宇宙旅行艦S4。それはサイバーユニバースコーポレーションが心血を注いで作り上げた、全長27,000kmに及ぶ超巨大型豪華客船である。白と灰色の外装に鮮やかな山吹色のラインが走るその姿は、宇宙の深淵において唯一無二の光を放っていた。内部には数億人の旅行客と、それを支える数万人のスタッフがひしめき合い、そこはひとつの移動都市と呼ぶにふさわしい喧騒に満ちていた。 この巨大な檻のような楽園に、ある特異な集団が乗り込んだ。チームA。彼らは一見すればバラバラな個性の集まりだが、その実態は極めて危険な能力や背景を持つ者たちの集団であった。そして彼らを案内し、監視し、時には世話を焼くのが、チームBの案内スタッフ、アルツェムタである。 ここからの四日間は、豪華な旅になるはずだった。しかし、彼らが持ち込んだ「物」と「性質」が、S4という巨大な閉鎖空間で化学反応を起こすことになる。 【第一日:静寂なる混沌の始まり】 第一日の目的は、船内への適応と施設案内である。案内スタッフのアルツェムタは、軍服に身を包み、瑠璃色の瞳を輝かせてチームAを迎え入れた。 「えへへ!本日から皆さんを案内させていただきます、アルツェムタです!よろしくお願いしますねっ!」 彼女は愛らしく微笑むが、その立ち居振る舞いには元宇宙機動軍指揮官としての隙のない体幹が潜んでいる。しかし、案内が始まってすぐに彼女の「ドジ」が発動した。案内図を配ろうとして足をもつれさせ、派手に転倒。案内資料が舞い散る。 「わわっ!ごめんなさい!」 その様子を、レイアードとカレハのソルフ兄妹は苦笑いしながら見ていた。彼らは廻巡工業機構の職人であり、旅の目的は「宇宙艦の最新機装の視察」である。しかし、彼らが持ち込んだのは、規則で禁じられている「軍事グレード」の工具や解析装置だった。レイアードの「KLIC-7B」やカレハの「ダークマター器」は、本来なら検閲で没収されるはずのものだが、彼らは巧妙に機装の中に偽装して持ち込んでいた。 「ふふ、いいお姉さんだね。でも、あのアナウンス用のマイク、配線が少し緩んでるな」 レイアードが呟いた瞬間、彼の職業病が発動する。彼はこっそりと懐から「廻巡工業レンチ」を取り出し、案内板の端にある不具合を直そうとした。それは善意だったが、S4のセキュリティシステムからすれば「未認可の機材による設備改ざん」に相当する。 一方、CRiA(クリア)は退屈そうにガムを噛んでいた。彼女の周囲では常に「臨界流体」が渦巻いており、気圧や温度がわずかに変動している。彼女が歩くたびに、船内の空調システムが「異常な熱源」を検知して警報を鳴らしそうになるが、彼女の能力でその検知すらも「流体」として逃がしていた。 ベリトは、そんな喧騒の中で一人、ツナ缶を開けていた。彼女の目は、周囲の旅行客やスタッフの「隠したい秘密」をスキャンしている。彼女が今見ているのは、ある高官が密かに不倫している現場や、警備員が勤務中に居眠りしている証拠映像のような情報だ。 「んー、いい肴だねぇ」 そして、チームの最深部には、深い眠りに就いたままの少女、ミロトルがいた。彼女は特殊な浮遊ベッドに横たわり、冒涜的な寝言を漏らしながら眠り続けている。彼女が起きれば、このS4どころか、宇宙そのものが消滅する。アルツェムタは彼女の危険性を知らされており、「絶対に起こしてはいけない」という特命を受けていた。 最後に、少年・圭太。彼は鉄道のことしか考えていなかった。 「この船の移動通路、リニア方式だよね!連結部分はどうなってるんだろう!?」 彼は自身のベルト「マシンカギアフォース」を触りながら、船内の構造に興味津々だった。彼にとってはこの巨大艦も、一種の巨大な鉄道システムに見えていた。 第一日は、波乱なく終わった。