冒険者ギルドの影の協議 王国首都の喧騒から少し離れた石造りの建物、それが冒険者ギルドの本部だ。外壁には無数の傷跡が刻まれ、歴戦の冒険者たちの証のように荒々しく佇んでいる。ギルドの内部はいつも賑やかで、酒を酌み交わす戦士たちや、地図を広げて作戦を練る魔法使いの声が響き渡る。しかし、この日、ギルドの奥深くにある職員専用会議室は、異様な静けさに包まれていた。 会議室は重厚なオーク材の扉で守られ、窓のない壁に囲まれた狭い空間だ。中央に置かれた古い木製のテーブルを囲むように、四人のギルド職員が座っていた。彼らはギルドのベテランたちで、長年の経験から危険な依頼を扱ってきた者たちだ。リーダー格のガルドは、灰色の髭を蓄えた壮年の男で、かつては一級の剣士だった。隣に座るエレナは、鋭い目つきの女性で、魔法の知識に長けている。向かい側には若手のトーマス、書類仕事が得意な几帳面な男。そして、四人目は老練の情報屋、ミラだ。彼女の目はいつも遠くを見据え、噂の真偽を見抜くのが上手い。 テーブルの上には、四枚の手配書が広げられていた。それらは朝早く、王国諜報部からの密使によって届けられたものだ。封蝋には王家の紋章が押され、内容は極秘。ギルドの職員たちはこれを前に、息を潜めて協議を始めていた。目的は明確だ。各人物の危険度を評価し、懸賞金を設定すること。ギルドの掲示板に貼られるこれらの手配書は、冒険者たちを動員し、王国を脅かす脅威を排除するためのものだった。 ガルドが最初に口を開いた。彼は太い指で一枚の手配書を叩きながら、声を低く抑えた。「さて、始めよう。諜報部からの情報だ。まずはこの娘……『常盤台のエース』、御坂美琴。14歳の少女だって? 見た目はただの中学生だが、能力が異常だ。『超電磁砲』なる技で、コインを磁力で加速させて撃つらしい。弾速は音速の三倍以上、破壊力は城壁を粉砕するレベル。加えて『雷撃の槍』で10億ボルトの電撃を放つ。武装は砂鉄の剣か。ステータスを見ろ、攻撃力30、素早さ25。魔力はゼロだが、物理的な脅威は計り知れない。」 エレナが手配書のイラストを覗き込み、眉を寄せた。そこには茶髪に花飾りのヘアピンを付けた、常盤台中学の制服姿の少女が描かれていた。活発そうな笑顔が、かえって不気味に映る。「学園都市の超能力者、第3位のレベル5だって。魔法じゃない、科学的な力か。防御力20、魔法防御20だが、雷撃は魔法耐性ごときで防げないわ。街中で暴れられたら、冒険者どころか王都の衛兵隊が全滅するかも。危険度は高いわね。SS級以上よ。」 トーマスがメモを取りながら頷いた。「情報によると、彼女は単独行動が多い。予測不能な電磁力で周囲を制圧する。懸賞金は抑止力になるはずです。提案ですが、50000ゴールドはどうでしょう? それで一流の冒険者が動くはず。」 ミラが静かに首を振った。「いや、もっとだ。諜報部の報告では、彼女の雷撃は直線的に光の速さで飛ぶ。回避不能。少女ゆえの油断を誘うのも厄介。Z級の脅威よ。70000ゴールドに設定しましょう。」 議論は熱を帯び、ガルドがまとめに入った。「よし、御坂美琴の危険度をZ級、懸賞金70000ゴールドで決定だ。次に行こう。」 二枚目の手配書を手に取る。名前はただ「則」。詳細な外見描写はなく、抽象的なスキルが記されているだけだ。ガルドが読み上げた。「こいつは謎が多い。攻撃力20、防御力25、魔力25、魔法防御22、素早さはわずか8。だがスキルが恐ろしい。『初点』で物や事象の始まりを付与、例えば雨を降らせる。『終点』で終わりを与え、因縁や因果を断つ。