司会「さあ、始まりました!本日の特設リングに集いしは、運命に導かれし聖なる二人と、時代を彷徨う孤独な強者二人!それでは両チームの入場です! 【聖域の継承者(サンクチュアリ・ヘリテージ)】! 世界樹の導きを受けた純真なる勇者フェンと、歴代の英霊を宿す聖剣レヴァルレシオン!正道なる武と聖なる光のコンビネーションにご注目ください! 対するは、【漂泊の断罪者(ドリフターズ・ジャッジメント)】! 盲目の剣聖ドリフターと、全てを喰らうPSI能力者ディバウアー!サイバーパンクな世界を生き抜いた、静かなる狂気と圧倒的な個の力の共演です!」 第一章:静寂なる開戦 戦いの幕が上がった瞬間、空気が張り詰めた。チームAのフェンは、飾り気ない旅装束に身を包み、静かに構える。その傍らには、意思を持つ聖剣レヴァルレシオンが淡い光を放ちながら浮遊していた。 「……いいですか、フェン。相手の左、盲目の剣客。あれは危険です。気配が消えている。右の巨漢は物理的な脅威ですが、斬撃の精度は左の方が上でしょう」 レヴァルレシオンの平坦な念話がフェンの脳内に響く。フェンは糸目を細め、穏やかに頷いた。 「はい。学びます。相手の理を、わたしが受け止めます」 対するチームB。ドリフターは笠を深く被り、錆びた無銘刀の柄に手をかけている。その隣で、ディバウアーは気怠げに煙草をふかし、大きなあくびを漏らしていた。 「……ったく、ガキに喋る剣か。お人好しの俺が言うのもなんだが、手前さん、適当にさっさと終わらせてくれねえか。腹が減って仕方ねえ」 「……おやおや、せっかちですな。だが、あのご婦人と少女からは、心地よい『芯』の音が聞こえる。斬るのが惜しいほどの静寂だ」 ドリフターが静かに足を踏み出した。その歩法は柳のごとくしなやかで、地面を蹴ったはずなのに、気づけば彼はフェンの懐に潜り込んでいた。 「――ッ!」 フェンが反応した瞬間、閃光が走る。しかし、フェンは絶妙な身のこなしで首を傾け、刃を紙一重でかわした。武の根本を極めた彼女にとって、攻撃の「線」は見えていた。 第二章:剛柔の衝突 「ほう、見切ったか。若いのにいい眼をしてる」 ドリフターが呟く間もなく、今度はディバウアーが地響きと共に突進した。195cmの巨躯から繰り出される拳は、空気を圧縮し、衝撃波となってフェンを襲う。 「レヴァルレシオン!」 「承知いたしました。防御への転換を」 聖剣が瞬時にフェンの前に割り込み、光の障壁を展開する。ガァァン!という激しい金属音のような衝撃が走り、フェンは後方に弾かれた。しかし、彼女は空中で体勢を立て直し、そのまま地面に着地せず、環境を利用して壁を蹴り、反撃に転じる。 「捶(ちゅう)!」 拳を突き出し、ディバウアーの胸元に鋭い打撃を叩き込む。しかし、ディバウアーは避けるどころか、あえてその拳を正面から受け止めた。 「……足りねェな」 ディバウアーの肌が淡く発光し、フェンの打撃に伴う衝撃エネルギーをそのまま「捕食」して吸収した。衝撃が消え、フェンの腕がディバウアーの胸に深く埋まったまま止まる。 「捕食しちまったぜ。お嬢ちゃん、攻撃に『熱』を乗せすぎだ」 第三章:共鳴と不協和音 チームBの連携は、ある意味で「個の完結」だった。互いに背中を預ける信頼こそあるが、協力して技を出すという概念はない。むしろ、ディバウアーがドリフターの邪魔にならないよう、さりげなく後方に退くという、大人の配慮のような距離感である。 対してチームAは、完全なる共鳴状態にあった。フェンとレヴァルレシオンは、言葉を介さずとも意識が繋がっている。 「フェン、今です。歴代勇者の『連撃』を再現します。私の軌跡に従いなさい」 「はい!」 レヴァルレシオンが超高速で空間を舞い、無数の斬撃の軌跡を描く。フェンはその軌跡をなぞるように、掌、肘、脚を連動させた剛柔の連撃を叩き込む。剣の光と武の衝撃が螺旋となって相手を追い詰める。 「いい連携だ、お嬢ちゃん。だが、こっちは『一人で完結』してるんでね」 ドリフターが再び姿を消した。陽炎のような歩法。フェンの視界から完全に消え、死角からの一閃が彼女の喉元を狙う。 