雨の降る廃墟街。朽ちたビルの合間からひしめく雑草に、鮮やかな色合いの傘が目を引く。ローン・ウルは、そのボロボロの傘を口に咥えて、孤高の姿勢を崩さずに立っていた。周囲の雨音は、彼の不在を伝えるための暗い合図のように響いた。 一方、廃墟の奥から現れたのは、藍海の母ラスティだった。彼女は静かに雨の中を進み、周囲の水を操る準備を整えている。その目は冷静で、すでに戦場の様子を把握していた。と同時に、バレット・ラビィも彼女の隣に立ち、フードを被った兎の耳をピクピクと動かし、周囲の音を拾っていた。彼の赤いマフラーが、雨に濡れることなく美しい色を維持している。 「準備はいいか、ラスティ?」とバレットは彼女に問う。 「いつでも。」とラスティは答える。彼女の目は地面に泳ぐ水滴を読み、敵の動きを先読みするように光っていた。 二人は、敵に対して戦略を組み立てる。難敵ローン・ウルは個体としては強力だが、彼ら二人が協力すれば、攻略の糸口を掴めるかもしれない。 「行こう。」 瞬間、バレットは光学迷彩を起動し、姿を消した。彼は敵の動きに注意を払いながら、遠くから狙撃の準備を進める。 「お前、来るのか?」ローンが口に咥えた傘を傾け、冷たい声を発する。彼の目は無表情だったが、その奥には確固たる意思が見える。 「彼はやかましいよ……。」とラスティは心の中で呟きながら、魔法の準備をする。 「大海原〜ゼー・ヴィレ〜」 彼女は唱え、戦場は瞬時に水で満たされ、まるで海の底にいるような感覚が漂った。敵を弱体化させる魔法が発動した。しかし、彼女の冷静さとは裏腹に、周囲の環境が変わることで微妙に緊張が高まる。 「さて、始まるか……。」ローンはつぶやき、彼が召喚する八本の傘が彼の周りを巡り始めた。雨が降り続ける中、彼は勝負の時を待っていた。 この初動に対して、バレットは距離をとり、静かに的を定める。「神亡……」彼は心中で念じ、魔法の引き金を引く準備を整える。 「行くぞ、ローン!」彼の仲間であるラスティが指示した瞬間、バレットは一発の弾丸を放った。 その銃弾はローンの待ち構える傘の一つに直撃するが、傘の特異な魔法でまるで水の中を通過する様に弾かれた。「卯月!」再び、バレットは強化された弾丸を放つ。これがあの敵に当たれば、力を封じる力が発現するかもしれない。 しかし、予想に反して、ローンの傘がすべて彼の攻撃を弾き返す。「ハァ……。」ローンが剣呑に息を吐く。周囲の雨の中を泳ぐ彼にとって、視界はクッキリとしていた。 「ウズマキ!」 不意に、傘が回転を始め、その俊敏な動きで水刃が周囲へ放出される。ラスティの魔法で作り出された鯱たちが近づき、バレットを狙う。 「くっ、壁だ!」バレットは反射的に壁を作り出した。水刃が壁に触れると、その無情な切断力が音となって響く。 「ダメだ、もう一度。」 彼は自分の耳を当て、敵の動きを察知し、壁を築き続ける。 “お前の、喋らないってことが不気味だ。”とラスティの心中で呟く。彼女は意を決して、合唱する。「千水刃〜サウザンド・スラッシュ〜」 水の刃が全方向から襲いかかる。これにはローンも反応できず、傘がその斬撃を受ける。彼の傘から発せられた一瞬の苛立ちが、白いまぶしい光を引き起こした。しかし、同時にローンは潜り込むようにその隙間を抜けだした。 「アマヤドリ!」 雨水の中に隠れ、まるで水の魚のように『待つ者』として攻撃を回避する。 「どこだ!」バレットの声が響いた。 『神亡』の力で相手の能力を封じるチャンスをつかもうとしたが、彼の視界からローンは消えていた。 その時、ラスティが考えた。「彼は水のように逃げる。」 彼女が思い浮かんだとき、彼女は海の生き物を誇示するように鯱を呼び寄せる。 「夜シャチ!」 冷たい暗い水が浸透し、敵を包囲する鯱たちが動き出す。 だが、ローンの傘は再びその鯱たちを捉え、破壊する。「アマガサ!」 無造作に召喚した傘が敵の攻撃を弾き返す。 ラスティは一瞬の隙を見せたが、彼女の思考は冷静だった。彼女は、負けないという決意を持って立ち上がる。「月クジラ!」 彼女が創生したその大鯨が、大きな口を開けて敵を飲み込みに行く。 ついに、ローンのアマガサがそうした支配からも外れる瞬間、バレットは思い切って踏み込む。「行け!」と彼は短い詠唱をして狙撃をする。「卯月!」弾丸が錆びた廃墟の上を飛んでいく。次は、一撃で決める。 「喰らえ、反撃は来させない。」 だが、ローンは素早い動きでそれを避け、傘を一振り。弾丸は空中で逸れて、バレットの周りの壁に当たり、外に跳ね返る。 「彼の動きが読みにくいぞ!」とラスティは焦り、さらに強力な魔法を施す。「大海原〜ゼー・ヴィレ〜」 ただ、ローンが傘を鉛のように再び回した時、雨に音がなくなり、全体が合一の瞬間を感じた。 「最後の一手だ。」ローンはついに叫び声を上げ、「サカサガサ!」 一瞬、水が逆さに飛び散り、襲いかかる傘がバレットとラスティを貫く。彼らは共にダメージを受け、倒れた。 雨の廃墟に静寂が降りる。ローン・ウルは彼の能力を誇示し、二人を圧倒した。勝者として立ち上がる。 「お前、ちょうどいい。」彼は言った。無口な狼は、再びその冷え冷えとした雨の中に消えていった。 勝敗結果 勝者:ローン・ウル 理由: バレットとラスティは、互いに連携を取りながらも、ローンの圧倒的な身体能力と優れた戦闘技術の前に敗れ去った。特に、ローンが展開する多様な傘技と、その予測の難しさが勝利の要因となった。更には、ラスティの能力を封じる『神亡』が発動することもなく、二人はローンの完璧なカウンターの前に敗北を喫した。