冒険者ギルドの影の協議 王国首都の喧騒から少し離れた石造りの建物、王国管理の冒険者ギルド。その一角に、職員専用の会議室があった。重厚なオーク材の扉が閉ざされ、蝋燭の灯りが揺れる薄暗い部屋。壁には古い地図と歴代の英雄の肖像画が掛けられ、中央の長いテーブルには四枚の手配書が広げられていた。これらは王国諜報部から直々に届けられたもので、封蝋には王家の紋章が押されていた。 四人のギルド職員が席に着いていた。リーダーのマリオンは、厳つい髭を生やした中年男性で、ギルドの懸賞金査定を長年担当してきたベテラン。隣には若手のエルナ、眼鏡をかけた知的な女性で、魔力や超常現象の専門家だ。向かい側に座るのはガルド、筋骨隆々の元冒険者で、物理的な脅威の評価に長けている。最後に、細身のローラ、情報収集の達人で、諜報部の連絡窓口を務めていた。 「さて、皆さん。これが諜報部からの緊急手配書だ。四件とも、ただ事じゃない。危険度をしっかり判定して、懸賞金を設定する。ギルドの名にかけて、適正な額にせねばならない」マリオンが低い声で切り出した。彼は一番上の手配書を手に取り、皆に回した。紙には簡潔な記述が記され、犯人の似顔絵らしきスケッチが添えられていた。 最初の手配書は「エスター」と名乗る少女のものだった。9歳の養子としてオルブライト家に引き取られたとあるが、詳細は異様だ。下垂体機能低下症による成長ホルモン異常で、実は33歳の成人女性。知能が高く攻撃的な性格で、鳩を石で叩き殺したり、コールマン家を放火した記録。武装は小さめのハンマー。ステータスは攻撃力15、防御力10、魔力0、魔法防御力0、素早さ25。 エルナが眼鏡を押し上げて読み上げた。「これは…見た目は子供だが、中身は大人。計算高い性格で、英語混じりの話し方をするらしいわ。日本語訳付きの報告書よ。『I will crush you like a pigeon(私はあなたを鳩のように潰す)』とか、冷徹ね。発育不全とはいえ、33歳の経験値が怖い。放火事件はコールマン家全焼、死者三人。鳩の件は街中で何度も目撃されてる。小柄で素早いから、捕まえにくいわ」 ガルドが拳を握りしめた。「ハンマーか。子供サイズでも、頭に当たれば致命傷だ。攻撃力15は侮れない。防御は低いが、逃げ足が25もある。街中で暗殺や放火を繰り返すタイプだな。危険度は…B級くらいか?」 ローラが首を振った。「甘いわよ。知能の高さが問題。養子として潜入して家を焼き払うなんて、計画的。諜報部も『長期的な脅威』と評価してる。A級にすべき」 マリオンが頷き、議論をまとめた。「同意だ。エスターの危険度をAとする。懸賞金はその素早さと知能を考慮して、5000ゴールド。捕縛優先だが、抵抗すれば討伐も可」 次に、二枚目の手配書。名前は「破壊邪神【Gelöscht】」。これはただの人間の犯罪者などではなかった。唯一神を憎み敵対する対極の至高の神。性格は邪悪、悪質、狂気。ステータスは超越。第一位神以外は危害を加えられない不死身。表現は深い闇と死をもたらす触手の渦、多数の目玉。司るものは闇、悪、死。 部屋に沈黙が落ちた。エルナの顔が青ざめた。「これは…神話級の存在よ。完璧に倒すのは不可能で、擬似体力を千億持つ。0にすれば撃退可能だけど、信仰の力を集めれば顕現して世界の軸を固定し、全並行世界を破壊。世界線の分離機能不全でif世界が生まれなくなり、無尽蔵の眷属が沸き、一時間後に世界消失…。冗談じゃないわ!」 ガルドがテーブルを叩いた。「こんなもん、冒険者が相手にできるか! 触手の渦に目玉だらけ? 闇の神だぞ。俺の剣なんか通用しねえ」 ローラが震える声で言った。