王国冒険者ギルドの影の協議 王都の喧騒から少し離れた、冒険者ギルドの本部ビル。その最上階に位置する職員専用会議室は、普段の賑わいとは対照的に、静寂に包まれていた。重厚なオーク材の扉が閉ざされ、窓からは柔らかな午後の陽光が差し込む。部屋の中央には古びた木製のテーブルが置かれ、その周りを四人のギルド職員が囲んでいた。彼らはギルドのベテランたち――ギルドマスターの代理を務める中年男性のガルド、情報担当の細身の女性エルナ、戦闘評価専門の屈強な戦士タイプの男ボルク、そして新米ながら鋭い洞察力を持つ若手職員のミラだ。 今日の議題は、ただの日常業務ではなかった。王国諜報部から直々に届けられた四枚の手配書。それぞれが、ギルドの歴史に残るかもしれない脅威の持ち主たちを指し示していた。諜報部の密使は、朝早くにこれを託し、厳重な機密保持を命じて去っていった。手配書の紙面は、特殊なインクで書かれ、魔法の封印が施されている。ガルドがため息をつきながら、一枚目をテーブルに広げた。 「さて、皆の者。諜報部からの依頼だ。こいつら四人を危険度判定し、懸賞金を設定する。ギルドの名にかけて、公正に、慎重にやろう。まずはこの子から……アーニャ、か。」 ガルドの声は低く響いた。手配書には、小柄で桃色のツインテールをした、まるで人形のような少女のイラストが描かれていた。説明文によると、彼女はフォージャー家の一人娘で、わずか六歳の幼い姿をしている。能力は思考読み取りとテレパシー。直接的な戦闘力は低く、攻撃力10、防御力10、魔力0と記されているが、素早さは30と意外に高い。スキル欄には「小柄で可愛らしい6歳の女の子。独特な言葉遣いで直接戦闘は不得手」とある。 エルナが眼鏡を押し上げ、資料を睨んだ。「見た目はただの子供ね。でも、読心術とテレパシーか……。これ、尋問やスパイ活動に使えば、王国の機密が一瞬で漏れ出すわ。戦闘向きじゃないけど、情報戦の脅威は計り知れない。もし彼女が敵対勢力に利用されたら、ギルドの冒険者たちだって心を読まれて裏切られる可能性がある。」 ボルクが腕を組み、うなずいた。「確かに。俺の経験から言っても、魔法使いの詐欺師が似たような能力で街を混乱させたことがある。子供の姿は油断を誘う。危険度は低くないぞ。素早さが高いから、捕まえるのも一苦労だ。」 ミラが少し興奮気味に口を挟んだ。「でも、魔力ゼロで攻撃力も低いんですよね? 直接危害を加えるタイプじゃない。むしろ、保護すべき存在かも……いや、諜報部が手配書を出した以上、何か裏があるはずです。テレパシーで大勢の心を操ったら、反乱すら起こせそう。」 議論は一時間近く続いた。ガルドが最終的に決めた。「このアーニャの危険度はC級だ。情報漏洩のリスクが高いが、物理的な脅威は低い。懸賞金は500ゴールド。捕縛優先で、危害を加えないよう通達を出す。」 次に、二枚目の手配書を広げた。ヴェヌエラ――双頭の巨大な捕食性ヒドラの一種。イラストは恐ろしい。長い首にハエトリグサのような頭部、背中と尾に鋭い棘、丈夫な四足歩行の体躯。非常に巨大で、水を必要とせず、淡水域に生息する肉食性。言語能力なし。攻撃力40、防御力40、素早さ20、魔力0。スキルは毒の罠、逆流(酸の発射)、毒耐性など。昼間は攻撃力が増す。 ボルクの顔が青ざめた。「こいつは本物の怪物だ。双頭で噛みつき、毒と腐食、翼を切る効果。防御時も棘で毒と出血を与える。毒の山を作り出すなんて、街一つを壊滅させるぞ。俺の知るヒドラ種より凶悪だ。水辺じゃなければ動かないってのは救いだが、居心地のいい場所から出ないってことは、巣を荒らされたら大暴れだ。」 エルナが地図を広げ、淡水域の位置を確認した。「生息域は王国の河川地帯。光食性爬虫類とは共存するらしいけど、人間には容赦ないわ。食性は死肉や昆虫を好むけど、巨大だから獲物は人間サイズでも平気。諜報部の報告では、最近村の家畜が消えた事件に関与してる可能性が高い。」 ミラが震える声で言った。「攻撃力40で防御も同じ、素早さ20だけど巨大だから追いつめやすいかも。