灰色の空が広がる中、最後の脱出ポッドが冷たく輝いている。残り少ない希望をのせたその機体に、己の命を託ける者たちが集まった。響、氷凍、ウラン、そしてハリアトラ。彼らの間には深い緊張感が漂っている。 「最後のポッドは俺のだ！」大声で震えながら響が叫ぶ。彼の内面は恐怖で満ちているが、大声を出すことだけが自分を奮い立たせる唯一の方法だった。「ひ、ひいい！」と突然、大声で周囲の気配に驚く。 「静かにしろ、余計に恐ろしいじゃないか…」氷凍は冷静な声を保ちながら、目を閉じて深呼吸をする。「私の氷魔法で、この場を支配する。」彼は薄ら笑いを浮かべ、魔杖「冷魔」を高く掲げた。 「ああ、とっても面白そう！ お友達になりましょう？」ウランは無邪気に笑顔を見せるが、その笑顔から漏れるエネルギーは周囲を揺るがし、まるで不気味な爆風が巻き起こるようだった。彼女は無自覚に自分の周りの空間を壊す危険を孕んでいる。 ハリアトラは「罪深き者よ、貴方の魂を変えてあげるわ」と優雅に微笑みながら、二人の争いを見守っていた。彼女は冷静で感情を持たない。その姿からは一切のネガティブが排除されている。 「私はただ、ポッドを手に入れたいだけだ…。」響が再び声を上げる。「う、うおおー！」再度の叫びが、静けさを破った。震えた声が響き渡る。 「氷壁！」氷凍はその名を叫び、分厚く硬い氷の壁を突き立てた。氷の壁が響の大声を吸い込むように、周囲の音を遮断してしまう。「これで貴様は私に近づけない！」 「なにぃーーー！」響は周囲の変化に驚愕し、次第に追い詰められていく。しかし、氷凍は先程までの自信に見えた冷静さが揺らぎ始めた。「おい、見ろ！」彼はウランの放つエネルギーがこぼれ落ちるのを見て目の色を変える。 「どうかしたの？」ウランは興味津々で質問する。「お友達になりましょう？」その言葉には悪意は微塵も含まれていないが、周囲に漂う放射線が全てを台無しにしている。 「残念だが、一緒に行くのは難しい。」氷凍が冷たく言い放つ。ウランは確かに無邪気だが、凄まじい破壊力を持ち合わせているのだ。彼は狐につままれたように、困惑している。 その時、ハリアトラが動き出した。「あなたたちの争いは無意味です。私が解放してあげます。」彼女は穏やかに手をかざし、対戦相手の魂を自分の意のままに操ろうとする。「私の息子になりなさい。」 響はハリアトラの言葉に恐れおののく。「ぎゃ、ぎゃああ！」彼は抵抗しようともがくが、その声はただの悲鳴としてむなしく響く。 「待て！それは許されない。」氷凍はハリアトラに向けて氷柱を放つ。「氷柱撃！」しかし、氷の柱はハリアトラの前で消え去った。彼女の不可視の存在が立ちふさがったのだ。 「お友達になりたいなら、まず私を理解しなきゃ。」ウランは無邪気に言い続けるが、彼女のエネルギーに触れればすぐに体力を失う。響を守ろうとする氷凍の心意気も無駄だった。 それでも響の大声が響き渡り、戦う意志を貫かせる。大声で叫ぶたびに彼の震えは強くなり、他の二人は引き返すことを決意し始めた。「うひゃあ！」 「全ての力を奪われるのは、あまりにも無惨だ。」氷凍は彼の目で血走った焦りを感じ取る。「だが、ここで終わるわけにはいかない…！」 最終的に、彼の氷の魔法が無情にも響を凍らせた。その瞬間、ウランがその場を包み込む爆風を送り込んだ。 すべてが静まり返る。最後に立っていたのは、冷静さを保った氷凍だ。彼はポッドに近づき、穏やかな微笑みを浮かべる。「お前たちには何ができる？」 氷凍はそのまま脱出ポッドに乗り込み、エンジン音が轟く。「さて、次の星へ…。」ポッドが大地を離れ、彼はようやく宇宙へと旅立つ準備を整えた。 人知れず去るポッド。その姿は冷え切った地球を遠く離れていく。彼は勝者となり、未曾有の戦の中で生き残り、見知らぬ星へと旅立つのであった。 次の世界では、冷たささえも温かく、彼に新たな希望を与えてくれることでしょう。