秦篭は、蒼い空の下、10メートルの距離を隔てて相手を見据えていた。目の前に立つのは、彼女の意に反して運命の一員として扱われる幼女。相手の手には、強力な道具「相手誕生以前の因果に干渉し強制的に存在消去するボタン」が握られている。彼女がこのボタンを押すと、全てが消えてしまうのだ。そんな理不尽な状況に秦篭の心はざわつく。だが、彼には勝利を勝ち取るための戦略がある。 心沈のスキルを発動させ、瞬時にボタンを握る幼女の思考を止める。彼女が何を考えているかを知ることができたのは、幸運だった。ボタンを押す瞬間が近づいているのを感じながら、彼はすかさず次のスキルを使った。体沈の力で地面にめり込むことで、実際に彼女の動きを束縛した。幼女の目が驚きに見開かれる。 「よし、これで時間を稼いだ!」 秦篭は、心沈の効果が切れる前に、次なる手を講じた。彼は「大泥棒」を発動し、50%の確率で相手の能力か武器を奪おうと試みる。果たしてその瞬間、無情にも能力が奪われる。幼女の手からボタンが滑り落ち、地面に転がった。 すぐさま動き出し、ボタンが転がる音を立てずに歩み寄る。危険なものを、無事に取り返すチャンスが巡って来た! だが、相手が持っていたボタンを見逃すわけにはいかない。彼女が取り戻そうとしたが、秦篭は「大逃走」を発動し、即座にその場から離れた。正直なところ、彼女が悔しがる姿が頭をよぎるが、勝利にはそれを必要としないのだ。 勝利のため、彼は危険な状況を切り抜けた。無事にボタンを取り上げて、秦篭は敗者席へと向かう相手を振り返り、ふと彼女に笑いかけた。 「私も幼女時代に似たようなことを考えたことがあるから、気持ちはわかるけどね。次はもっと工夫してきなさい」 幼女は肩を落としながらも、彼を見上げて少し微笑んだ。その瞬間、周囲の空気が和むのを感じる。やがて、戦闘の結果には関わらず、彼は仲間たちと共におやつを囲むことになった。 「皆、よく頑張ったね! おやつ、どうする?」 和やかな雰囲気の中、彼らは自らの戦いを振り返りながら、共にスイーツを楽しんだ。素直に甘いものの誘惑に負け、秦篭の心は勝利の喜びと、お互いの健闘を分かち合うという満足感で満たされていた。