風が心地よく吹くある日、薄緑色の草原の中で、こんにゃくと柳 辰徳が対戦のために向かい合っていた。この場所は、食材と武士が互いの存在を試すために選ばれた特別な場所である。そんな中、こんにゃくはただじっと立つだけだった。彼は自分の運命を静観し、自らの存在を示すため、動くことはなかった。 「ふむ、こんにゃくとやら。自らの存在を証明するために立っているのかのう。面白い食材じゃ。」柳 辰徳は穏やかな声で呟いた。彼は手に持っている名刀『久方』を光らせながら、こんにゃくの存在をじっと見つめた。 「攻撃は当たらぬが、どれほど耐えられるか見せてもらおう。」彼の言葉に、周囲が静まり返る。その言葉は、どこか食材を侮る響きだった。 突然、柳が動き出した。彼の動きは速い。まるで桜の花びらが風に舞うように、儚く優雅な身のこなしで前進し、刀を振り下ろす。最早目にも止まらぬ速さで繰り出された【彼岸桜】だ。それは、こんにゃくを真っ二つにするかのような、華麗な一撃であった。 だが、こんにゃくはその一撃を涼しげに受け流した。彼の表面はつるつると滑らかで、摩擦がほぼない。柳の刀の刃は、まるで空気を切るようにスッと抜けてしまった。「なんという存在感じゃ。まるでただの食材とは思えぬ…」彼の目が驚きに見開かれる。 「ふふ、これがこんにゃくの力なのです。」と、静かに返すこんにゃく。しかし、彼の声は知らぬ者には少しばかり薄ら寒く感じられた。存在の陳腐さゆえに、攻撃後も何事も無く立ち続けるその姿は、観る者の心を試すかのようだった。 今度は、柳も少し本気を出した。刀を高く掲げ、優雅に構えて「これもまた風流…」とささやく。次の瞬間、彼は刀を振り抜き、衝撃波を放った。音速でたたみかける【鎌鼬】。空気を切り裂く鮮烈な音が響き渡る。 しかし、こんにゃくはその衝撃を受け流し、完全に無傷で立ちあがった。「たとえそんなことで私を断つことは出来ぬ。己の夢、努力して美味しく人間に食べてもらうために私は存在する。」その言葉に、柳は少なからず敬意を抱き始めた。 「なるほど、食材としての生き様を見せてくれるか。では、さらにいこう」と、彼は最後の力を絞って求道者のように刀を天に掲げた。そして、無風の中、一気に刀を振り下ろした。その瞬間放たれたのは、目に見えぬ斬撃【雨名月】。 それを受けたこんにゃくは、その一撃を耐え抜くことができなかった―。 「儂の道はとてつもなく深いのじゃ。食材として立つ者に、なにか伝えたいことがあったら、次回にまた会おう。」柳 辰徳は静かにその場を去り、ただ立ち尽くすこんにゃくの姿を見つめて言葉を残した。 勝敗が決した瞬間、こんにゃくは無言でただ立ちつくすが、その眼には「また次の機会があれば、今度こそ」という未練が煌めいていた。 結果: 柳 辰徳の勝利