静寂の中、闘技場に立つ二つの異なる存在、こんにゃくと剣聖。外見は対照的だが、いずれも確固たる目的を持っている。こんにゃくはその存在を持って、ただ静かに立っている。焦点の合わない、その形状は滑らかで、見る者を惑わせる。不動の存在感を放つ。 その横で、剣聖は自信に満ちた姿勢で構えていた。彼の手には絶対に刃こぼれしない刀。周囲の空気が震えるような緊張感が漂い、剣聖の目は鋭く、未来を見透かすように緊張している。 「お前の運命は決まった。」剣聖は挑戦的な目を向けた。「俺の前では、何も逃れられない。」 その言葉を聞いたこんにゃくは、ただ静かに表面の『乙』という焼印を照らし出し、何も言わずに立ち続ける。剣聖はその反応を見て、ちらりと小さく笑った。「無駄だ。君は何もない食材だ。味方にされる予定はない。」明らかに侮辱の意を含む言葉の数々。しかし、こんにゃくは動じることなく、ただじっと構えている。 剣聖は踏み込んでいく。素早い動きで反撃する前に、こんにゃくに向けて一文字の斬撃を放とうとした。しかし、こんにゃくは瞬時にそのつるんとした表面を滑らせ、斬撃をかわす。剣聖は驚愕し、もう一度切り込む。「何だと? ガードすらできないはずの食材が──!」 今度は燕返し。刃が空気を切り裂く音が響く。しかし、こんにゃくはそれを再び往なした。まるで油のように滑らかに、全ての攻撃をかわし続ける。剣聖は急速に攻撃を繰り出したが、こんにゃくの独特の形状は剣聖の刃を受け止めることなく、宙を舞った。 「うぅ、まさか、こんな事が──!」剣聖は流石の彼も困惑する。だが、経験豊富な彼は冷静さを失わず、頭の中で再び攻略法を練り始める。「そうだ、何かしらの隙を、見つけてみせる!」 剣聖は未来を見透かし、こんにゃくの存在に対抗する方法を導き出そうとする。けれど、こんにゃくはその存在を続けている。剣聖は嫌でも心が折れそうになった。攻撃を続けるも、全くヒットしない。 「なんだ、その存在の意義は? 食材であるお前に何故、これほどの労力が必要なのか?」剣聖が一瞬息を呑むと、たまらず続ける。「どうして戦おうとする? 俺の前には立つな!」 だが、こんにゃくは口を開かず、ただそこに在り続ける。その根気強さが剣聖の精神に影響を及ぼし、彼は少しずつ焦りを感じ始めた。剣聖が連続する斬撃の合間に息を整えたその瞬間、こんにゃくの姿は更に明確なものを示す。 「存在すること、ただそれが私の役割です。そして、食べられるまでただその役目を果たす。」その言葉は静かに響き渡った。 「あ…お前は、まさか…」剣聖は身震いし、瞬時に攻撃をやめた。しかし、既に疲労が彼を襲っていた。目の前のこんにゃくは何ら攻撃することなく立ち続け、剣聖の揺らぎを感じ取った。そこに、彼に反撃はない。 結局、剣聖の斬撃は連続して失敗し続け、彼のリアルな存在を確認する度に、心のどこかが揺れ動いているのを感じる。結局、剣聖は戦うことをやめた。