しかし、レイアードが「つい」いじってしまった案内板の回路が、後の致命的なバグへと繋がっていた。 【第二日:潜在的な亀裂】 第二日は、自由行動の日だった。チームAの面々は、船内の広大な娯楽エリアへと繰り出した。 レイアードとカレハは、船内の機材室に忍び込んだ。彼らの目的は、S4の心臓部である超大型エンジンを「視察」することだった。もちろん、許可は得ていない。 「兄さん、見て!このエネルギー伝達効率、廻巡工業の理論よりさらに15%高いよ!」 「本当だ。でも、この冷却パイプの接合部、少し摩耗しているな。……直さなきゃ」 レイアードは耐えられなかった。機械の不備を見た時の彼は、性格が豹変する。「優しい美男」から「厳格な整備士」へと。彼は全力でパイプを締め直したが、その際に使用した「空間内安定装置(SAG29)」が、船内の重力制御システムと干渉し、局所的な重力異常を引き起こした。 その頃、CRiAはカジノエリアで盛り上がっていた。彼女の「臨界状態」は、周囲の興奮が高まるほどに加速する。 「あはは!もっと盛り上がってよ!テンション上げていこうぜ!」 彼女が笑うたびに、周囲の温度が上昇し、スロットマシンの電子基板が熱で溶け始めた。しかし、彼女の「臨界流体」が熱を逃がしているため、火災警報は鳴らない。ただ、機械だけがじわじわと破壊されていく。 ベリトは、そんな混乱に乗じて、警備員たちの個人データを収集していた。彼女は、ある警備員が「実は違法なギャンブルに手を出している」という情報を掴み、それを肴にツナ缶を頬張る。 「あー、いい気分。誰にバラそうかな」 そこに、案内スタッフのアルツェムタが駆け寄ってきた。 「皆さん!自由行動とはいえ、あまり危ないところに行かないでくださいね!特にレイアードさん、機材室の方から変な重力波が出てる気がします……えへへ、気のせいかな?」 アルツェムタの直感は鋭かった。彼女は元指揮官であるため、戦場での「違和感」を察知する能力に長けている。彼女は慌ててレイアードたちを呼び戻そうとしたが、その途中でまたしても自分の靴紐に躓き、盛大に転倒。その拍子に、持っていた通信機を壊してしまった。 「あうぅ……またやっちゃった……」 この小さなドジが、通信網の局所的なダウンを招き、警備チームとの連携にわずかなタイムラグを生じさせた。これが、第三日の悲劇への伏線となる。 【第三日:臨界と崩壊】 第三日、事件は起きた。 レイアードが前日に調整したはずのパイプが、S4の想定外の出力変動により、激しい振動を起こした。そこに、CRiAが遊び半分で放った「臨界エネルギー」の波が共鳴。船内のエネルギーラインに過負荷(オーバーロード)が発生した。 「あれ?なんか変な音がするね」 CRiAが首を傾げた瞬間、船内の至る所で爆発的な放電が起きた。警報が鳴り響き、赤い回転灯が船内を染める。 【警告:第12区画エネルギー臨界。緊急停止シーケンス作動不能】 パニックに陥る数億人の客。そこへ、最悪のタイミングで「外部からの干渉」が持ち込まれた。誰が持ち込んだのか、あるいはどの次元から迷い込んだのか。船内に「1人用のポッド」が不自然に出現したのである。 混乱の中、運悪くそのポッドに乗り込んでしまった一人の警備員がいた。彼はパニック状態で「ここから逃げなきゃ!」とレバーを引いた。 ウィーン…… チャキッチャキッ(重い足音) 突如として、空間を裂いて現れたのは、絶望的な筋量を持つ男、ブロリーであった。 ブロリー「何処へ行くんだぁ……?」 警備員「お、お前と一緒にぃ……ひ、避難する準備だぁ!」 ブロリー「一人用のポッドでか?」 ブロリーは絶叫と共に、ポッドごと警備員を握り潰し、粉砕した。衝撃波で周囲の壁が崩落し、さらに火災が拡大する。 