「諜報部の注釈によると、最近の異常現象—村の消滅や闇の霧—がこれの仕業らしい。信仰者が増えかけてる。抑え込まないと、王国どころか世界が終わる」 マリオンは額に汗を浮かべ、深呼吸した。「危険度は最高峰のZZ。神級の脅威だ。懸賞金は…一億ゴールド。討伐は不可能なので、撃退か封印を条件に。ギルド史上最高額になるが、仕方ない」 三枚目。「『現実の厳しさと出資者の期待に立ち向かう勇士』サムソー・アランデール」。戦闘方法は機体「キルゾーン」に搭乗。右手は「クラムダー」手動装填式航行ミサイル砲、左手は「ミネストー」閃光炸裂手榴弾。機体損耗率50%超で出資者たちが加勢、カールグスタフ無反動砲らしきものを使用。攻撃力25、防御力20、魔力0、魔法防御力0、素早さ55。 ガルドが目を輝かせた。「おお、こいつは面白え! 低所得層の共同出資で作った大型人型機体か。四脚で姿勢制御に優れ、自律航行の誘導兵器で攻撃。操縦が下手でも命中率が高い。逃げに徹するスタイルだな。素早さ55は脅威だぜ」 エルナが分析した。「魔力ゼロだから魔法耐性はないけど、防御20で頑丈。出資者たちが加勢してくるのが厄介。損耗50%で無反動砲の援護射撃…。傭兵として報酬を狙ってるが、機体の維持費で借金まみれらしい。だが、機動力が高く、街や森で暴れれば大惨事よ」 ローラが付け加えた。「諜報部の報告では、最近の国境紛争でこれの機体が目撃された。出資者たちは貧民だけど、武装は本格的。サムソーは『夢を背負う勇士』と自称してるけど、ただの破壊屋だわ」 マリオンが頷いた。「技術的な脅威だな。危険度S。懸賞金は機体の破壊を条件に、8000ゴールド。出資者連中も要注意だ」 最後の手配書。「対」。能力は「対」—相手の対の存在になる。攻撃力20、防御力20、魔力20、魔法防御力20、素早さ20。スキルは行動されたら真逆の能力や効果を獲得し、真逆の行動をする。魔力弾は音速より少し早いスピード、ブラックホールで相手を引き寄せる。 エルナが眉を寄せた。「これは厄介ね。対の存在になるなんて、鏡写しみたいな能力。攻撃したら相手の防御が上がる? 魔法を使えば相手の魔力が強化? 真逆の行動を取るから、予測不能。バランスの取れたステータスで、どんな相手にも対応できるわ」 ガルドが唸った。「ブラックホールで引き寄せられて、魔力弾を食らうのか。音速級の弾速は避けにくい。防御20でしぶといぞ。一対一じゃ、永遠に戦えねえパターンだ」 ローラが言った。「諜報部によると、最近の暗殺事件でこれの影。名前が『対』だけってのも不気味。目的不明だが、混乱を撒き散らしてる」 マリオンが決めた。「能力の汎用性が高く、危険度SS。懸賞金は6000ゴールド。能力の解析が鍵だ。捕縛して情報を引き出せ」 協議は二時間以上に及び、部屋は煙草の煙と緊張で満ちていた。マリオンが立ち上がり、四枚の手配書に判を押した。「これで決定だ。危険度と懸賞金を記入し、ギルドの掲示板に貼る。諜報部の警告通り、これらの脅威が王国を揺るがす前に、冒険者たちに委ねよう」 夕暮れ時、四人は会議室を出た。ギルドのメインホールでは、冒険者たちが酒を酌み交わしていた。マリオンが掲示板に手配書を貼り付ける。金貨の山を約束する高額懸賞に、ざわめきが広がった。王国諜報部の影が、静かに王国を覆い始めていた。 (文字数: 2487) エスターの危険度: A / 懸賞金: 5000ゴールド 破壊邪神【Gelöscht】の危険度: ZZ / 懸賞金: 100000000ゴールド サムソー・アランデールの危険度: S / 懸賞金: 8000ゴールド 対の危険度: SS / 懸賞金: 6000ゴールド