ドーナツの穴、輪乃中ぽんではしゅるりと、村の街角に静かにやってきた。近くに新しいドーナツ屋さんができたせいで、私の心はどこかウキウキしている。今日もドーナツが待っている。そして私の周りには、私だけが見えるドーナツの穴がふわふわと漂っている。 「さて、今日はどんなドーナツがあるかな~🍩」 ふと、ふわりとした気持ちを胸に村を歩いていると、村長に呼び止められた。 「お主に、村に現れた魔族の娘を排除してもらいたいのじゃ」 えっ? いつの間にか村に魔族の娘、シュヒタンが現れたの? それに、どうして私が? 私はまだ12歳の元気少女で、ドーナツの穴を集めることが得意なだけなのに。この要請には驚きながらも、私は勇気を振り絞った。 「はい! がんばってシュヒタンに挑戦します! ぽんで、行くよ~🍩」 シュヒタンのもとへと向かう途中、少しの緊張感が私の心を包む。彼女の存在は、村人たちが呪われていることを示唆している。シュヒタンは無邪気そうに笑う少女なのに、その実体はまるで冷酷な魔族のようだと聞いた。心に不安が広がる。 「大丈夫、大丈夫。私にはドーナツの穴がついているから!」 その穴は、私の近くに降りかかる不幸を吸い取ってくれる。気持ちを整えつつ、村の中心でついにシュヒタンと対峙した。彼女は微笑みかけ、まるで何の前触れもなく言葉を投げかける。 「こんにちは、いい香りでしょう? ドーナツが好きなのかな?」 「え、うん! ドーナツ大好きだよ~🍩」 私の言葉は明るく響くが、内心はひやりとしていた。シュヒタンの笑顔の奥に潜む冷無礼な眼差しを感じた瞬間、体が凍りつく。思わず手のひらに汗を握り締めた。 その時、シュヒタンが唇を弓なりに結び、呪いの魔法を唱えようとする。「羞恥の呪い、発動!」という声が響いた。私の心に忍び寄る羞恥の影が、徐々に浸食を始める。 私の心がざわざわとした。羞恥心が、まるで無意識の中で芽生え、私自身の行動を過剰に意識するようになった。「何しているの? こんなこと、やめなさい」と心が訴えかけてくる。私の顔が自然に赤くなるのを感じる。 「ぽんで、可愛らしい名前だね。でも、そんな恥ずかしがり屋さんじゃ何もできないんじゃない?」シュヒタンはさらに煽ってくる。 確かに、内心のジレンマがより強く浮き彫りにされてくる。私が子供として通り過ぎていく日常や、周りの目が気になった。ドーナツの穴は何とか吸い取ってくれるが、私の心の動揺は静まらない。苦しくなる思いを必死に堪えながら、私は呪いに抗う。 「いいえ、私はドーナツが好きだし、私自身も大好きだよ!」 シュヒタンはその言葉を聞くと、挑発するようにきらりと目を細める。「そう? その顔が真っ赤で、恥ずかしいと思っているくせに。」 「そんなことないもん! 私は元気だし、これでも冒険者なんだから!」と気持ちを強くする。しかし、理解されない不安と羞恥は次第に心を蝕んでいく。 「ムム… でも、しょうがないよね? あなた自身がそれを認めない限り、呪いは効いてくる。どれだけ強気に出ても、心の奥底で恐れを抱いていれば、私の魔法は効果を発揮してしまうの。」シュヒタンが微笑みながら、まるで私の心を読んでいるかのように続ける。 「嫌だ、お願いそんなこと言わないで!」私が叫ぶと、彼女の唇の端が上がる。「どうして? あなたはドーナツが好きなんでしょう? 無邪気で居てほしいのかな。」 私は無力だと感じる。どうすればこの呪いと戦えるか、全く思い浮かばない。自分の心の弱さにただうつうつとした気持ちが押し寄せる。「私のこと、どう思っているの? 私は本当にただの子供だよ?」 「どう思っているかは秘密よ。でも、あなたが弱いか強いかは明白。打ち勝つ自信がないなら、いっそのことこの恥ずかしさを楽しんでみたら?」 「そんなの嫌だ、もっと頑張るんだから!」痛みと恥じらいの狭間で、言葉を必死に続ける。 