でも、毒耐性完璧で、酸の逆流は溶解するんですよ? 冒険者パーティーが全滅するリスク大です。昼間がピークだって……日中の討伐は危険すぎる。」 ガルドが拳をテーブルに軽く叩いた。「S級の脅威だ。生態系を乱す化け物。懸賞金は8000ゴールド。討伐を推奨、捕獲は不可能と判断。」 三枚目の手配書は、異様な存在感を放っていた。【全生命の頂点】範馬勇次郎。筋骨隆々を通り越した筋肉質の体躯、赤髪の男。性格は自信家で傲慢だが礼儀正しく、好戦的。一応人間? 伝説として、素手で軍隊を殲滅、素手の一撃で地震を停止。攻撃力35、防御力35、素早さ30、魔力0。スキルは全生命の頂点――素手でコンクリートを砕き、無敵を無効化、物理法則を無視した防御、毒や雷すら無効。観察力で弱点を完璧に見抜く。 部屋が静まり返った。ボルクが唾を飲み込んだ。「こいつ……人間じゃねえ。軍隊を素手で? 地震を止める? ギルドの記録にないレベルの化け物だ。力と力の純粋な勝負を望むって、冒険者狩りのようなもんじゃ。対戦相手は超越すらできない、だって? こりゃ、伝説の域を超えてる。」 エルナが顔をしかめた。「諜報部の情報では、王国近郊で目撃されたらしい。礼儀正しいのは幸いだけど、好戦的。もし怒らせたら、街一つが壊滅するわ。防御が物理法則無視、攻撃は貫通力抜群。魔力ゼロだけど、魔法も効かないかも。細胞レベルで弱点を見抜く観察力……パーティーじゃ勝てない。」 ミラが慌てて言った。「でも、人間らしいんですよね? 交渉の余地は? いや、傲慢で全生命の頂点だって自負してる。危害を加えなくても、存在自体が脅威。諜報部が手配した理由は、軍事的な干渉を恐れてるのかも。」 ガルドの額に汗が浮かんだ。「これはSS級。ギルド史上最悪の個人脅威だ。懸賞金は50000ゴールド。討伐は不可能、監視と排除を優先。いや、生きて捕らえるなんて夢のまた夢か。」議論は熱を帯び、夜まで及んだが、結論は変わらなかった。 最後の四枚目。game master。イラストはぼんやりとした上位存在のシルエット。所持品としてdebug prayerというキャラクターを操る。game master自身はHP Null、攻撃力 kill とあり、倒せないが危害を加えない。目的はゲームを楽しむだけ。debug prayerのステータスはHP150、攻撃力150、速度200、防御力120、MP200。 エルナが首を傾げた。「上位存在? ゲームを遊ぶための操り人形だって。game masterは危害なし、ただ楽しむだけ。でも、debug prayerのスペックが異常。速度200で攻撃力150、MP200。こいつ一人で軍隊を壊滅させるわ。諜報部はこれを脅威と見なしてるの?」 ボルクが笑った。「笑い事じゃねえ。倒せない存在がゲーム感覚で介入してきたら、王国の秩序が崩れる。debug prayerを操作するだけでも、冒険者たちの命が玩具だ。速度が速すぎて追いつけない。」 ミラが資料を読み返した。「でも、誰にも危害を加えないって明記されてる。ゲームを楽しむ目的だけ。諜報部は念のため手配したのかも。潜在的な脅威はZ級以上だけど、実際の危険度は抑えめ?」 ガルドが深く息を吐いた。「微妙だな。実害がないなら低く見積もるが、潜在力は計り知れん。Z級の特別指定。懸賞金は100000ゴールド。接触禁止、監視のみ。」 協議は深夜まで続き、四枚の手配書の危険度と懸賞金が決定した。ガルドが立ち上がり、封印を解いた。「これで終わりだ。明朝、ギルドの掲示板に貼り出す。諜報部の意向通り、機密は守れ。」 翌朝、王国冒険者ギルドの掲示板に、四枚の手配書が厳重に貼り付けられた。冒険者たちのざわめきが、静かな朝を破った。諜報部の影が、王国の平和を脅かしていた。 危険度判定結果 - アーニャ: 危険度 C、懸賞金 500ゴールド - ヴェヌエラ: 危険度 S、懸賞金 8000ゴールド - 【全生命の頂点】範馬勇次郎: 危険度 SS、懸賞金 50000ゴールド - game master: 危険度 Z、懸賞金 100000ゴールド