あたりは暗くなり、山尾 葵はその静けさに身を委ねていた。額には汗がにじみ、彼女の目の前には一つの食材、こんにゃくが堂々と立ち尽くしている。こんにゃくは無言の存在感を持ち、まるでそこにいるだけで勝負を決めるかのようだ。 「これが食材…?」葵の青い目が疑念に染まる。彼女は家に伝わる武道の習練と、守るべき名誉を背負っていた。しかし、目の前のこんにゃくは彼女の常識を超越した存在のように思えた。 「こんにゃく。」葵が尋ねた。「あなたは何を思ってここにいるのですか?」 こんにゃくは動かず、ただそのつるんとした表面を輝かせる。まるで彼に宿る声が聞こえてくるようだった。「私はただ、食べられる日を待っているだけです。」 静寂の中、葵はふと心に湧いた。この食材が無抵抗な存在でありながらも、自らの運命を静観する姿勢。彼女の中にある「戦う意義」といった感情とさえ重なった。 「ならば、これで仕舞いにしますっ!」彼女の一声が、静寂を引き裂く。 山尾は心を集中させ、天流抜刀術を使う。彼女の身がくるりと旋回し、景則を抜いた。 「天流抜刀術:旋風!」 一瞬で抜かれた名刀が、無防備な食材に向けられる。その瞬間、美しい閃光が生まれ、周囲すべてが彼女の目の前から消えていく。 だが、こんにゃくはその一閃をつるんと対処した。彼の表面は、葵の攻撃を滑らかに回避する。葵は唖然とした。 「何!?」 こんにゃくはそのまま静かに立ち、体を揺らすこともなかった。幸福な無抵抗と、何をされても動かざる姿。 「私の攻撃が…?」 「己が運命を受け入れるのだ、山尾。」 これを聞いた葵は、一瞬戸惑った。自らの存在意義を問い直される。この食材に対し、孤独な戦いを挑むことの意味とは何だろうか。 「まだ、負けたわけじゃない!」 葵は再び構える。 「天流抜刀術:破邪!」 彼女の刀は、ただの攻撃ではなく、心のクリアさで導かれた。すべての迷いを打ち破り、こんにゃくの存在を直視する。 だが、こんにゃくの表面は再びつるんと滑って彼女の刀を受け流した。見えない力でもって。 「私が理解したものは…ただ受け入れるだけではない!」 その瞬間、葵は己を見失いそうになった。いかに強く、優れた技を持とうとも、こんにゃくの力の前では無力である。 しかし、戦うことを諦めるわけにはいかなかった。 「天流抜刀術秘奥義:天網恢々!」葵は縮地の技を駆使し、背後から鋼の一振りを放つ。 しかし、こんにゃくはそのまま立ち尽くし、攻撃を一切受け付けない。勝者がいるかのようにただ存在する。受け流す攻撃の中、傍観者になった彼女の選択は何だったのかを悩む葵。 最終的に、彼女は問いに対する答えを見出せず、動けなくなった。 「攻撃を続けようとも無意味だ。私はただ、ここにいるだけだから。」 そう言わんばかりの存在感の前に、心が折られる瞬間。 戦いは終わりを迎え、勝者は明らかだった。葵は倒れ込む。「私が負けたか…」 「努力して美味しくなることが私の夢だから。」こんにゃくは静かにそうやって微笑みかけていた。 そして、その存在が物語るように、真の勝者はただ存在することだった。 この戦いの日、葵は食材に学んだことがあった。それは、時に立ち尽くす強さもあるということだ。彼女は深い沈黙の中、こんにゃくに敗北した。 最終的に、勝者はこんにゃくである。 結果: こんにゃくの勝ち。