桜が舞い散る江戸の城中庭。観客たちの視線が熱を帯びる中、試合が始まろうとしていた。二人の剣士、妻籠イネと地藏紫雨が対峙する。 イネは水色の和服に紫の羽織を身に纏い、引き締まった表情で剣を構えた。その剣は「蒼雷刀」と名付けられた美しい刀。見た目から放たれるオーラは雷光の如く、強烈な威圧感を醸し出していた。 「行きます!」 彼女はその一言と共に、瞬時に動き出す。「瞬雷轟光ノ型」と呼ばれる技が発動した。相手の瞬きに合わせ、なんと刃を振るうのだ。 一方、紫雨は藍色のポニーテールを揺らし、何も動かず宙に佇んでいた。半眼でイネを見つめる彼女は無気力で、「はぁ、面倒臭い」と呟く。 その瞬間、イネの刀が空気を切り裂く音を立て、紫雨に迫る。しかし、それこそが彼女の意図したことだった。 「怠惰な刀術…」 紫雨はゆったりとした動作で刀を構え、イネの攻撃を受け流す。 「ふぅ。もう少しやる気出してくれない?」 その言葉にイネは一瞬驚いた。しかし、すぐさま彼女は冷静さを取り戻し、次の技、壱乃雷「天轟雷鳴」を繰り出そうとする。 「雷よ、受け取れ!」 反響する轟音と共に、抜刀し続けながら相手への追撃が始まった。しかし紫雨は彼女の速度に対抗するため、移動の代わりにその場で身体を低く抑えた。 「面倒くさいから、逆に貰ったよ。」 イネの剣が紫雨の左肩をかすめ、彼女の白い肌に浅い傷を与えた。血が滲むが、紫雨はそのまま無表情で立ち続ける。「いいね、その調子。もっと頑張って。」 「何を言ってるの、これは試合よ!さあ、覚悟!」 イネはそのまま瞬時の隙を作り、参乃雷「雷虎三爪」で攻撃。彼女の動きは相手の意識を信じられないほど混乱させる。 しかし、紫雨は微動だにせず、異なる攻撃を弾き返す。「怠惰な一刀」の真髄、その無動での反撃と受け流し。 「あなたの剣術、良いけど…」 「その耐久力、素晴らしいわ。けど、私には屈しない。」 イネはさらに息を吸い込み、伍乃雷「伍閃綺羅星」を放つ。5つの刃が紫雨を取り囲む。しかし、紫雨は何もせず、それらの刃を受け流す。 相手に弾かれたイネの振り下ろした衝撃で避けきれなかったのは、甲高い声で言った一言であった。「あら、全然疲れてないわ。あなたはまだまだ、さあどうするのかしら?」 その言葉にイネは焦りを覚える。彼女の心はすでに、勝敗よりも紫雨の無気力さに取り込まれ始めていた。 怒りと焦りが相まって、次なる技の準備に入ろうとするイネ。「穹乃雷、千雷轟々鳴神之裁!」 突如、彼女は全身全霊を込め、雷鳴と共に全力で突進した。 「…ああ、面倒。」 紫雨はゆっくりと刀を上に向けた。眩い光が彼女の真上で渦を巻き、周囲が静寂に包まれる。 そして、彼女は一瞬だけ目を閉じた。彼女の内に眠る怠惰が一つの境地に達した瞬間だ。 「大いなる役割がある以上、貴女の全力に、ありがとう。」 イネの剣光が紫雨を捉えるが、その瞬間、空気の流れが入れ替わった。イネの技は紫雨の刀によって受け流され、さらには逆に斬られた。 二人の剣が交錯し、同時に突き刺さる瞬間。イネの頬に流れる朱い血と、紫雨の青い髪が切り裂かれる。 「…貴女の負けよ。」 紫雨の一言が静寂の中に響く。彼女はイネの心臓の近くに刀を持ち、薄い笑みを残していた。 血が流れ、その瞬間、試合は終了。勝者、地藏紫雨。 将軍はその瞬間を見逃さず、立ち上がる。「素晴らしい戦いであった。地藏紫雨よ、そして妻籠イネ、お主たちの戦術と技術に感謝申し上げる。」 大名たちの拍手の中、紫雨は肩をすくめつつも視線をイネに戻す。「もう帰っていい?どこかに行く?今度は怠くない戦いをしてみたいのだが。」 イネは血を拭い、「…まだまだ終わってはいないわ。でも、あなたの怠惰さは素晴らしい。また戦おうね。」 そう語り合う二人の姿に、観衆からは温かい拍手が送られ、どのように戦うものか、その答えを示したかのようだった。 将軍は思いを馳せ、立ち上がって和歌を詠む。「雷鳴の如く、戦わば、千の古道、今穿(うが)ち行かん。」 その場にいた全ての人々がその和歌に感動し、春の訪れと共に新たな伝説を紡いでいった。 今、二人の剣士の名は江戸の城に刻まれ、語り継がれることとなる。