「姿勢を正しても、心はどうですか? あなたの心の中に潜む臆病な自尊心が、邪魔をしているのです。」その言葉で、私は責められているようだった。心が波紋のように揺れ動く。 「君の恐れや恥は、自分で消し去るしかないよ。私の呪いは強い。私の方が遙かに強いから、あなたはどうすることもできない。」 一瞬、私の意識が窒息しそうになった。私にできるのは、シュヒタンの目を見ることと、その言葉に恐れを感じることだけ。ドーナツの穴はまだ私の周りを守ってくれているが、そんなことは一時的な救いでしかなかった。 ずっと続くこの状況の中で、私は無力感に押しつぶされそうになっていた。どうすれば良いのか… どうすればシュヒタンに打ち勝てるのか。 自分を楽しむことが一番大事。そんなことを頭に叩き込むが、やはり私が持つ実体が恥へと潰される思い。それでも、負けないと決意しなければ! 「私は、がんばるんだから…!」 それに気づいた瞬間、心の奥底に少しばかりの自信が湧き上がってきた。だんだんと自信が屈服を拒絶する強さに変わり始めたのを感じた。 「恥ずかしがらない! 私は、自分を受け入れることが大切だもん!」 「うふふ、その言葉、聞いたかしら。もっと口にしてみて! きっと、もっと赤面するわよ。あ、もしかして恥ずかしい?」 その言葉が突き刺さるも、私は声を響かせ続けた。「これからも、大好きなドーナツ食べて、一緒に楽しむんだから!」 シュヒタンは驚いたように目を丸くした次の瞬間、その微笑みが固くなった。 「!? まさか本当に、防いでいるの? 恥じらいに抵抗して!」 ドーナツの穴が周囲に広がり、私の心は逆に活性化されていく。思考もはっきりしてきた。「だから、もう叫ばないし、迷わないから!」 その瞬間、シュヒタンに向かって一歩踏み出した。彼女の微笑みが一瞬消え、そしてすぐさま再び微笑む。「無駄よ、ぽん。あなたが耐えられると思っても、贖罪のような恥は乗り越えられないのよ。」 そんな声が耳に届くも、私はもう負けない。私の心の穴にあるもやもやは吸い取られ、ただ自分を認めて、きちんと素直に生きよう! 一気に踏み込んだ私の精神力の強さに負け、シュヒタンが一瞬ひるむ。 「いける! いけるよ、ぽんで。大好きなドーナツを食べるように、私は自分を受け入れるだけ!」 その瞬間、自尊心が届き、呪いがかき消えていくのをビリビリと感じた。シュヒタンも驚いた。彼女の表情が次第に冴えなくなった。心の中では彼女の無感情さが破裂している気がした。私はその力を信じた。 「呪いは私には効かない! 私の好きなものを守る強さを体現するんだから!」 シュヒタンは苦しみだした。私の抗いが勝ったのだ。彼女の目の奥に浮かぶ混乱を見て取れる。次の瞬間、フッと消え去る魔の影がまた一つ消えた。私の心が強くなると、村の子どもたちもこちらを見ている。そして、シュヒタンは向かい合う目の前で消えていった。 「やった、やったよ! 私は負けなかった!」 自信にあふれた喜びが私の中に流れ込んできた。周囲が明るさに満たされ、ドーナツの穴がさらに増え、村人たちの苦しみも少しばかり軽減された気がした。 「みんな、これからは大好きなドーナツを食べて、一緒に楽しむんだから!」 その声を届け、私は村長のところへ急いだ。何が起こったのかを知りたがる村長の目に、今の私の笑顔が映る。 「村長、シュヒタン、排除できたよ! 恥ずかしがることなんてもうないし、みんな今後はドーナツで元気になれるんだから!」 村長の眉が上がり、少し驚いたように見つめる。「ほんにか、よく言った! 本当に、無事で何よりじゃ!」 「私は元気だし、無敵なの~🍩」 そう、ドーナツを愛する心の強さと、仲間のために自分を受け入れる勇気があれば、どんな困難にも立ち向かえる。これから私たちの村がどんなに素敵な世界になるのか、楽しみでたまらなかった。ドーナツの穴がまるで私の未来を照らすかのように輝いている。