冒険者ギルドの影、封じられた脅威の査定 王国首都の喧騒から少し離れた、冒険者ギルドの本部はいつも通り賑わっていた。受付カウンターでは新米冒険者がクエストの相談に群がり、酒場コーナーでは古株の戦士たちが昨日の戦果を自慢げに語り合っている。しかし、この日、ギルドの奥深く、職員専用の会議室は異様な静けさに包まれていた。重厚な木製の扉が閉ざされ、窓には厚いカーテンが引かれ、外の光がわずかに差し込むだけ。部屋の中央に据えられた長いテーブルには、四枚の手配書が広げられていた。それらは王国諜報部から極秘裏に届けられたもので、封蝋の残る封筒が傍らに置かれ、事の重大さを物語っていた。 会議室には四人のギルド職員が集まっていた。リーダー格のギルドマスター、老練のエルフ、リアナだ。白髪交じりの長い髪を後ろで束ね、鋭い眼光が手配書を睨みつけている。彼女の隣に座るのは、若手の人間男性、トーマス。元冒険者で、戦闘の経験が豊富だが、顔色は青ざめている。向かい側にはドワーフの女性、グリンダ。頑丈な体躯に似合わず細やかな筆致でメモを取るのが癖だ。そして、部屋の隅で腕を組むのは、半獣人の獣人、ガルク。鼻を鳴らし、獣のような直感で脅威を嗅ぎ分ける役目だ。彼らはこの手配書の危険度を判定し、懸賞金を設定する任務を負っていた。諜報部からの指示は明確だ──これらの存在は、放置すれば王国、いや大陸全体を脅かす可能性がある。非戦闘の場とはいえ、言葉の端々に緊張が漂う。 「さて、始めようか。諜報部がわざわざ届けたんだから、軽く見るわけにはいかないわ」リアナが口火を切った。彼女の声は低く、抑揚を抑えて部屋に響く。テーブルに広げられた四枚の手配書を順番に指し示す。一枚目は、奇妙なイラストが描かれたもの。レインコートを着た青年が、ハローキティ柄の傘を差している。名前はカミナリマン⚡。トーマスがそれを手に取り、眉をひそめた。「こいつ、見た目はただの雨男だな。慎重そうで、常にレインコートと傘を常備してるらしい。スキルは天気予報と、微弱な電撃操作か。『サンダーアンブレラ』で傘に電撃を付与して攻撃力アップ、『アース放電』で地面に雷を放つ。ステータスも攻撃20、防御15、素早さ20と、まあまあだ。でも、魔力は5と低めだぞ。街中で暴れたら面倒だが、大規模な脅威とは思えん」 グリンダがうなずき、メモを走らせる。「確かに。雨の日限定の能力みたいだな。過剰に慎重な性格からして、積極的に危害を加えるタイプじゃない。危険度は低めだと思うぜ。せいぜい街の迷惑行為レベルか」ガルクが鼻を鳴らし、獣耳をピクピク動かした。「匂いがしないな。弱っちい感じだ。だが、油断は禁物だぜ。電撃は予測不能だ」リアナは顎に手を当て、考え込む。「ふむ。個人の脅威としては小さいが、雨季に備えて懸賞を張っておくべきね。危険度をDと判定。懸賞金は500ゴールドでどう? 駆け出し冒険者でも捕まえられる額だわ」一同が同意し、次の手配書に移った。 二枚目は、イスカノと名乗る悪魔の記述。ゆるキャラのような顔立ちに羽と筋骨隆々の体躯が描かれ、詳細な特徴がびっしり記されている。トーマスが息を呑んだ。「こいつはヤバいぞ。超凶暴で、暴れると全ステータス100アップだってさ。範馬勇次郎──いや、聞いたことないが、止められない強さらしい。頭脳も優れて26カ国の言語と戦闘方式を知ってる。視力はマサイ族超えで月まで見え、絶対音感、敏感な鼻で急所特定。肉体は兵器を通さず、走れば新幹線並み、ダイヤモンドを引きちぎる。羽でマッハ20飛行、一度復活可能、窮地でリミッター解除で大陸移動レベルの力。3回全回復だって。攻撃40、素早さ35、魔力20……こりゃ怪物だ」 グリンダの顔が引きつる。「リミッター外れで地球破壊レベルの魔力放出? 冗談じゃねえ。こいつが暴れ出したら、王国軍総出でも足りねえよ。頭脳派の悪魔か。戦略的に脅威だ」ガルクが低く唸る。