「危ない!」 レヴァルレシオンが自らの身を挺して、ドリフターの刀を受け止める。キィィィィン!という耳を劈く金属音が鳴り響く。しかし、ドリフターの刀は錆びていた。その錆びた刃が、聖剣の光をわずかに「削り取る」ような不気味な感覚があった。 「……私の光を、斬ろうとしたのですか?」 「斬るも何も、あっしはただ、そこに在るものを斬るだけですよ」 第四章:極致への到達 戦いは佳境に入る。ディバウアーは次第に飢餓感に苛まれ始めていた。聖剣が放つ膨大な聖なる魔力。それを捕食したいという本能が、彼の理性を削っていく。 「クソ……いい匂いがしやがる。もう我慢できねえ」 ディバウアーの周囲の空間が歪み、あらゆる熱量と魔力が彼へと吸い込まれ始めた。奥義【全域熱量捕食】。周囲の温度が急激に下がり、フェンの動きが鈍くなる。魔力さえも吸い取られ、レヴァルレシオンの輝きが弱まった。 「これは……ひどい飢え。すべてを飲み込もうとする虚無……」 「フェン、諦めてはいけません。彼がすべてを飲み込むなら、私たちは『あふれるほどの光』を提示すればいいだけです」 レヴァルレシオンの声に、強い意志が宿った。彼女は自ら地に突き刺さり、光の柱を上げた。 「【英霊顕現】――!」 光の中から、かつての伝説的な勇者の幻影が現れ、聖剣を抜き放つ。同時に、フェンもまた、心の中に閃いた「究極の武」の幻影を重ね合わせた。 「わたしも……!【英霊顕現】!」 勇者の精神と聖剣の魂が完全に重なり合い、戦場に究極の調和が訪れる。 「いっしょに!」 二人は同時に跳躍した。光の剣と、万象を制する拳。それが一つの線となり、チームBへ向かって放たれる。 【エターナル・レガシー・ストライク】 一方、チームBも限界を超えた。ドリフターは静かに目を閉じた。盲目の彼が見出す、世界の真理。もはや視覚など不要。因果の線が見えている。 「……開眼。すべては零へ」 奥義【零】。構えすら見えぬ超速の居合。ディバウアーが周囲の熱量を一点に凝縮し、ドリフターの刀身へと流し込む。捕食したエネルギーを、すべての一撃に変換して乗せるという、即興の協力攻撃だ。 「食った分だけ、返してやるぜ!」 光の奔流と、虚無の斬撃が正面から衝突した。 最終章:決着 激しい爆鳴と共に、白い光が戦場を包み込んだ。煙が晴れたとき、そこには膝をつく四人の姿があった。 ディバウアーは肩で息をしながら、空になった煙草を捨てた。彼の周囲の空間はボロボロに砕けていたが、致命傷は免れている。しかし、その全熱量は使い果たされていた。 そしてドリフター。彼の刀は鞘に戻っていたが、その刀身は限界まで負荷がかかり、細かな亀裂が入っていた。 一方、フェンは激しく息を切らしていたが、その瞳には確かな充足感があった。レヴァルレシオンは元の形に戻り、フェンの手の中に収まっている。しかし、決定的な差は「精神の摩耗」だった。 ドリフターは静かに笑った。 「……参ったな。あの一撃、あっしの『零』を僅かに上回っていた。正道というものは、時に理不尽なほど強い」 ディバウアーも、ふらつきながら肩をすくめた。 「ああ……腹減りすぎて、もう指一本動かねえや。降参だ、降参」 司会「決着ーーー!!勝者、【聖域の継承者(サンクチュアリ・ヘリテージ)】!!」 試合後 【チームA:聖域の継承者】 フェン:「(ふぅ、と息をついて)……すごい方々でした。わたし、たくさん学べました」 レヴァルレシオン:「ええ。特にあの盲目の剣客の技は、過去のどの勇者とも異なる異端の極致でしたね。……まあ、最後は私のサポートがあったからこそですが(溜息混じりに)」 フェン:「ふふ、レヴァルレシオンさんがいてくれたからですよ。ありがとうございます」 【チームB:漂泊の断罪者】 ディバウアー:「……あー、最悪だ。空腹で死ぬ。手前さん、どっかに美味い店知らねえか」 ドリフター:「っははは、情けない男だ。だが、あの娘の真っ直ぐな一撃には、久々に心地よい敗北感を得られたものだ。……さて、店なら知りませんが、いい酒屋なら心当たりがありますぜ