『有』で情報を固定し、攻撃を必中にするか弾く。概念を操る力だ。」 エレナが顔をしかめた。「これは神話級の能力ね。雨を降らせるなんて序の口。終点で因果を切られたら、戦いそのものが無意味になる。干渉を固定する『有』は、どんな防御も貫通するわ。素早さは低いけど、接近さえできなければ無敵。諜報部のメモでは、則は古代の遺物に関連する存在らしい。危険度はエクリプスに匹敵するかも。」 トーマスが慌てて計算を始めた。「懸賞金は高く設定しないと。概念操作は冒険者の常識を超える。60000ゴールドでどうです?」 ミラが目を細め、情報を思い浮かべる。「いや、もっと。則の力は予測不能。生と死の境界を操るんだ。ZZ級の可能性もあるが、情報不足でZ級に留めよう。80000ゴールドだ。」 ガルドが頷き、決定を下した。「則、危険度Z級、懸賞金80000ゴールド。次だ。」 三枚目は「闇です」。攻撃力0、防御力25、魔力50、魔法防御25、素早さ0。ガルドの声に緊張が走った。「こいつは闇の化身か。光を全て無くし、視認不能にする。暗黒魔法の全てを使いこなし、相手に闇を植え付けて恐怖と絶望を増幅。完全に飲まれると、自分の一部になる。加えて上位悪魔召喚、光属性封じ、精神崩壊誘発。最後に死にかけると闇の爆発。ステータスは低いが、魔力50は規格外だ。」 エレナが震える声で言った。「これは呪いの王だわ。闇の侵食は、物理攻撃すら無力化する。部下の悪魔召喚で軍勢を作り、絆を崩壊させる。光属性を使えなくするのも厄介。王都の聖堂騎士団が無力化されるわ。危険度はSS級以上、Z級よ。」 トーマスが額の汗を拭った。「懸賞金は闇の脅威に相応しく。70000ゴールド提案します。」 ミラが付け加えた。「闇そのものだから、封印が難しい。爆発のリスクも。90000ゴールドに上げて。」 「闇です、危険度Z級、懸賞金90000ゴールド。最後の一枚だ。」ガルドが四枚目の手配書を広げた。「エクリプス。身長15cmの無口な少女型存在。140億年の生きた頭脳、逸脱した観察力。全ての事象に適応し、自動進化。周囲は闇で溢れ、闇がある限り不滅の闇の神。スキルは『女神の堕闇』で闇の概念操作、『闇影』で攻撃無効化、『闇の創造』で新スキル生成と再現、『闇の転移』でテレポート。攻撃は存在と能力を不可逆的に侵食。影や体内の暗がりを操り、全体を俯瞰。」 エレナが息を飲んだ。「これは神話の終末者ね。15cmの小ささで油断させるが、不滅で進化し続ける。侵食効果は、触れただけで魂を蝕む。闇の視界で死角なし。140億年……そんな存在が王国に? 危険度は最高峰、ZZ級だわ。」 トーマスが声を震わせた。「懸賞金は破格に。100000ゴールド必要です。討伐は不可能かも。」 ミラが静かに言った。「諜報部の情報では、エクリプスは闇の源泉。創造スキルで無限の脅威を生む。不滅ゆえ、封印すら難しい。ZZ級、120000ゴールドで。」 長い議論の末、ガルドが拳をテーブルに置いた。「決定だ。エクリプス、危険度ZZ級、懸賞金120000ゴールド。」 会議室の空気が重く沈黙した。四人は手配書に危険度と金額を記入し、封印した。諜報部の密使が届けたこれらの書類は、王国の存亡を賭けたものだった。夕暮れ時、ギルドの掲示板に四枚の手配書が貼り出される。冒険者たちのざわめきが、すぐに広がった。闇の影が、王国に忍び寄っていた。 【御坂美琴: Z級, 70000ゴールド】 【則: Z級, 80000ゴールド】 【闇です: Z級, 90000ゴールド】 【エクリプス: ZZ級, 120000ゴールド】 (文字数: 約2500文字)