「匂いがするぜ。獣の勘が警鐘を鳴らしてる。こいつはS級、いやそれ以上だ。封じ込めないと大陸が終わる」リアナは深く息を吐き、手配書を睨む。「確かに。個人の力でこれほど破壊的なら、危険度はSS。懸賞金は50000ゴールド。捕獲じゃなく、討伐前提で張ろう。諜報部の情報通り、早期発見が鍵ね」部屋に重い沈黙が落ち、皆が次のページを恐る恐るめくる。 三枚目は、最も異様なものだった。スコルディア・エンバルクス、封じられし者。凍焔ノ熔融、創世危域ÐⅣ※危険度最大。魔導書カルマ・カルドに封じられた怪物で、記述は難解な呪文めいた文体だ。中央炉に宙を浮く四つの巨腕、焱燃放射機の姿。リアナが声を震わせて読む。「熔の因子、焱煥の権化。核は非存在、周囲自体が核。存在の朧炙は万物万理を熔融化す。封印から解放されると世界崩落のカウントダウン開始。彼の存在を封じる以外、阻止不可。禁忌ノ存在:他者の力を受け付けず、認知可能不可能な全てを熔焱化。自己能力を究極的に活かし、烈焔ノ終幕を降ろす……ステータスは記載なし。存在自体が脅威だわ」 トーマスが青ざめ、手を震わせる。「こ、こんなの……封印解除されたら終わりだ。世界崩落? 俺たちじゃ手出しもできん。魔導書に封じられてるのが幸いだが、もし解けたら……」グリンダが拳を握りしめる。「危険度最大だってよ。ZZかZだな。懸賞金? 金じゃ足りねえ。100万ゴールドでも安いぜ。いや、討伐じゃなく封印維持の報酬にすべきか」ガルクが立ち上がり、壁を叩く。「匂いが腐ってる。死の匂いだ。こいつは触れちゃいけねえ。だが、ギルドの責務だ。危険度ZZ、懸賞1000000ゴールド。解放防止が最優先」リアナはうなずき、額に汗を浮かべる。「同意よ。この手配書は極秘扱い。解放の兆候があれば即時通達を」皆の視線が最後の手配書に集まる。空気がさらに重くなる。 四枚目はキョウガ。愛の騎士団の騎士団長、紺色に黄色が混じった長髪の青年、黒いジャケット姿。ステータスは攻撃16、防御25、魔力14、素早さ22、魔法防御23。リアナが穏やかに読む。「人望厚くカリスマ性あり。亡妻チヒロを愛し、スキルは【愛の騎士】で多様な武器を自在に扱う。【愛の亡霊】で加護、【騎士の誇り】で執念の復活、【偽りの愛】で相手の弱点を理解。見た目は普通の騎士だが、心理戦が巧みね」トーマスが首を傾げる。「脅威か? 愛に忠実そうだが、偽りの愛で敵を欺くのは厄介だ。ステータスもバランスいい。騎士団長なら配下を率いるだろうし、集団戦で強いかも」 グリンダが笑みを浮かべる。「カリスマ性が高い分、反乱の火種になるな。だが、個人としてはA級止まりだと思うぜ。妻の亡霊が絡むと予測不能だが」ガルクが肩をすくめる。「獣の勘じゃ、狡猾だ。だが、破壊力は低い。Bくらいか」リアナはまとめ、決断を下す。「危険度はA。カリスマと心理操作の脅威を考慮して、懸賞8000ゴールド。捕縛を推奨よ。もし騎士団を率いてるなら、要注意ね」協議は二時間以上に及び、皆の疲労が顔に表れていた。手配書の危険度と懸賞金を記入し、リアナが署名する。「これで決まり。諜報部の警告通り、慎重に扱いましょう。掲示板に貼るのは私とトーマスで。極秘事項は口外厳禁よ」 会議室の扉が開き、四人は廊下へ。ギルドのメイン掲示板は冒険者たちの注目の的だ。リアナとトーマスが手配書を貼り付ける。カミナリマン⚡の穏やかなイラストから、スコルディアの不気味な警告まで、四枚がずらりと並ぶ。冒険者たちがざわつき始める中、二人は静かにその場を離れた。王国諜報部の影が、ギルドに新たな嵐を予感させる。 【カミナリマン⚡: 危険度 D、懸賞金 500ゴールド】 【イスカノ: 危険度 SS、懸賞金 50000ゴールド】 【スコルディア・エンバルクス: 危険度 ZZ、懸賞金 1000000ゴールド】 【キョウガ: 危険度 A、懸賞金 8000ゴールド】