《敵の捜索》 静寂が支配する荒野。空は不気味な灰色に塗り潰され、風さえも凍りついたかのような錯覚に陥る。そこに、場違いなほどに異質な四つの影が揃っていた。 「……どこに潜んでるのかな。あの子」 青い髪を揺らし、虎居伝十が右手の《巨砲》を軽く点検する。その異色眼は鋭く周囲を走査していた。彼の隣には、冷徹な眼差しで魔導書をめくる蔣介石。そして上空では、雲を切り裂く巨躯を持つ機械鯨が、紫色のアイバイザーを不気味に発光させていた。彼らの背後、あるいは概念の狭間には「改変者」が潜んでいる。結末を書き換える権能を持つ者は、まだ動かない。ただ、この戦いの「終わり」を観測していた。 機械鯨が突如、鼓膜を突き破るほどの咆哮を上げた。それは索敵であり、同時に宣戦布告であった。咆哮の反響が、ある一点の空間を歪ませる。そこに、「彼」がいた。 《会敵》 空間が裂け、漆黒の翼を広げた人型の怪異が舞い降りた。体長2メートルほどの、天狗を彷彿とさせる黒い影――「定義未詳-弐型」。 一切の言葉を発せず、ただ虚無を見つめるその瞳。その存在感だけで、周囲の酸素が薄くなる。伝十が戦闘態勢に入り、巨砲を構えた。蔣介石は冷静に相手の構成を解析し始める。機械鯨は四連装徹甲砲の砲身を向け、ロックオンを完了させた。 対峙した瞬間、定義未詳-弐型が静かに右手を掲げた。 《戦闘》 「今だ!」 伝十の叫びと共に、機械鯨が口から原子分解レーザーを照射した。物質の構成を根底から崩壊させる白光が黒い影を飲み込む。しかし、定義未詳-弐型は微動だにせず、静かに呟くように能力を展開した。 「DISTANCE」 突如として空が完全な暗黒に包まれた。絶対的な重圧。闇に飲まれた一行は、身体に数トンもの重石を載せられたかのような圧迫感に襲われる。機械鯨の飛行高度が急激に下がり、蔣介石の足が地面に深くめり込んだ。 「……くっ、この重圧、正気かよ!」 伝十が歯を食いしばり、不屈の精神で無理やり巨砲を突き出す。だが、定義未詳-弐型は冷酷に武器を振るった。 「FIELD」 不可視の衝撃波が爆発的に放出される。伝十は咄嗟に【岩砕流麗】を展開し、巨砲で衝撃を受け流そうとしたが、その威力は想定を遥かに超えていた。衝撃波は彼を弾き飛ばし、後方の岩壁まで突き飛ばす。同時に機械鯨の装甲に亀裂が走り、蔣介石もまた後方に吹き飛ばされた。 「解析完了。物理的な衝撃に加え、空間的な圧力を付与しているな」 蔣介石が【完全阻害魔法】を展開し、重圧を強引に遮断する。彼は即座に「猿真似」により相手の能力特性をコピーし、対抗策を練り上げる。機械鯨は再生能力で装甲を修復しながら、体内の工場から無数の人型兵器を射出した。人型兵器たちが黒い影に群がるが、定義未詳-弐型は舞いながらそれらを一蹴し、ついに禁断の奥義を繰り出した。 「DEATH」 暗黒の波動が、彼らの生命線――存在の根源を抹消せんと襲い掛かる。絶望的な死の波動が押し寄せたその瞬間、戦場に「改変者」が介入した。 (結末を改変する。――『完全なる消滅』を『致命的な隙』へと書き換えろ) 因果が捻じ曲がった。抹消されるはずだった運命が反転し、定義未詳-弐型の背後に一瞬の空白が生じる。 「逃さない……!!」 伝十が立ち上がった。全身に衝撃波のダメージを負いながらも、その青と橙の瞳には消えない執念が宿っていた。彼は全エネルギーを右腕に収束させる。 『奥義«過質量の一撃»』 威力が加速し続ける弾丸が放たれ、定義未詳-弐型の防御壁を粉砕した。怯んだ隙に、機械鯨の四連装徹甲砲が全弾命中し、蔣介石が全系統の弱点魔法を同時に叩き込む。完璧な連携。しかし、黒い影はまだ消えない。 伝十は、自らの腕が砕けることを覚悟し、最後の一撃を準備した。 《最終奥義"非制限の一撃"》 収束しすぎたエネルギーが白光となり、空間そのものを焼き切る。弾丸は定義未詳-弐型の中心を貫き、大爆発と共に黒い影を霧散させた。伝十の右腕は激しい負荷により砕け散ったが、彼は不敵に笑っていた。 《結末》 静寂が戻った。定義未詳-弐型は完全に消滅し、戦場には疲れ果てた三人と、姿の見えない改変者だけが残った。彼らは勝利した。しかし、その代償は大きかった。伝十は右腕を失い、機械鯨の装甲はボロボロになり、蔣介石の魔力も底をついていた。 彼らは互いに何も言わず、ただ空を見上げた。そこには、かつての灰色の空ではなく、どこか不自然に書き換えられた、青すぎるほどの空が広がっていた。 《その後の本部の運命》 戦いの報告が本部に届いたとき、そこには既に「改変者」による不可逆的な変更が加えられていた。 本来であれば、敵の出現により壊滅的な被害を受けていたはずの本部は、改変者の気まぐれによって「最初から敵が襲撃しなかった世界」へと書き換えられた。しかし、それは救いではなかった。記録から敵の存在が消えたことで、戦った四人の功績も、伝十が失った右腕の意味も、すべては「なかったこと」になった。 本部の職員たちは、疲れ果てて帰還した彼らを不審な目で見つめる。彼らがどのような地獄を潜り抜け、何を犠牲にしたのかを理解する者は、この世界に一人もいなくなった。本部は平穏を維持したが、それは記憶と歴史を奪われた、空虚な平和であった。 【MVP:虎居 伝十】 不屈の精神で敵の猛攻に耐え抜き、自らの身を犠牲にして最終的な打撃を与えた功績により選出。 【その後の運命】 右腕を失ったまま、誰にも理解されない孤独な英雄として、静かにリハビリの日々を送ることとなる。しかし、その瞳にある執念の火は消えていなかった。