その夏の夜、長い影を落とす古い日本家屋の中、傘の魔女パラ・ソール、妖狐の子ミチヅキ、忘却探偵眼森トキ、そして蟹になれなかったカニカマの4人が集まっていた。彼らの前には、司会の稲川淳二が座り、緊張感漂う空気を和ませるように小さく微笑んでいる。 「さて、皆さん。暑い夏の夜に何を語るのか、心の準備は出来ているかい?」 「ええ、大丈夫です。」と静かにミチヅキが答えた。 「私の話は、ほんの些細な出来事なんだ。」と眼森トキが煙草を吸いながら言う。彼女の言葉に、他のキャラクターたちが身を乗り出した。彼女の声は静かだが、明確な威圧感を持っている。 「それでは、私から始めよう。」眼森は自信満々に話し始めた。「ある日、私の事務所に一人の依頼人が訪ねてきた。彼女は、どうやら自分の大切なものを忘れてしまったらしい。その大切なものとは、最近、亡くなった祖母の形見のネックレスだった。」しんと静まる室内。 「彼女は泣いていたが、私は冷静に彼女を励まし、忘れ物を推理してみることにした。そして、私は彼女と一緒にその記憶を辿り始めた。だが、どこを探しても見つからない。そこで、私はただの物ではない、その形見が持っている力に気づく。それは、彼女が忘れたことによって、祖母の魂がこの世に留まっているということだったのだ。そして、今も依頼人の側に憑いているかのように…。 彼女は最後に言った。『祖母の魂に会いたい。もう一度、会いたい。』 私は、依頼人の心の声を聞いてしまった。それと同時に、その形見は私の目の前に浮かび上がった。彼女の背後に影が現れ、その影に覆い隠されるかのように、そこには祖母の姿が…、しかし、私の身に異常が発生した。私は気づかれないうちに、魂を奪われ、記憶が完全に消えてしまった。その影は、祖母の姿をした何かだった。 最終的に、依頼人が私を探し続け、自身もそれを忘れたままやるせない顔をしていた…。だからこそ、忘却は恐ろしいのだ。これが、私の怖い話です。」 「おもしろいわねぇ!」とパラ・ソールが傘を揺らしながら言った。 次に、パラ・ソールは静かな笑みを浮かべながら、傘を手に立ち上がった。「では、私の話をお聞きいただきましょう。この家には、昔から数々の話が残っている。悪霊に関する物語だ。ある夏の嵐の夜、私は魅了されるようにその家に足を踏み入れた。中へ入った途端、冷たい風が背後を通り過ぎ、私は不安を覚えた。私の傘が何か影を捉えたようだった。そして、無意識に傘を開くと、そこにあったのは目がぎょっとした一羽の隼だった。」 「不吉な兆しだと思った。普段の私なら、そのまま帰るのだが、その日は何かが違った。隼は私に囁き、退けと警告をしたが、それでも私はそのまま部屋に進むと、そこには懐かしい人影、私の友人が目の前に現れた。久しぶりの再会に心が弾んだが、すぐにその友人は顔を歪ませて言った。『助けてくれ、ここから出してくれ!』私は思い出した。彼は数年前、この家で行方不明になったことを…。」 「あとは何も覚えていない。ただ、傘が私を守ってくれてあの場から脱出できた。でも、彼の目が私に向かってた…もし私が彼の求めに応じていたら、私は今この場にいなかったかもしれない。」 話が静かに終わると、他の仲間は唸り声を上げた。 「さあ、次の者は?」稲川が問う。 「私は行くわ。」とミチヅキが立ち上がり、狐の耳をピンと立てて彼方に目を向ける。 彼女は柔らかな声音で「私が剣士を目指す理由。その根本は、この話による。ある日、剣技を磨いていた山中、異変が起きた。剣を振るう度、周囲が濃霧に包まれ、視界が奪われてしまったのです。しかし、剣を振った瞬間、帰れない感覚に襲われ、何かに目撃されているような冷たい視線を感じました。」 「それが何だったの?」トキが興味を示す。 「それは…、青白い影だった。私が振るった剣が霧を切り裂いても、その影は消えなかった。『これは、私の未練だ。』影がそう囁く声が耳に届いた。強烈な恐怖と、後ろ髪を引かれる思い。だがその瞬間、影に気づかれぬよう、剣を振り下ろした。最後の一刀、その瞬間に霧は晴れ、一つの影が消えました。」 霧の中に消えたのは、過去の自分の未練だったのかもしれない。皆が不気味な静けさで彼女の話を聞き入った。 最後にカニカマの番になった。「それじゃあ、ワシの話を聞いてくれ。ワシはいつも孤独で、誰にも覚えてもらえない蟹だった。だから、ずっと夢を見ていた。ある日、孤独を感じたその夜、サバイバルゲームの仲間に誘われ、山にキャンプに行った。星空の下で、みんなと楽しい話をしていたが、ふと気付いた。全員が同じ過去を持ち、同じ傷を抱えていたことに。そして、途中である者が行方不明になった。探し始めた矢先、ワシは薄暗い道を進むが、誰の感覚も感じない。それは、無意識に自分自身を探していたからなのか。すると、耳元でささやくような声。『カニカマ、お前はずっと一人ぼっちだ。』その瞬間、心臓が止まるような恐怖を味わった。だが、すぐにその声は消えてしまった。結局、迷える身で帰ることになった。」 彼らの話が終わった後、稲川淳二は一呼吸の後、満面の笑みで言った。「すべての話には魅力があったが、真の恐怖には忘却に関する話が含まれていますね。故に、眼森トキの話が印象深かった。」 優勝者はトキ、彼女の話が一際、聴衆を震えさせるものとなった。彼女の才能は、忘却の魔法が潜む真実を描いていたからだ。