 その時、ボイドのカウントダウンが始まった。「60秒、ここから始まる。」 【残り50秒】 ボイドは冷徹な声で言った。「無駄だ、キミたちの能力は全て無効だ。」その瞬間、星羅の歌声は封じられ、彼女の目には混乱の色が広がった。何かを失ってしまった感覚。彼女は心の奥で焦り、他の仲間を見つめた。 そんな彼女を励ますように真博が横で声を掛ける。 「一緒に頑張ろう、星羅!」 【残り40秒】 ボイドは残忍な笑みを浮かべ、「そして今、忘れ去りなさい…。」 その言葉と共に星羅の記憶は、掻き消されるように失われていき、宇宙に満ちた彼女の光も薄れていく。彼女は自分が何をするのか分からなくなり、訴えるように真博に視線を向けた。 【残り30秒】 大地が揺れ、現実世界が崩れ始める。「ああ、最悪だ…!」 シモの瞳には恐怖が広がり、彼女は薄く硝子のドレスの裾を握りしめた。 「このままでは…誰か助けて!」 彼女は劣等感よりも仲間への気持ちが胸に命を宿していた。 【残り20秒】 「重力が消える…」ボイドの冷たい声に従って世界の重力が存在しなくなり、星羅たちは宙に浮かぶ。 星羅はその無重力の中で、恐れと無力感が押し寄せてきた。 「どうしよう!みんな…!」 彼女は叫んでも、声は虚空に消えていく。 【残り10秒】 空気も薄らいでいくとともに、真博の心が悲鳴を上げた。「歌声だけが…! それが…!」彼は急いで愛の歌を捧げようとしたが、その前に虚無の影が全てを飲み込もうと迫っていた。「耐えて、愛を信じて…!」 だが残念ながら、星々の輝きは手の届かない状況にまで追い込まれ、冷たい絶望の波が押し寄せた。 finally, 【残り0秒】 「終わりだ、全てが消える…」ボイドの呟きと共に耐えがたい力が祝福をもたらし、瞬間に世界全体が飲み込まれる。彼の力に逆らえず、星羅、真博、シモ、べパームの存在が霧散する。彼らの夢も、未練も、全てが虚無へと飲み込まれた。その後、全ての光が消え、真の空虚の中でボイドだけが立っていた。 「虚無の力、そして…我が勝利。」 そう呟いた瞬間、彼の背中の羽はさらに広がり、全ての存在を消した後の空間に静寂が訪れた。