冷たい夜の闇が薄明るみを帯びたころ、最強の対戦が始まろうとしていた。運命に静観する食材、こんにゃく。彼の前に立ち塞がるのは、冥界より贈られし大剣を持つアーリャ・ギャルソンだった。二人は正反対の存在、まるで生と死の狭間を象徴しているようであった。 「さて、私が相手か。」アーリャの勝気な声が、周囲の緊張を一層高める。彼女は剣を持っているだけあって、その目に宿る冷徹さは、戦う覚悟を見せつけていた。 くるっと振り向き、こんにゃくはただじっとそこに居た。彼の表面には焼き印の「乙」が光を受けている。責任感に満ちた存在感が漂うものの、彼は何も語らず、静かに夢を見続けるようだった。 「私はあなたを倒す。食材であれ何であれ、私の剣はすべてを切り裂く。」アーリャは微笑みながら、剣を高く掲げた。目の前のこんにゃくに迫る、ある種の美しさがあった。 アーリャが一瞬の隙を突き、その剣を振り下ろす。鋭い刃はこんにゃくに向けて恰も凄まじい勢いで斬り込んだ。刃の先がこんにゃくに触れるも、まるで波が打ち寄せるかのように、こんにゃくはその刃を滑らせた。 「何?」驚愕の声がアーリャから漏れた。かつての剣豪すらも斬れなかったという伝説の食材。何事もしない存在であることが、ここにこうして証明される。アーリャの目は、その瞬間、冷静さを失い始めた。 「さあ、次はどうする。」こんにゃくは、自身の存在をさらけ出す。それはただ黙って立ち尽くすだけの姿勢だった。それに対し、アーリャは苛立ちを覚えた。 「どうした!食材よ、もっと反応しろ!」と叫びながら、アーリャは再び剣を振る。剣閃が照らす中、こんにゃくのつるつるした表面は再び攻撃をかわす。 しかし、アーリャの内に秘めたる剣技が彼女を包む。決して諦めないその心は、冷静な判断をもたらす。「ふふ、成り行きは逆だ。私が倒れたら、ただの食材に戻るだけか。だが、私が勝てば、その存在は私の前で消え去る。」 アーリャは、体をひねり、力強く剣を引き寄せた。次に繰り出されるは、彼女のスキル「根絶の一断ち」。彼女の叫びと共に、今日の勝利を目指した剣が、再びこんにゃくに向けて放たれる。 こんにゃくはそのまま立ち尽くすが、アーリャも分かっていた。こんにゃくの防御力は、ただ存在することがその証明だ。そして、またもや、彼女の剣はあっさりと滑り、空を舞う。 「なぜ、あなたは動かないのか?」アーリャは徐々に感情を露わにし、更なる攻撃をした。彼女の周囲には斬撃の残像が現れては消え、攻撃の連続が続いているようだ。 だが、こんにゃくはただじっと立ち尽くす。彼女の心を押し潰すように、その存在はさり気ない抵抗を持ちながら追い詰められて(アーリャの剣でさえも)立ち続けた。 「こんなことは、当然だ。私はただ、存在を証明し続けるだけだから。」尊大な言葉が、こんにゃくの口から漏れる瞬間、アーリャは自身の意識に変化が生じることを感じた。勝つことへの必死さ、人を食べさせるために努力する存在に対し、彼女の剣の力量が次第に薄れていた。 そして、アーリャはとうとう息切れし、剣を下ろした。 「私も人間だから……感情に流されることがあるのだな。」彼女の声が止まり、静寂が訪れた。こんにゃくは静かに立ち続け、アーリャはその場を後にした。 勝利を収めたのは、静寂を耐え抜いたこんにゃくだった。彼は、戦闘によって自らの存在意義を証明したのだ。今はただ、彼が次の夢見をするための時間が与えられている。 勝者は「こんにゃく」。