コレットは広々とした部屋に立っていた。相手の幼女は、遠くに小さく尖ったボタンを見つめている。スキル「押す」を持つ幼女は、これから起こるかもしれない恐ろしい出来事に気づいていない。コレットはその事実に驚愕しながらも冷静さを保っていた。 「よし、落ち着こう。」コレットは自分に言い聞かせた。彼女は自分の知識と能力を駆使してこの危険な状況を打開しなければならなかった。手元にはかくれんぼ帽子、そして彼女の伝承学の知識がある。思いつく限りの戦略を練る中、かくれんぼ帽子の力を使うアイデアが閃いた。 「これなら、私の姿を隠せば、ボタンには触れさせないかも…!」コレットは帽子を被り、たちまち視界が曖昧になる。しかし、どんなに隠れたとしても、敵の力を甘く見てはいけない。この勝負は一瞬の間に行われるのだ。コレットは素早く反転し、隠れたまま距離を詰めていく。 ボタンに手を伸ばす幼女の背後に忍び寄り、コレットの心臓は激しく鼓動した。彼女は適切なタイミングで動かなければならない。瞬間、幼女がその小さな手でボタンに触れる直前、コレットは「初歩的な土の魔法」を唱えた。"地面よ、彼女の足元を巣食え!" 地面がゆっくりと幼女の足元に迫り、その足を絡め取った。驚き、幼女は身動きが取れなくなる。コレットはその隙をついてボタンを指先で触った。だが、押すための力強さは無い。あくまで妨害の目的だった。 「成功だ!」関節がきしむ幼女の様子を見ながら、コレットは一瞬の安堵感を覚えた。持ち前の好奇心が、彼女をここまで導いてくれたのだ。 「お、お前、ずるい!」幼女は悔しそうに声を上げる。「でも、まだ負けたわけじゃ…」彼女の言葉を浴びるようにコレットは前に出る。「これは戦いだから。ボタンを押させない事が、私たちの目的なのよ。」 コレットは護身術の基本を思い出しつつも、幼女の真剣な表情に心が動かされた。触れ合った瞬間、幼女は力を失い、ゆっくりと敗者席へと移動する。一応の勝利を収めたコレットに、安堵と少しの寂しさが混ざった。 「おつかれさま、みんな。」コレットが舞台を後にするとき、周囲には楽しげなおやつの香りが立ち込めていた。「今日は勝負があったけど、一緒におやつを食べよう。私たちも、仲間だからね。」 敗者席に移動した幼女と目を合わせ、コレットは笑顔を交わす。負けたことがどうした?お菓子を食べる気持ちが勝る。おやつの時間は、結果をつなげる場なのだから。