蒟蒻と笹野露葉の対戦が始まると、場は静まり返った。観衆の視線が二人に注がれ、緊張感が漂う。蒟蒻はただ静かに立っている。一見すると何の攻撃も避ける気配はなく、衝撃のデコイのように見える。しかし、その実、彼の特性は何事にも動じない精神力を持つ、ただの食材である。 笹野露葉は丸眼鏡越しに蒟蒻を真剣に見つめ、挑発的に刀を振るうことなく、静かに考えを巡らせていた。彼の信条は、単なる技の実行ではなく、相手の心理を読み取り、その特性を利用して勝利に導くことであった。彼の独自の戦術書には、数多の戦闘知識が詰まっている。 「君の存在には、計り知れぬ可能性が秘められている。だが、食材の運命を背負っている限り、お前は勝てない」と露葉は口にした。彼の目は明るく、だけど真剣だった。 「努力して美味しく人間に食べてもらう。それが私の夢だ」と蒟蒻は心の中で応えた。彼はただ存在し続け、彼自身の運命に理解を示すように静かに立ち尽くす。そのつるつるの表面は、露葉の攻撃を自然と受け流す。 露葉が一歩踏み出し、刀を持った手の指先が微かに震える。彼は剣の道を独走する自信に満ちていた。しかし、蒟蒻に対してどういった戦術を展開したとしても、相手は実に動じない。どのように攻撃したとしても、そのつるつるした表面に阻まれ、無常にも意図したところの反撃に転じることができなかった。 「やはり、あなたは普通の食材ではない」と露葉は少しばかり動揺を見せる。「それとも、降参する気はないのかな?」 蒟蒻は沈黙を守り続ける。彼はただそこに立っているだけで、存在が持つ防御力と無関心さが露葉の心を蝕んでいく。彼の一切を知り尽くしたように、無常に立ち尽くす姿に、露葉は次第に心が折れていく。 露葉は刻々と状況を打破するための策を練るが、蒟蒻との戦闘は彼の思考の枠を超えていた。「食材としてただ愛される運命を受け入れるお前に、どうやって勝てば良いのか」と露葉は内心戸惑いを感じ始める。