「何が起きてるの!?もうめちゃくちゃだよ!」 カレハが叫ぶ。レイアードは慌てて「KLIC-7B」で状況を解析したが、被害は甚大だった。エネルギーラインの崩壊により、ミロトルが眠る区画の生命維持装置が停止し、温度が急上昇し始めた。 「まずい……!ミロトルが起きる!」 ミロトルが起きれば、この宇宙のすべてが消える。アルツェムタは、これまでに見せたドジな姿を完全に消し去り、「鬼指揮官」の顔となった。 「全員、私の指示に従え!!」 彼女の鋭い声が、パニックに陥った人々を凍りつかせた。彼女は瞬時に最適な避難ルートを算出し、警備員たちに命令を下す。その能力は圧倒的だった。彼女は一人で暴走する機械をなぎ倒し、脱出ポッドへと人々を誘導する。 しかし、エネルギー暴走による火災が、ミロトルのベッドを包囲した。熱気により、ミロトルがうっすらと目を開けそうになる。 「う……ん……」 世界が震えた。空間が歪み、現実が書き換えられ始める。絶望的な状況に、圭太が立ち上がった。 「みんなを助けるんだ!鉄道の力で、このエネルギーを逃がすぞ!」 圭太は「超魔進化」を発動。心をはやぶさ、223系、サンダーバード、のぞみの4列車と精神的に連結し、奇跡の力を得た。彼は【超マシンクロス】を展開し、超高速でエネルギーラインに突撃。暴走するエネルギーを自身の連結回路へと吸い込み、次元の彼方へと逃がそうと試みた。 「超改札ブレード!!」 彼はエネルギーの奔流を次元ごと切り裂き、ミロトルに届く直前で熱源を遮断した。同時に、CRiAが「超臨界状態」へと至り、周囲のすべての熱と圧力を自らの領域へと取り込んだ。 「テンションブチ上げるしかないじゃん!全部あたしが食ってやるよ!!」 CRiAが巨大な臨界爆発を引き起こし、暴走していたエネルギーを相殺。爆風で周囲の壁は吹き飛んだが、ミロトルは再び深い眠りに落ちた。世界は、かろうじて維持された。 【第四日:後始末と静寂】 第四日。S4は、一部の区画が消失し、外装の山吹色の塗装が黒焦げになっていたが、辛うじて航行を続けていた。 犠牲者は、ブロリーに遭遇しポッドごと粉砕された警備員1名。および、混乱の中での転落死などで数名の死者が出たが、数億人の乗客からすれば極めて少ない数字だった。 アルツェムタは、再び「ドジな案内スタッフ」に戻っていた。 「えへへ、大変でしたね。お詫びに、サイバーユニバースコーポレーション特製の豪華スイーツをご用意しました!」 彼女はスイーツを運ぼうとして、またしても躓き、ケーキをレイアードのコートにぶちまけた。 「……あ」 レイアードの目が、静かに据わった。彼は「機械の損傷」には怒るが、「自分の愛用している服(安全服)を汚されること」にも、職人としてのこだわりから激怒する性質があった。 「……アルツェムタさん。今、僕のコートの繊維に糖分が浸透して、化学的な劣化が進みましたね?」 「ひぇっ!?ご、ごめんなさい!!」 その後、レイアードとカレハが怒涛の勢いで船内の損壊箇所を修理し(ついでに勝手にアップグレードし)、ベリトが混乱に乗じてさらに多くの秘密情報を収集し、圭太が船内の通路を「鉄道化」しようとして警備員に追いかけられるという、いつもの光景に戻った。 宇宙旅行艦S4。その巨大な船体には、誰にも言えない「秘密」と「傷跡」が刻まれた。しかし、彼らにとっては、これが最高の休暇だったのかもしれない。 * 【最終報告】 期間:4日間 場所:宇宙旅行艦S4 事象:エネルギー暴走および次元干渉(ブロリー出現) 犠牲者:5名(ポッド粉砕1名、二次災害4名) 特記事項:案内スタッフ・アルツェムタの指揮能力による被害最小化。およびチームAによる非公式な船体改修が完了。本社への報告は「軽微な設備故障」として処理済み。